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好美の声は目立っていた様で・・・。
-289 ダンラルタ王国初の出店に向けて-
不機嫌そうに結愛にお代わりを要求する好美の声を聞いたデカルトは王城における重要案件を思い出した、好美が素面のままの内に出来る限り話を進めて行きたいと思うのだが大丈夫だろうか。
デカルト「好美さん・・・、今ちょっと宜しいでしょうか。」
1国の国王にここまでの気遣いをさせる好美を見た莉子は目の前の女の子がこの世界における相当なやり手だと信じ込んでしまった、確かに間違っては無いのだが3国の国王達の腰の低さがかなりの物だからという理由の方が正しいかも知れない。
好美「デカルトさんじゃないですか、こんな酒の席で何の話をしようとしているんです?」
心当たりはあるのだがこの様な楽しい席では何となく仕事の話をしたくない好美、個人としては純粋に酒と料理を楽しみたいのだが・・・。
デカルト「ほら、うちのロラーシュの事ですよ。」
好美「確か・・・、新店の開店に向けて渚さんの屋台で修業中だって話ですよね?デカルトさんには何の連絡も無かったんですか?」
ロラーシュを弟子にするに当たり、実は渚はある条件を付けていた。デカルトを含んだ城の者達がサボらずにちゃんと修業を続けている事を確認できるようにする為、「定期的に必ず王城へと向けて連絡を行う事」だったのだ。
デカルト「本人からはね・・・、一応念の為に『念話』で渚さんには随時確認していたんですがやはり本人自身の口からちゃんと報告を受けるべきだとずっと待っていたんです。」
別に大臣を預かっている渚を信用していない訳では無いのだが、やはり数年前に王城の仕事をサボってゴブリン達が働いていた鉱山でミスリル鉱石を食べていた前科をまだ忘れていなかったからだ。
好美「私は何も聞いていませんけど、王城で開くと言っていたお店の建設の方はどうなっているんですか?」
デカルト「店の方はもうすぐ完成しますよ、後は保健所の方々のご指導の下で不備が無いか確認するだけですかね。」
開店まで秒読みと言える所まで来ているみたいだが、当の本人であるロラーシュ大臣がちゃんと「暴徒の鱗」の味を会得出来ているかが気になっている様だ。そんな中、隣に座っていた結愛がほろ酔い気分で2人の会話を聞いていた。
結愛「何だよ、王様と商売の話か?」
好美「結愛、流石に結愛でも社外秘の事を話す訳にいかないよ。」
結愛「楽しそうな話をしているんだから聞かせろよ、儲かりそうだったら俺が自ら投資してやっても良いんだぜ。」
この世界でその名を知らない者はいない程のやり手と言える結愛ではあったが正直言って投資のイメージは全くない、真希子みたいに上手く資産を増やす事が出来るというのだろうか。
好美「そう言ってくれるのは嬉しいけど、今建設中のダンラルタ王城店(仮)はデカルトさんがオーナーになるって話になっているのよ。」
デカルト「こ、好美さん?今・・・、何と?」
動揺するデカルトの様子から見るにいつも通り好美が誰にも相談する事なく1人で勝手に決めた話だと思われるが流石に王様を巻き込むのはどうかと思ってしまうのは俺だけだろうか、と言うか店の名前まで勝手に決めて良いのかよ。
好美「まだ「(仮)」の状態だから良いじゃん、それにちゃんと渚さんやパルライさんに連絡する・・・、つもりだもん。」
す、すんません・・・。流石に俺も女の子を泣かせる事はしたくないからな。
早速好美は他の経営陣に『念話』で連絡をする事に、意外とちゃんとしているんだな。
好美「本当に失礼な奴だな・・・。(念話)皆さん、今お時間大丈夫ですか?」
渚(念話)「好美ちゃんじゃないか、今はお楽しみじゃ無かったのかい?」
シューゴ(念話)「そうですよ、酒の席では仕事の話を絶対しないって言ってたじゃないですか。」
一(念話)「こんなに珍しいことは無いな、下手すりゃ明日雪が降るぞ。」
いくら冗談でも失礼な気がするが、ここでは雪が殆ど降らない事を忘れて無いか?
いや、今それは関係無いか。