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好美、何か裏がある訳じゃ無いよな・・・。
-290 悪戯好き達-
酒宴の席で起こっている天地がひっくり返るレベルの珍事に驚きを隠せないでいる拉麵屋の経営者陣をよそに大臣の事をずっと疑ってしまっているデカルトに協力する為、好美は大臣の師匠へと『念話』を飛ばしてみるが個人的に聞きたい事があった様だ。
好美(念話)「渚さん、ちょっと気になっていたんですが屋台は直ったんですか?」
やはり屋台の修理代が馬鹿にならないので他の経営者陣と共に警戒していた好美、口調から少しほろ酔い気分になっていた事がバレた模様だ・・・。
渚(念話)「好美ちゃん、酒を吞みながら仕事の話なんて絶対しないあんたが珍しいじゃないか。まさか結愛ちゃんの所にでもいるのかい?」
シューゴと同様にまだ屋台で巡回中だった渚はただ酒を楽しむ好美が羨ましかったらしい、ただ今は運転中なので後の楽しみにしておいて欲しいのだがやはり渚も酒好きなので。
渚「狡いじゃないか、私だって混ぜておくれよ。」
好美「渚さん!!仕事中でしょ?!」
好美が露天風呂で酒を楽しんでいる時の様に突然現れた渚、しかし好美以外にも黙っていない者達が数名ほど。
シューゴ(念話)「渚さん、『瞬間移動』で呑みに行ったみたいですけど屋台の方はどうしたんです?」
一(念話)「そうだよ、それにまだ営業時間の最中じゃないか。各所でお客さんが待っているかもしれないだろ?」
他の店舗や屋台と違って渚の屋台で提供されている「特製・辛辛焼きそば」は紛れもなくオリジナルの物だ、これを楽しみにしている客達が多くいるのも紛れもない事実と言っても過言では無い。
渚(念話)「屋台は『アイテムボックス』にしまっちゃったよ、それに最近はインスタントで食べれる様になっているんだから問題無いって。」
これは数か月前の事なのだが実は貝塚財閥(結愛)の協力の下で最近渚の「特製・辛辛焼きそば」が家庭で楽しめるインスタント食品として販売された様だ、今回の為に元々特製麺を使っていた麺やソース等を再び研究しなおして販売へとこぎ付けたらしい。
渚(念話)「結愛ちゃんのお陰でバックマージンがある程度入る様になったんだから少しサボったって問題無いって、それに今日は1週間の中で1番客数が少ない曜日なんだよ。」
渚は軽快な様子で話しているがその予想に反して2号車が停車する予定だった駐車場では多くの客が渚の到着を今か今かと待ちわびていた、これもきっとインスタント販売の影響と思われるが流石にお客を裏切る訳にはいかないと好美は咄嗟にある行動に出た。
渚「さて私もやっとビールにありつけるよ・・・、ってあれ?(念話)好美ちゃん、これはどう言う事なんだい!!」
好美(念話)「お客さんを裏切る人に経営者を名乗る資格はありませんしビールを呑む資格もありません、ちゃんとお客さんに美味しい料理を提供してから来てください。」
そう、渚と渚の経営する2号車を元の駐車場に『転送』したのだ。それにしても渚の屋台は『アイテムボックス』の中にあったはずなのにどうやって『転送』したと言うのだろうか。
渚(念話)「あんた、人の『アイテムボックス』の中から物を取り出すなんて怖い事よくやるね。」
好美(念話)「いや・・・、この前加護を授かってから出来るようになりまして・・・、って今は私の話じゃないでしょ!!」
渚(念話)「駄目だったか、上手く誤魔化して宴に戻ろうと思ったんだけどね。」
好美(念話)「駄目に決まっているじゃないですか、ちょんと商売をしてから堂々と来て下さい。」
上手く話の腰を追って好美を自分の味方に引き入れた上で酒宴会場に戻ろうとした渚、しかし世の中そこまで甘くは無い。
渚(念話)「仕方が無いね、じゃあちょっくら走って来るわ。」
渚のこの様なサボり癖まで弟子に伝承されていないことを切に願う経営者達。
好美「あ・・・、ロラーシュさんの事を聞くの忘れてた。」
駄目じゃん・・・。