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そろそろ「暴徒の鱗」の様子が気になって来たかな
-278 本心(好き)-
元黒竜将軍がどう考えても渚や光からの遺伝が理由と言えるガルナスの食欲や性格に諦めの表情を見せる一方で「暴徒の鱗 ビル下店」ではオーナーが相も変わらず咀嚼を続けていたが、明らかに不自然な点が1つあった。しかし、従業員の過去や事情を全て知り尽くしている訳ではないので飽くまで自然な形を取って質問してみる事に。
好美「ねぇ、1つ聞いて良い?」
ピューア「あんたね、子供じゃ無いんだから食べるか喋るかどちらかにしなさいよ。」
相も変わらず従業員に呆れた表情をさせる好美、本当にどうしてオーナーとしてやっていけているのかが不思議で仕方が無い。
そんなオーナーが数秒かけて口に入れていた物を咀嚼して飲み込んだのを確認したナイトマネージャーはグラスに水を注ぎながら質問を聞き出す事に、それにしてもどうして未だに帰らなくても平気なのだろうか(俺だったら即座に帰りたくなるのに)。
ピューア「それで?私達に何を聞こうとした訳?」
好美「イャンとピューアってさ、過去に一緒に仕事をしていた事があるの?」
イャンダ「いや、全然。」
ピューア「寧ろあの時が初めましてだよね、本当に緊張したのもそうだけどけどイャンのお陰で調理がしやすかった事を覚えているのよね。」
イャンダ「別に俺は何もしていないよ、それで・・・、それがどうしたの?」
好美は先程から2人の様子をずっと見ていた、確かに最近守が朝早くに仕事へと向かう事は本当だったが実はこの時間帯に食事をしていたのはこの為でもあったのだ。
好美「いやね、個人的に思っただけなんだけど2人って働いている時間帯が全く逆なのにどうしてそんなに息がピッタリなのかなと思ってね。」
イャンダ「別に特に理由なんて無いよね、と言うかピューちゃんには無理させて申し訳ないと思っていながら余計だよ。」
ピューア「それに関しては別に気にしないでって言ってんじゃん、私自身は「好きでしている」だけだし。」
先程にもあったがピューアの放ったこの「好きでしている」という言葉、好美が1番怪しいと思っていたのはこれだった。先程もそうだったがどうして顔を赤らめながらだったのだろうか、普通に「仕事が好きだから」と言うのならこんな事にはならないはずだ。まさか・・・、な・・・。
好美「ねぇピューア、お水ばかりで飽きて来ちゃったから奥の部屋でお茶貰っても良い?」
ピューア「何よ、あんたがやれって言ったからこの時間帯はドリンクバーを無料開放しているんでしょ、自分で取りに行けば良いじゃ無いの。」
朝の時間帯は朝食メニューを中心とした提供を行っているのだが通勤通学などの理由でどうしても飲食店を利用する客は少ない、そこで少しでも気軽に利用してもらおうとソフトドリンクのドリンクバーを無料開放していた、先程ニクシーが言った通りこれは好美の提案であった。
好美「良いから。」
ピューア「まぁ、そう言うなら良いけど。」
少し重めの雰囲気を醸し出してナイトマネージャーを呼び出したオーナー、只事ではなさそうな空気を感じ取ったピューアは致し方なくついて行く事に。
ピューア「どうしたのよ、珍しくマジな顔しちゃって。」
好美「マジな顔していたのはピューアの方でしょ、さっきから分かってたよ。あんた、イャンの事好きでしょ。」
ピューア「そんな事・・・、無いわよ・・・。」
好美「ほら、またその顔した。何処をどう見ても恋する女の顔をしているじゃない。私には分かるんだから。」
そう、先程からピューアが「好き」と言っていたのは仕事ではなくイャンダの事だったのだ。そりゃあ顔が赤くなる訳だ。
好美「ねぇ、イャンダに自分の気持ちを言わなくても良いの?」
ピューア「駄目よ、私達人魚族は同じ種族の者同士で結婚するっていうのが昔からの習わしなんだから。」
好美「それってさ、前に聞いたけど別にそうしなきゃいけないって訳じゃ無いし恋愛って自由であるべきだと私は思うけどな。その為にこの店は従業員同士の恋愛を禁止にしていないもん。」
好美の言葉には説得力があった、しかし本当に昔からの習わしが理由なのだろうか。
いや、違う気がする