316
吞んでばかりでは駄目ですよ?
-316 新居と寛大な国-
女性達が昼間から酒を煽りながら露天風呂を満喫してから数日経った事だった、相も変わらずの独断(いや自己中?)ぶりを発揮した大家によりブラッディ母娘はマンションの空き部屋を借りて住み始めた。因みに貝塚学園の寮として使っている下層階の部分に空き部屋が無かったという事もあるので他の住民には内緒で家賃は少し安くなっている様だ、こう言って良いのか分からないが無理矢理この場所に住めと言ったのが好美自身なのでちょっとしたサービス精神をもって良いかと思うのも納得はいく。
好美「何よ、それじゃ私が独裁者みたいじゃない。人聞きの悪い事を言わないでよ。」
す、すんません・・・。今度またビールでも奢らせて頂くので許して下さい。
好美「約束だからね、確か前に約束してもらったビールもまだだったはずだから一緒に奢ってよね。」
あ、あれ?そんな事ありましたっけ・・・、忘れないうちにお送りさせて頂きます。
さてと・・・、「鬼の好美」が出ない内に話を進めますかね。
初めて村以外の場所で住む事になった母娘は好美自らの案内で連れられた新居に驚きを隠せなかった、マンションの中では結構スタンダードな部屋だと思われるのだが。
ヌラル「すげぇな・・・、好美・・・、俺達本当にここに住んで良いのかよ。」
バハラ「何か申し訳ないよ、家賃だって安くしてもらっているのにこんなに良い部屋を用意してもらっちゃって・・・。何か罰が当たりそうで怖いよ。」
母娘は今にも泣きだしそうな表情で語っていたがずっと受けていた迫害の事を考えるとこれから良くなって行くばかりの人生(いややはりそこは「龍生」?)の前兆だと言えるのではないかと思われる、寧ろ好美からすれば少し遠慮した位だった様だ。
好美「何を仰っているんですか、私がお呼びしたのにこんな部屋で申し訳ない位ですよ。」
バハラ「私達にそんな事を言ってくれるのかい、こんなに嬉しくなったのは久方ぶりだよ。」
2人の年齢の事を考慮に入れるとバハラの「久方ぶり」という言葉が我々人間に比べると桁違いの物となっている事だと推測できる、きっとその分感動も遥かに大きい物なのだろう。ただ感動しているのも束の間、ヌラルには1つ心配している事があった。
ヌラル「ただ俺達がこうやって来たのは良いんだけど家財道具とかどうやって運べばいいんだよ、鳥獣族に知り合いもいないし流石に村に置きっぱなしという訳にはいかないぜ?」
世間一般からずっと離れていたティアマット達は「あの存在」を未だ知らない様だ、それは大家にとって決して忘れてはいけない大切な人物。
好美「大丈夫だって、それなら私の友達に任せておけば良いから。」
ヌラル「おいおい、流石に守1人であれを運ぶつもりか?」
いくら何でも無理がある、ただでさえ大型トラックを用いて隣国から往復で荷物を運んで来るだけでも数時間は掛かるというのに守がこの世界で所有している車は「カペン」1台のみ。俺は個人的に『転送』を使えば済むんじゃ無いのと思ってしまったが今は様子を見ておくのが1番か。
好美「そんな訳ないじゃん、今守は豚舎で餌やりをしている途中だよ。」
ヌラル「えっ?!と・・・、豚舎?!ネフェテルサに豚舎があるのか?!」
色々あって忘れかけていたが守はケデールが経営する肉屋に隣接する豚舎で働いている、ただヌラルが自棄に食らいついているのは気のせいか?
好美「な・・・、何?」
ヌラル「いや悪い・・・、ただ俺も村で豚を育てていた事があったからよ。」
好美「ふぅ~ん・・・。」
好美は軽く流したがもしかしたら貴重な情報かも知れない、違うか。
好美「でも確か・・・、基本的に野菜ばっかり食べていたんだよね?」
ヌラル「でも偶に贅沢したくなっちゃう時もあるじゃねぇか、黒龍族(俺達)にも豚カツくらい食いたくなる時だってあるんだぜ?」
意外と人間に近い存在、黒龍族。
好美「そんなのウチで働いてたらいくらでも食べさせてあげるって、安心してよ。」
ヌラル「嘘だろ・・・、ネフェテルサって随分と寛大な国なんだな・・・。」
おいおい、また独断で決めるんかい
 




