㉜
ニクシーと真希子の所以とは・・・?
-㉜ 師匠との出逢い-
守は目の前にいる2人の言葉に耳を疑い、確認する為に生まれて(若しくは一度死んで)初めて会った人魚に聞き返した。
守「えっと・・・、ピューアさんでしたっけ?貴女の師匠が俺の母親って言うのは本当ですか?」
ピューア「何、敬語なんて使わなくていいから普通に話そうよ。それにピューアで良いよ。」
好美「そうだよ、この子によそよそしくしなくて良いから。」
ピューア「何であんたが答えんのよ。」
台本を用意して練習した漫才の様な会話を交わしていたが、全く答えを聞く事が出来ていない。
守「そうか・・・、それでマジな訳?俺の母ちゃんがピューアの師匠なの?」
ピューア「そのはずだよ、確か宝田真希子さんって言う人だったと思うんだけど。」
守「確かに・・・、母ちゃんだ・・・。」
守は真希子の名前を聞いて安心するどころか少し不安になっていた、確かに元の世界で真希子の作った家庭料理を食べてはいたが、スーパーでのパートや株取引、そして王麗との捜査(というより走り屋としてのバトル)で大忙しだった為に松龍のカウンターで龍太郎と2人で食べたり、家で自炊していた事が多かったので守の方が料理の実力はあったのだ。どちらかと言うと守が真希子に料理を教えていた事の方が多かった様な気もした。
好美は守の目が泳いでいた事を不審に思っていた。
好美「どうしたの?何かあった?」
守「いや・・・、この前和風出汁をブイヨンと勘違いしていたから母ちゃんに料理を習う人なんている訳が無いと思ってさ。」
ピューア「それがいるんだな・・・。」
守にはもう1つ気になる事があった。
守「そう言えばピューア・・・、は普段好美と一緒に仕事をしているって聞いたけど。」
ピューア「そうそう、好美がオーナーをしている拉麵屋でナイトマネージャーをしてんのよ。以前は寿司屋で板前をしてたけどね。」
守「板前?!じゃあ、母ちゃんに料理を習う必要なんて無かったんじゃないの?どっちかって言えば逆と思うけど。」
冷蔵庫の中身を確認して何を作ろうかを考えていたニクシーは自分の答えに驚く守に対し、真希子が自分と出逢った時の事を師匠から聞いたままに話した。
当時、ネフェテルサ王国にある湖の周りを散歩していた真希子は少し離れた所で女性が寝ている事に気付いた。
真希子(当時)「あら大変じゃないか、取り敢えず行ってみるかね。」
真希子が急いで近寄ると寝ていたのはまさかの人魚だった、真希子は目の前の人魚が言葉を話せるか不安になりながら恐る恐る声を掛けてみた。
真希子(当時)「何処からどう見ても人魚だね・・・、わたしゃ初めて見たよ。大丈夫かな、確か人魚って神経質だって聞いた事が有るんだけどそんな事言ってる場合じゃないか。ちょっとあんたー、大丈夫かい?人魚の癖に溺れちゃったのかい?」
ピューア(当時)「こ・・・、ここは?ここは何処ですか?」
真希子(当時)「ネフェテルサ王国だけど、どうした?」
ピューア(当時)「ネフェテルサですか・・・、またやっちゃった・・・。」
真希子は少し安心した、どうやら人間と同じでちゃんと言葉を話せる様だ。
真希子(当時)「やっちゃった?何をさ。」
ピューア(当時)「実は隣のバルファイ王国からダンラルタ王国にある実家まで泳いで帰省しようとしていたんですが、二日酔いで間違ってここに来てしまったみたいでして・・・。」
真希子(当時)「それは大変だね、それでここからまた泳いで行くつもりかい?」
ピューア(当時)「そうですね、スマホで地図を確認しなおして向かおうと思います。」
真希子は目の前の人魚から「ダンラルタ王国」と聞いてある事を思い出した。
真希子(当時)「良かったら私と一緒に行かないかい?実はテレビでトンカツが美味しいお店があるって言ってたからダンラルタまで行こうと思っていたんだよ。」
ピューア(当時)「良いんですか?」
真希子(当時)「なあに、「旅は道連れ世は情け」って言うじゃないか。でもその姿じゃ・・・、車に乗れないね。」
ピューア(当時)「大丈夫です、ちょっと待っててください。」
理由はまさかの二日酔い。