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渚さん、折角楽しそうにしているんだからやめてあげて下さい


-276 赤いトマトと赤い思い出-


 義姉が作ったトマトを1口食べて一目惚れしてしまったデルアの心中を察した渚が足音を殺して近づいて来た、ただデルアは見た目以上に甘みの強いトマトにずっと夢中だった様だ。


渚「どうだい?冷やし中華に使いたくなったろう?」

デルア「・・・、そうっすね・・・。」

渚「何だい、反応が良くないね。」


 多々ある食材の品質を定期的に確認する為に自らの舌でちょこちょこ試食をしていたデルア、拘りで馴染みのある卸業者を通して市場から最高品質の野菜を仕入れる様にしてはいたがこんなに甘みの強いトマトに出会ったのは生まれて初めてだった。是非店に持ち帰ってイャンダやピューアに食べさせてやりたい、正直言ってこれからはこの野菜を使った料理を提供したいという気持ちが沸き上がっていたがこれだとこの場に来た本来の目的からかけ離れてしまっている。やはりバルファイ王国軍にいた時からの望みを叶えたい、どんな形でも良いから兄とお店をやりたい。


デルア「あの・・・、勿論兄貴もこの野菜を使っているんですよね?」

渚「そうだよ、その為にこの場所に店を設けたんだからね。」


 トマト片手に先程から1人考え事をするデルアにそっと近づく光、ただどうやって声をかけるべきかが分からなかったので一先ず母に声をかける事に。


光「お母さん、そう言えば今日は屋台を出さなくても良いの?」

渚「出さない、と言うか出せないんだよね・・・。」

光「その言葉聞き覚えがあるんだけど、あっ!!まさか!!」


 頬をかきながらそっぽを向く渚、それを見て何となく嫌な予感がした光。娘が何を考えているのかが分かってしまった母はわざとらしく下手くそな口笛を吹いていた。


光「お母さん、またなの?」

渚「しょうがないじゃないか、重い荷物を運びながらの坂道発進は難しいんだよ。特にダンラルタ王国は坂道の宝庫じゃないか、クラッチがよく壊れるんだよ。」

光「だから前からシューゴさんと言ってんじゃん、いい加減ATに買い替えろって。」

渚「嫌だね、私は元走り屋だからMTにしか乗るつもりは無いよ。」

光「「元」は余計でしょ、この前だってダンラルタ王国の山で走ってた癖に。デカルトさんが送って来た動画見て恥ずかしくなったんだから、デル君も見てくれる?」


 懐からスマホを取り出して義弟に動画を見せる光、どうやら鳥獣人族の者が撮影した物の様で動画は想像以上に臨場感に溢れていた。


渚「まさか車の真横で撮っていたのが王国軍の人とは思わなくてね、つい調子に乗って走っちゃったのさ。屋台の営業が終わった後ので誰もいなさそうだったから良いかと思ってね、「壁に耳あり障子に目あり」って言葉を改めて実感させられたよ。」

光「もう・・・、デカルトさんは笑顔だったから良いけど本来だったら迷惑行為だったのかも知れないんだよ?」


 ダンラルタ王国における自動車普及率は未だに3国で1番低い、それもあるからなのか興味を持った住民達が物珍しそうに眺めていて良いエンターテイメントになっていた様だ。「終わり良ければ総て良し」と言うか何と言うか・・・、ハハハ・・・。


挿絵(By みてみん)


渚「あんなにコーナーを攻めたくなっちゃう山があったら走りたくなるもんだろ、あんたには分からないのかい?」

光「あのね、確かに私も趣味として峠を攻める時はあるよ?でもよく考えて、同じ赤い車でも私のカフェラッテと違ってお母さんのエボⅢは目立つの。お母さんだってもう孫もいるんだし若く無いの、少し控えめにして貰わなくちゃ。」


 そんな中、光の家の玄関の方向からとても大きな足音が聞こえた。どうやら今日は授業が正午までだったガルナスがメラと遊ぶ時間を確保するためにバス停留所から全速力で帰って来た様だ、これもこの家では日常茶飯事らしく・・・。


光「ガルナス、またあんたは・・・!!土埃が上がるから玄関前は走るなって何回言えば分かるのよ、それに陸上部はどうなってんの?」


 光は可能な限り大きな声で話しかけたがメラと遊ぶ事で頭が一杯だったので相も変わらず娘には聞こえていない無かったみたいだ、いやぁ青春してるねぇ~・・・。


光「そんな呑気な話じゃ無いのよ、まぁ成績は下がって無いから良いんだけど。」


 えっと・・・、何か問題でも?あっ、もしかして「あれ」ですか?


ほら皆さん、「あれ」ですよ。

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