308
キッチンで騒動が起ころうとしていないか?
-308 渚(お嬢)-
若頭の事を心配するあまりどうしても厳しくしてしまう渚の表情にビクビクしながらも、先輩と真希子は必要かどうか分からない若頭の案内でキッチンへと向かった。
渚は台所へと到着するとすぐに何か使える物は無いかと探し始めた、真希子もそうだったのだが同じ部活の後輩部員として先輩の役に立ちたいと必死になっていた様だ。
渚(当時)「いつも食ってるような物は若が作っているからキッチンに1番詳しいのはあいつなんだけどね、せめて冷蔵庫に使えそうなものがあったら良いんだけど・・・。」
真希子(当時)「じゃあさ・・・、若頭さんに来てもらえば良いんじゃ無いの?」
先輩「そうだよ、その方が探す手間が省けて私も良いと思うけどね。」
真希子が言った通り1番把握している人物に聞くのがベストな状況と思われるが渚は簡単に首を縦に振らなかった、誰にも頼らず自分達の力で作りたいという気持ちがあったのだろうか。もしもそうだとしたらなんて先輩思いな後輩なんだろうと思ってしまうが・・・。
渚(当時)「先輩すみません、それが出来れば苦労しないんですけどね・・・。」
あれ?もしかして他に理由があるってのか?
渚(当時)「若の奴、またトイレに行っちゃったみたいなんですよ。今日のはいつもより酷いみたいでして・・・。」
キッチンに入るまでずっと我慢していたみたいだが、渚達と合流してから段々と限界が近づいていた様だ。
真希子(当時)「大変な人だね、後で何かお腹が温まる様な物でも作ってあげればいいんじゃないのかい?」
渚(当時)「いつもの事さね、また自分で勝手に何かすると思うから心配しないで。一先ずアイツには「お大事に(馬鹿者)」とでも伝えておくよ。」
渚は若頭の事を笑い話に何とか変えつつも食材の捜索を再開した、そしていつも深夜にこっそり食べる用のインスタント麺を隠している戸棚を開いた。
渚(当時)「う~ん・・・、ここはあんまり開けたくないんだけど・・・。」
深夜にインスタント麺を食べている場面を若頭に見られてしまっては何度も注意された記憶があるので、未だに隠し持っているという事実や隠し場所をバレたくない渚は少し小さめに開けて中身を確認した。
渚(当時)「そうですねぇ・・・、先輩これなんかどうでしょうか。」
渚が戸棚から取り出したのはインスタント麺に水を加えて作るシンプルなソース味の焼きそばだった、ただ広域指定暴力団の家に来てまで食うものだというのだろうか。
真希子(当時)「渚、それをアレンジして作るって訳かい?」
渚(当時)「ああ・・・、これに色々と加えてスタミナ感たっぷりに仕上げてやろうと思うんだよね。」
そう言うと渚は笑顔で冷蔵庫から豚肉やキャベツ等の具材を取り出していた、ただ今も昔も食材を無駄にしてはいけないという精神があるはずだと思われるが・・・?
先輩「そんなに作り過ぎる訳にもいかないんじゃないのかい?最近野菜とかも安くないからね。」
強力を仰いだ側ではあったが先輩は至って冷静だった、しかし渚からすればそう言った事も想定の範囲内であった。
渚(当時)「大丈夫ですよ、もし失敗したとしてもアイツらが食ってくれるから大丈夫ですって。」
渚が手差しした方へと振り向いてみるとキッチンの入り口付近で下っ端達がガクガクプルプルと小刻みに震えていた、ただならない理由がありそうだがどうかしたのだろうか。
渚(当時)「あんた達、大丈夫だよね・・・?」
下っ端達「えっ・・・、あ・・・、はい・・・。」
渚(当時)「大丈夫だよね・・・?」
下っ端達「は・・・、はい・・・!!」
親分の実の娘である渚のドスの利いた声に下っ端達はビクビクしていた、どうやら理由は渚による脅しだけではなさそうだが何があったのだろうか・・・。
嫌な予感がするが・・・?
 




