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気にする程の事かは分からないが・・・。
-305 売れ筋商品の逸話-
結愛がこれから夜勤へと入る事になった母のシフトについて『念話』で改めて確認を行っている中、好美には「暴徒の鱗」の関係者になってからずっと気になっていた事があった。
好美「そう言えば渚さん、今頃になって聞きますけど「特製・辛辛焼きそば」ってどの様にして出来たんですか?やっぱり光さん関係だとかですか?」
渚「確かにそうだね、元々は自分用に作った料理をおねだりしてきた光に与えたのが始まりだったんだけど実はそれより前の逸話があるんだよ。」
好美「逸話・・・、ですか?」
本当にインスタントの焼きそばに辛い食べ物を色々と追加しただけという見た目通りの「手抜き料理(だと言うのに店では結構売れ筋商品になっている)」にどう言った逸話があるというのだろうか、逆に興味が湧いて来た気がする。
渚「あれは私や真希子が中学生だった頃の話だよ・・・。」
女性に年齢を問うのは失礼にあたる(と最低でも作者個人は思っている)ので何年前かは明かさないが話は走り屋達が中学生になってまだ1年も経っていない頃に遡る、当時同じ部活に入っていた2人は放課後の練習を終えて片づけを終わらせようとしていた。
渚(当時)「そろそろ終わりかな、真希子の方は終わりそう?」
真希子(当時)「もうちょっとで終わるから待っててくれる?」
渚(当時)「別に良いけど早くしないと限定パフェが無くなっちゃうよ、あれ凄く人気なんだから。」
運動部に所属している中学生と言ってもやはり2人共女子、やはり甘い物には目が無い。
真希子(当時)「お待たせ、早く食べに行こう。」
渚(当時)「調子良いんだから、誰を待っていたって言わせるのさ。」
急いで自転車へと跨り学校から少し離れたフルーツパーラーへと急ぐ、どうか生活指導の先生に見つかりません様にと願っていた2人を意外な人物が呼び止めた。
声「赤江(渚)!!三ツ矢(真希子)!!2人で仲良く何処行こうとしてんの?」
2人(当時)「先輩、申し訳ないんですけど私達急いでまして・・・。」
先輩「あれでしょ、「限定パフェ」食べに行こうとしているでしょ。あれいつ行っても無くなっている事が多いから焦っちゃうのよね。」
渚(当時)「そうなんです、だからお話なら別の日に・・・!!」
先輩「あれね実は同行人数が多ければ多い程食べれる確率が高くなるの、折角だから私もついて行こうかな。どうせパフェ待ちながら出来る話だし、良いでしょ?」
数日前に期末テストを終えたばかりの2人は頑張ったご褒美として誰にも邪魔される事無くこっそりと行きたかった様だが、地区大会へと出場した際には必ず表彰台に上がっているので部員達の憧れの的となっているこの先輩の言う事を無視する訳にいかないと渋々連れて行く事に。
3人は早速目的のフルーツパーラーへと急いだ、その日は3人共運が良かったらしく限定パフェは丁度3人分残っていた様だ。
早速注文を終えた3人は席で出された冷水で喉を潤した、自転車を飛ばした際の疲れが吹っ飛んだ渚と真希子に先輩が突然切り出した。
先輩「実は2人に相談があってさ・・・。」
真希子(当時)「私達に・・・、ですか・・・?」
他の部員と同様に2人も憧れていたこの先輩が相談とは・・・、一体何を聞こうとしているのだろうかと不審がってしまったのも無理は無い。
先輩「こんな所で聞く話じゃ無いんだけどね、いつもスタミナをつける為に食べている物って何か無い?」
渚(当時)「スタミナ・・・、ですか・・・?」
スタミナと言えばやはり焼肉を連想させるが、3人が通う中学校の近くには焼き肉屋や精肉店が無かった上に喉から手が出るくらい食べたくなっていたスーパーの肉は中学生にはとても払うことが出来そうにない金額だった。
真希子(当時)「ご両親に何か作って貰ったら良いじゃないですか、何か問題でもあるんですか?」
先輩「それがそういう訳には行かないんだよ、両親は今夜辺りから母の実家に行くみたいだけど今度試合があるだろ?何か自分でも簡単に作れる物って無いかな・・・、ってさ。」
渚(当時)「そうなんですね・・・、あの・・・、一先ずパフェ食べません?」
ごもっとも・・・。




