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龍族達の年齢が桁違いなのは今に始まった訳では無いのだが・・・。
-299 命の水-
最近知り合ったばかりの友人(いや友龍と言うべきか)の年齢が桁違いだったことを受けたが故に改めて自分が異世界にいる事を実感した結愛、ただ敢えて言うなら相手は自分に合わせて変えているだけで実際の姿は巨大な龍なので否定は決して出来ないと言うより元の世界にいた時に伝説だと思っていた憧れの存在に会っているのだと改めて実感した様だ。
結愛「2298歳・・・、ですか・・・。これはこれは・・・、大変失礼致しました。」
桁違いの年月を生きているが故に先程まで友として接していたヌラルを唐突に先輩として扱い始めた結愛に好美は少し違和感を覚えていた、理由はただ1つ。
好美「今更何言ってんの、龍族の人達なら貝塚学園にもいっぱいいるでしょ。それにヌラルちゃんが先輩だと言うんだったら強制収容所にいたガーガイさんはどうなるの?」
好美は大学内で連れ去られ魔力によりティアマットの姿に変えられていたバハムートの事を思い出していた、確か変わり果てた姿をした学生に対して結愛は結構強めの態度を取っていた様な気がする。ただそれはゼミの担当教授から相談を受けていたが故に理事長として学生の事を親身になって心配していたからだと推測できるが今語るべきなのはそこではない、きっと貝塚学園・中等部や高等部を合わせても龍族を含めた魔獣達が沢山通っているはずなのでこれまで学生・生徒達に対して取っていた態度を改めないといけなくなってくる。言ってしまえば結愛(と言うより人間達)にとったら大先輩たちばかりが通っていると言っても過言では無い、その学生達にこれ以上デカい口を叩いている訳にはいかないと思えて仕方が無かった。
ヌラル「そうだよ、龍として長年生きているだけで人間で換算すれば結愛より年下になるんだから本当は俺が頭を下げないといけないのに。」
結愛「何言ってんだよ、友達に頭を下げろなんて言える訳が無いだろうが。それより早く開けろよ、折角のビールがぬるくなっちまうだろうが。」
ティアマットにとって初めての酒が不味い物だといけないと気を遣う結愛は可能な限り冷え冷えで美味い状態で楽しんで欲しいので早く缶を開ける様に促した、好美の家に『瞬間移動』して来た時から水着姿だったので少し体が冷えて来たヌラルは好美に申し訳ないと思いながらゆっくりと温泉に浸かって缶のプルタブを動かし始めた。
ヌラル「い・・・、頂きます・・・。」
結愛「お・・・、おい!!ちょっと待て!!」
緊張しながら生まれて初めての酒に口を付けようとするヌラルを急いで制止する結愛、何があったのだろうか(※今更ですが健全な物語進行の為に水着を着用しています)。
ヌラル「な・・・、何だよ・・・。」
結愛「せめて乾杯させろや、お前この前の呑み会にいなかっただろうが。」
ヌラル「ああ・・・、そう言えば事件解決祝いで呑み会やるって聞いていた様な・・・。」
ヌラルは先日の祝宴の事を知らなかった訳では無かった、しかし義弘によって囚われの身となっていた母親と再会したので親子の時間を楽しみたかった為に行かなかった様だ。
結愛「何だよ、だったら母ちゃんと一緒に来れば良かっただろうがよ。」
ヌラル「いやいや、世の中「親子水入らず」って言うだろうが。俺はただ久々に会った母ちゃんとゆっくりと過ごしたかったんだよ、別に良いだろ?」
結愛はヌラルの言葉を聞いて決して否定する事はせず、即座に首を縦に振った。酒宴の席で果たした母・莉子とのまさかの再会の瞬間に味わった感動を今でも覚えていたからだ。
結愛「そうか・・・、何か悪かったな。取り敢えず乾杯しようや、この前はありがとうな。」
結愛とヌラルは互いの持っていたビールの缶を当て合い冷えたビールを口へと流し込んだ、まるで山中で湧き出ていた「命の水」を有難く頂戴する様に。
ヌラル「ああ・・・、これがビールの味なのか。結構いけるもんだな。」
結愛「ほう・・・、分かってくれるか。これからいくらでも吞ませてやるぜ。」
ヌラルの表情を見て満足している結愛の嬉しそうな様子を放っておけなかったのが約1名、決して忘れて訳でいたは無いがここは好美の家な上にビールも好美の所有物。
好美「ちょっと!!私のビールを呑みまくっているクセにそれは無いんじゃない?」
結愛「悪い悪い、今度下の店にビールを樽で納品するから許してくれよ。」
好美「店と私の家に2樽ずつね、でないと納得できない。」
結愛「えっ?!おいおい・・・、何か想定より多いんだが気のせいか?」
おいおい結愛、相手は好美だぞ?




