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ダルラン家のエンゲル係数はどうなっているんだろう
-277 母娘-
いつも以上に勢いよく走るダンピール(ハーフ・ヴァンパイア)の様子をバッチリと見ていた母親は頭を抱えながらため息をついていた、光の心中では嫌な予感が増して行くばかりでどうしようもなかった様だ。
光「参ったな・・・、あの様子だと今夜の夕食をどうすれば良いか分からなくなるのよね。」
毎晩の様に白飯を何回も何回もお代わりするガルナス、それに伴っておかずもとんでもない量を必要とするので何を作ればいいのか悩まされていたらしい。今日に至っては通常より多くのカロリーを消費しているので余計だと言っても良いのかも知れない、ただこれに関して元黒竜将軍は気になる事が1点(ただ返答は想像できると思われるが)。
デルア「こういう時って兄はどうしているんです?」
光「ナルは店があるから手伝える訳が無いのよ、ただ私がパートに行っている時とか定休日だけは代わりに色々とやってくれるから助かるんだけどね。」
デルアは兄が光の旦那として立派に活躍している事が嬉しかった、やはり仕事のみに集中すべきなのが男としての本来の在り方では無いと考えていたからだ。2人で協力して家事を行う、それが夫婦仲をよくする1番の近道なのでは無いだろうかという気持ちが強かったみたいだ(俺は相変わらず独身だから分からないが)。しかし安心しているばかりでは無かった、このままだと余計に自分の希望を言いづらくなってしまっている。一先ず自分を安心させる為(いや、家族仲についてより一層知る為)に気になる事を切り出してみる事に、もしも返答が「YES」ならきっと例の話を切り出しやすいだろう。
デルア「ガルちゃんや渚さんはお手伝いとかしてくれるんですか、まぁ正直俺が聞いて良いのか分かりませんが。」
光「多少ね、両方共今日は例外で暇そうにしているみたいだけど本来お母さんは屋台の営業があるしガルナスは魔学校の陸上部だから2人共忙しいのよ。」
言われてみればそうだ、渚は長年に渡り3国間で屋台を乗り回している上にガルナスの健脚を教育支援に力を入れている貝塚学園魔学校の教員達が見逃す訳が無い。
光「それにしてもやけに詮索してくるね、何かあったの?」
やたらとプライベートに踏み込んで来る義弟の事を怪しく思った光、確かにここまでの質問攻めに合うとそう思うのも仕方が無い。
デルア「すみません、義姉さんの事が心配になっちゃいまして。ただ無理をして欲しくは無いなと思っただけなんですよ、お気になさらないで下さい(余計言い辛くなっちゃったよ)。」
光「そう?だったら良いのよ、こちらこそ気を遣わせてごめんなさいね。でも大丈夫、元の世界にいた頃に比べたら全然無理なんかしてないから。」
義弟を安心させたくて言ったつもりだったがこれに関して決して黙ってはおけない人物がタイミング悪く『察知』を使用した様だ、喧嘩にならなきゃ良いけど。
一(念話)「光ちゃん、それだと俺が無理させてたって言ってる様な物じゃないか。」
そう、元の世界にいた頃の光の元上司で叔父の一 一秀だ。
光(念話)「叔父さん、聞こえていたの?」
一(念話)「偶々だよ、今日は2号車が出ていないみたいだから何か知らないかと思って聞こうと様子を伺っていたんだ。それにしても俺は光ちゃんに無理をさせたつもりは無かったんだけどな、何かごめんよ?」
光(念話)「気にしてないって、それに営業回りを終えた私達の為にお茶を淹れてくれる上司なんて叔父さんくらいしかいなかったもん。感謝はすれど文句なんか言える訳無いよ。」
一(念話)「だったら良いんだけどね、それで渚さんはどうしているんだい?」
光(念話)「また屋台を壊しちゃったみたいで出せないって言ってんのよ、それで私の畑で収穫の手伝いを・・・、って!!お母さん、何やってんのよ!!」
渚(念話)「いや、お腹空いちゃってね。」
光(念話)「だからって収穫した胡瓜を全部食べる事無いじゃない、それで冷やし中華を作るんじゃ無かったの?」
渚(念話)「忘れていたよ、あたしったらおっちょこちょいだからね。」
光(念話)「自分で言わないの、それに自覚があるなら直そうとしなきゃ。」
どうやらこれに関しては母と娘の間で性格が正反対になっている様だ、よっぽど父親の阿久津がしっかり者だった事が伺える。
光(念話)「まぁ良いけど、はぁ~・・・。」
そんなに落ち込まなくて良いですよ