304
まさかイタリアンだったとは・・・、正直変わってんな・・・。
-304 思い出は思い出すだけの物?-
別に悪いと言っている訳では無いのだが、「お袋の味」という言葉からは連想されない料理の登場に空いた口が塞がらない好美と結愛、目の前の人間達のその表情を見た混沌龍は不思議そうな顔をしていた。
ヌラル「何だよ・・・、母ちゃんの作る「アボカドとトマトのバジルサラダ」は美味かったんだぞ。」
結愛「別に否定していた訳じゃねぇよ、ただ「野菜炒め」ばっかり食ってたって聞いてた気がするから「あれ?」と思ってな。」
どうやら自分の記憶が正しいかどうかを内心で疑っていた結愛、好美も同様の事を考えていたのだろうか。
好美「そうだったの?」
あらま、違ったみたいだな。
結愛「何だよ、好美は違ったのかよ。」
好美「まさかお母さんとの思い出の料理が「アボカドのサラダ」とは思わなかったからさ、「白菜漬け」とか「きんぴらごぼう」のもっと和風な物をイメージしてさ。」
ヌラル「確かに野菜中心の生活だったからそういった料理だって出てたよ、ただ本人もそうだったんだけど俺が飽きてしまったらいけないと思って色々と種類を増やしてくれていたんだ。」
懐かしい思い出を嬉しそうに語る様子からヌラルに対するバハラの親心が垣間見えた気がした、幼少の頃に旦那を亡くして女手一つで娘を育てていたので余計だったのだろう。
ヌラル「そうだ、2人が元の世界にいた頃に食ってたって言う「お袋の味」とかってのを教えてくれよ。俺ばっかり語っていると面白くないだろ?」
陽気に質問しているヌラルに対して期待にこたえなければと意気込む好美。
好美「私はカレーだったかな、じゃが芋の代わりにゴロゴロと大きく切られていたシャキシャキシャリシャリの蓮根が入っていたの。お肉も牛肉じゃ無くて鶏肉だった、結構変わった内容だったけど美味しかった(作者の家のカレーがそうです)。」
ヌラル「蓮根か・・・、俺や母ちゃんも好きな野菜の1つだけどその発想は無かったな。食ってみてぇ・・・。」
好美の美味しかった思い出に自然と涎が止まらなくなっているヌラル、ただ冷静に今の状況を整理して欲しい。
好美「ヌラル、思わずそうなっちゃうのは分かるけど涎が湯船に入っちゃうから勘弁してくれない?」
ヌラル「悪い悪い、でも好美がいけないんだぞ?あんなに美味そうな物を想像させるなんて好美は罪な女だな。」
好美「やめてよ、それじゃ私が悪いみたいじゃない。」
涎を拭い取って顔を洗うヌラル、こうやってすぐ行動に移せるのは露天風呂に入っているからが故だと言えるのかも知れない。
ヌラル「結愛の方はどうなんだ?やっぱり社長一家らしい思い出があるんじゃ無いのか?」
結愛「お・・・、俺か・・・。えっと・・・。」
一気に表情を曇らせる結愛を見て「流石にまずい」と思った好美、結愛と母・莉子は結愛がまだ小さかった頃に生き別れた後にこの世界で先日再会したばかりなので当然(と言っても良いのか分からないが)「お袋の味」と呼べるものが無い。
好美「ねぇ結愛、良かったら今からお母さんにここで何か作って貰ったら?」
結愛「そ・・・、そうだな。思い出が無いなら作れば良いんだよな、好美も偶には良い事言うじゃねぇか。」
好美「何よ、それどういう意味?」
クスクスと笑いながら好美と話した後に莉子へと『念話』を飛ばした結愛、ただ結愛に先日『念話』を『付与』されたばかりの莉子はまだ『念話』自体に慣れていない様だ。
結愛(念話)「母ちゃん、今大丈夫か?」
莉子(念話)「うわわわわわ・・・!!結愛、びっくりするから暫くの間は電話にしとくれって言ったじゃないか。」
結愛(念話)「悪かったよ・・・、それでなんだけど母ちゃんの夜勤っていつからだっけ?」
莉子(念話)「明後日の夜からだよ、あんたから聞いた事なのに覚えていないのかい?」
大企業だから仕方が無い




