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雇用の事を勝手に決めても良いのか?
-317 蔑ろにしないで-
つい先程発覚した事なのだが好美とヌラルの会話を『探知』を利用して盗み聞きしていた人物が1名、流石に自分抜きでこれからの「暴徒の鱗 ビル下店」における人事を決めて欲しくはないという気持ちから『念話』を飛ばさない訳には行かなかった様だ。
デルア(念話)「好美ちゃん、いくら何でもシフトの相談もしなくちゃいけないから俺抜きで話を進めないでくれないかな。」
デルアは店長でありバルファイ王国軍時代からの相棒であるイャンダが新店へと異動した後は自分が店長となるので一応相談して欲しいという思いがあった様だ、ただでさえイャンダの様に上手く店を回せるか不安だというのに自分の知らない所で勝手に人を雇わないで欲しかったらしい。
好美(念話)「大丈夫だって、こういうのはフィーリングってやつよ。2人を雇う時もこんな感じだったから心配しなくても良いから。」
流石は一流の起業家は違うねと周囲の誰もが言いたくなるかも知れないが、この世界に来たばかりで経営に関しては全くもって初心者だった頃の好美は何処へ。
ヌラル「な・・・、なぁ・・・。これは誰の声だよ、全くもって聴き覚えが無いんだけど。」
1階の店舗部分に全くもって行った事が無いヌラル、突然の『念話』に動揺してしまうのも無理は無い。
好美(念話)「デルアったら・・・、いつから聞いてたのよ。でもお陰で手間が省けたから良いとするか、一先ずそっちに行って良い?どうせ暇でしょ?」
時計をチェックして丁度お昼のランチタイムが終わったであろう時間帯だという事を確認した上でだと思われるが、店のオーナーとして今の発言はどうなんだろうか。
デルア(念話)「俺久々に出てきたってのに「どうせ」って何だよ、「どうせ」って・・・。でも好美ちゃんが言った通りだから別に来ても良いよ、新しい従業員達と顔合わせしたかったしいつもの様に突然目の前に現れた大量の米をやっと洗い終えたから今からお茶でも飲んで一息つこうかと思っていたんだ。」
好美(念話)「げっ・・・!!と、取り敢えずそっち行くね。」
身に覚えがある様子の好美は早速母娘を連れて『瞬間移動』しようとしたが何か忘れてはいないか?気の所為だったらいいけど。
美麗(念話)「好美!!頼まれた家にトラック数台出来たのは良いけど鍵が開いてないと引越し出来ないよ、誰かこっちによこして欲しいんだけどそれ以上に皆して私達の事放置してない?」
ティアマット達の家財道具を運ぶ様に結愛に頼まれたのは貝塚運送の主任である松戸美麗だった、そろそろ出て来るかなとは思ったけどいつ振りだ(どうでも良いか)?
好美(念話)「ごめんって、今やっと2人を部屋に案内出来た所なの。またすぐに戻るから許してよ。」
美麗(念話)「分かったよ、それにしても凄い山奥とは聞いてたけどここまでとはね。大型トラックを持って来なくて正解だったわ。」
普段引越しの際は大型トラックを2台使用して作業を行う事が多いのだが、今回は山奥だと聞いて中型4台と軽トラ6台で来た様だ。
好美(念話)「美麗、いくら何でも人多すぎない?引っ越すのはたった2人だよ?」
まさかと思うが黒龍族の村と混沌龍の住んでた家への興味本位で全員来たのか?
美麗(念話)「それがさ・・・、この前に行こうとしてた米の集荷場から電話があって「大量の米が突然消えたから今日は来なくていい」って言って来たのよ。それで暇になった運転手達が皆こぞって来ちゃった訳、早く終わらせて呑みに行こうとしているみたい。」
貝塚運送の従業員は多くの種族の住民で構成されているが、やはり皆この世界にいるからか酒好きばっかりだった様だ。
好美(念話)「ちょっと待って、分かったから取り敢えず鍵を渡しておけばいい?」
美麗(念話)「大丈夫だと思うけど、好美のマンションってトラック数台も止めれるっけ?」
好美(念話)「駐車場は新しく構えることが出来たから問題無いよ。」
あの・・・、そういう話って本人達をほったらかしにして良いんですかね?
また勝手に話を進めてるよ・・・。




