312
時に好奇心が周りを巻き込んでしまう事ってあるよね
-312 目覚めたきっかけ-
渚は若頭の指差した方向へと振り向いて一瞬だけ顔を蒼白させてはいたのだが、先日テレビで放映されていたとある番組の事を思い出して怖いもの見たさで蓋を開けてみる事に。
若頭「お嬢、お嬢が好奇心旺盛なのは昔から存じ上げてはいますが決して無理をしてはいけません!!」
渚(当時)「良いじゃないか、私が普段からうどんにたっぷりの唐辛子をかけて食べている事もあんたは知っているだろう?」
若頭「勿論知ってはいますが、お嬢が今お持ちの品はそのレベルで口にしてはいけないと思います。自分だってちょっとずつしか入れない様にしているんですよ、もしもの話ですが辛さに悶えているお嬢の姿を親分が見たら自分がどうなるか・・・。お願いです、本当にやめて下さい!!」
暴力団(と言うかヤクザ)に属する人間が仁義や義理人情を大切にする事は有名な話ではあるが、まさかここまで必死に説得するほどとは・・・。正直味の想像をするのも怖くなってくるのは俺だけだろうか、そして10年以上前の親父の舌は一体どうなっていたんだろう・・・(※作者の父親は10年以上前、某有名カレーチェーンの「10辛」をトッピング無しで食べていました)。
渚(当時)「大丈夫だって、私が好きでやった事だって言ったら父ちゃんも許してくれるはずだし若もお咎めなしで済むと思うから安心しなよ。」
しかし、やはり親分の怒った顔を想像すると怖くて仕方が無い。焦った若頭が渚から無理矢理瓶を奪い取ろうとすると・・・。
渚(当時)「あ・・・!!」
2人の手から離れた瓶は蓋を失い中身を下へとぶちまけながら落下していった、殆どを床やテーブルではなく渚の作った焼きそばが受け止めたので良かったのだが・・・(と言っても良いのか分からない)。
若頭「ほら、言わんこっちゃないじゃないですか。どうしよう・・・、兎に角ソースがかかっちゃった焼きそばは自分が何とか食べますのでお嬢は・・・、ってお嬢?」
若頭が床やテーブルを拭きながら振り向くと渚は激辛ソースたっぷりの焼きそばと箸を持って目を輝かせていた、若頭は嫌な予感がしてぞっとしていた。
若頭「お嬢、お願いですから早まった事をするのはお止め下さい。本当に親分に怒られちゃいま・・・。」
だが時すでに遅し、渚は笑顔でその焼そばをたっぷりと口へと運んでいた。
渚(当時)「いっただっきまーす・・・!!」
若頭「終わった・・・、これで俺の人生も終わりか。次の若頭は雉間に頼むか。アイツ優秀だから親分も認めて下さるだろう、これからどうしよう・・・。」
くよくよする若頭を横目に大量の焼きそばを啜る渚、正直俺もちょっとにしておけと言いたいのだが・・・。
渚(当時)「う・・・、うめぇ~!!何だこれ、若はこんな物を秘密裏に隠していたのかよ!!何でうちにちゃんと教えないんだ、これこそ父ちゃんにチクるからな!!」
目を輝かせながら焼きそばを食べ進める渚を呆然とした表情で見つめる事しか出来なかった若頭、一先ず事なきを得たから良かったじゃないか。
一方その頃、先程まで震えながら台所を覗き込んでいた下っ端達は渚の料理を食べた訳では無いのにその場で全員が倒れていた。その内数名は先日と同様にトイレへと駆け込んでいった様だ、それに気付いた若頭と渚は下っ端達の方向へと振り向いた。
渚(当時)「おいおい、お前らどうしたってんだよ。」
若頭「そうだぞ、お嬢のご友人に失礼になっちまうだろうが。早く起きやがれ!!」
しかし下っ端達はピクリとも動かない、まるで屍の様だ。嫌な予感がした渚は周りを見回してみた、すると・・・。
渚(当時)「先輩・・・、申し訳ないんですがうちの下っ端達に何したんですか・・・?」
こういった懐かしい昔話に花が咲く渚、ただ好美には疑問が残っていた。
好美「あの・・・、話終わっちゃいましたけど下っ端さん達は何故倒れていたんですか?」
渚「いや・・・、よく考えたら決して思い出したくはない悲惨な光景だったわ。」
いや・・・、何があったんだよ




