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英雄にもちゃんと教育を受ける権利があるはずだ
-297 将来を任せ・・・、てもいいの?-
結愛は先程の言葉を反省して思い悩んでいた、(飽くまで見た目での)年齢が一般的な小学生や中学生と一緒ならば叔母の経営する魔獣保護養育施設にて十分に教育を受けさせる事が出来るがヌラルの場合は話が別だ。ただ貝塚学園(特に大学)の理事長としての意見を述べるならばある程度の学力を有した状態で入学して欲しいというのが本音、しかしこの世界の住民にとって大きな1歩を踏む礎になった友を放ってはおけない。因みにだがヌラルの母・バハラは迫害を受ける以前に山の麓の村にあった小さな学校である程度の教育を受けているので問題なく就労できる。
結愛(当時)「ヌラル、因みにどんな仕事に就きたいとかあるか?」
ヌラル(当時)「「どんな仕事」ねぇ・・・、そんな事今まで1度も考えた事ねぇな。恥ずかしながらだが俺、さっきも言った通り学校にも行った事ねぇから基本的な読み書きすら出来ないんだよ。」
この世界においても読み書きをする機会が幾多にも存在するので是非とも可能な状態へと持って行きたい、いっその事そう言った『能力』を『作成』して『付与』してしまおうかと思ったがそれだと学校に行く必要が無くなって来る。
一先ず結愛は強制収容所で実際にあった事象を思い出して提案してみる事に。
結愛(当時)「「読み書きが出来ない」ねぇ・・・、そう思うならこの紙に何でも良いから書いてみろよ。」
学園の理事長から渡されたメモ帳とペンと徐に受け取るとたどたどしい様子でペンの先を出したティアマット。
ヌラル(当時)「だから出来ないって言ってんじゃん・・・、ってあれ?」
メモ用紙にあったのは一度も書いた事の無い「ヌラル・ブラッディ」という名前が。
ヌラル(当時)「ほぉ・・・、俺の名前ってこんな字だったんだな。それにしてもどうなってんだよ、自分でも意味が分からない位にスラスラと書けたんだが。」
結愛(当時)「こう言えば屁理屈になるかも知れないんだけどさ、お前の「読み書きが出来ない」という「状態異常」を「無効化」したんだよ。これで堂々と学校に行けるだろ?」
そう、結愛が『付与』したのは好美の真似をして『作成』した『状態異常無効』の能力だった。そのお陰で文字の読み書きが出来るようになったヌラルは顔を赤らめながら感動する様に喜んでいた、しかし『人化』が解けかけている位に戸惑いの気持ちもあった様だ。
ヌラル(当時)「でも学校に行ける様になったのは良いんだけどさ、学校に行って何をすれば良いのか分からないんだよ。」
結愛(当時)「う~ん・・・、その考えは改めた方が良いと思うぞ。」
折角出来た友に「間違っている」などと言う圧のある言葉を投げかけたくない結愛は慎重に言葉を選びながら学園への入学(いや編入?)をより一層勧める事に。
結愛(当時)「ヌラル、さっきも聞いた事なんだけどお前はこれからどうしたいんだ?」
ヌラル(当時)「いやさっきも言っただろ、全く持って分かんねぇって。」
結愛(当時)「それで良いんだよ、それで。」
ヌラル(当時)「何を言っているんだよ、俺にも分かる様に説明してくれるか。」
次いつ来るか分からないチャンスを最大に活かしたくて必死に結愛の言葉にしがみつくヌラル、その瞳から「学校」とはどう言った場所なのかをより一層知りたいという純粋な気持ちが溢れ出ている様な気がした。
結愛(当時)「現時点で分からなくても良いんだよ、産まれてからすぐにやりたい事が分かる奴なんていねぇんだ。学校ってな、俺個人的には「やりたい事を見つける場所」だと思うんだ。いや、そうであるべきなんだよ。探す前から、そして色んな経験する前から将来が分かる奴なんていたら俺だってびっくりだし学校なんて必要無いんだ。どうだ?貝塚学園で学んでみないか?学費の事で親御さんに心配をかけさせたくないなら今度から設けようと思っていた奨学金制度を優先的して利用できる様に斡旋してやるし、家の事が心配なら勿論寮の部屋だって用意する。何なら小遣い稼ぎを兼ねたアルバイトも紹介してやるから安心しろって、どんな不安でも俺にかかればどうって事ないさ。」
頼もしい台詞を少しも抵抗する事無くヌラルに投げかけた結愛は今更ながら思い出した事があったので好美に『念話』を飛ばす事に。ただ好美も『探知』が出来る侮れない存在。
結愛(念話)「好美、急で悪いんだが寮の部屋ってまだ空いてたよな?」
好美(念話)「何言ってんの、下層階に寮として使える様にしてすぐに満室になったって言ってたのあんたじゃないの。それとさ、私に後先の事を押し付けようとしてたかも知れないみたいだけどうちのアルバイトは2店舗とももう人手が足りているよ。」
全てお見通し




