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好美の商売のやり方が怖いよ・・・
-275 家庭菜園、いや節約への拘り-
今に始まった事では無いのだが商売の場においても「鬼の好美」が絶好調となっている事を改めて実感していたイャンダは、もしもオーナーがこれから先もずっとこの調子だったらデルアはどうなってしまうのだろうかと心配してしまっていた。しかしデルアだってちゃんとした大人、そういった事はしっかりとわきまえて(と言うより覚悟して)いると信じていたい。そんな中、自分が子供の様に心配されているとはこれっぽっちも思っていないデルアは義姉の家庭菜園に入った瞬間から驚きの連続だった。
デルア「さっき義姉さんはただの家庭菜園だって言ってましたけど滅茶苦茶広いじゃないですか、これはもう農家が世話をしている本格的な畑ですよ。これだけ広いと水やりとそれに伴う水道代が物凄いんじゃないですか?」
いちから全て自分で考えて作って行った際にどんどん広くなってしまった光の家庭菜園の広さは近所でも評判だった、近所の子供達が公園代わりに走り回れる位だからデルアがこう聞きたくなっても仕方が無い。
光「それが全くもって大丈夫なのよ、水はすぐ傍の川から引いているし各々の菜園に穴を開けたパイプを巡らせているから川の流れの勢いで水やりが出来るの。別に私は何もしなくても水やりが終わっちゃう訳、どう?」
デルア「「どう?」って言われましてもね・・・、パイプなどの設備を備えるだけでも大変そうなんですけど。工賃はいくらだったんです?」
光「自分でやったから無料に決まってんじゃない、パイプも近くの建設業者や水道の修理業者から要らない物をもらったから一銭もかかってないよ。」
光は簡単そうに言っているがそこまでしてでも家庭菜園をしたかったのだろうか、正直パン屋の仕事を辞めて本格的に農家として生活すべきなのではと思ってしまう。
デルア「凄すぎますよ、こんなのなかなか貰えないでしょ。」
実際はデルアの言う通りだった、光はパイプ等の廃材を貰うため建設業者や水道の修理業者へと向かった際にそこの社長や営業の担当者お得意のプロレス技をかけて脅していた様だ。今更ながらだが、どうか死者が出ていません様にと祈っておこう。
光「人聞きの悪い事を言わないでよ、お金が無いって言ったら皆素直にくれたんだから。」
いや、きっと社長達はフォール寸前となり意識が朦朧としていた状態で返事させたと思われる。まぁ、これ以上は触れない方が身のためかと思ってしまうのは俺だけだろうか。とはいえ自給自足の為の家庭菜園への費用までも節約してしまうとは、まだこの家庭菜園には光の節約テクが隠れていそうだ。
デルア「そう言えば発電機もご自分で作られたと渚さんにお聞きしましたが。」
光「そうなの、川から水を引く水路にプロペラとモーターを設置して水力発電としているの。それとあれを見てくれる?」
光が指差した自宅の屋根の上にも大きなプロペラが設置されていた。
デルア「あれってもしかして風力発電ですか?」
光「そう、この辺りはよく風が吹くからね。利用しなきゃ損じゃない?」
デルアは口を大きく開けて驚愕していたが光が設置した発電機はこれだけでは無い。
光「ねぇ、あのプロペラの真下も見てくれる?」
デルア「あれは・・・、ソーラー発電ですか?」
光「うん、うちの家とナルの店の屋根全体にソーラーパネルを設置して眩しく輝く太陽の光も利用しようと思ってね。」
義姉の節約に対する気合の入れようの凄さにまだ開いた口が塞がらないデルア、とてもでは無いが真似できそうにない。
光「家の電気も基本的にこの発電機での物を使っているから電気代は殆ど掛からないって訳、雨の日以外はほぼタダって考えてくれても良いかもね。」
デルア「凄すぎますね、この環境で育ったこのトマトも美味そうです。」
光と共に真っ赤に育ったトマトを収穫しながらまじまじと眺めるデルア。
光「良かったら食べてみて、農薬を使って無いから川の水で洗うだけで食べれるよ。」
言われた通りに川に流れる綺麗で冷たい水でトマトを洗って1口齧ったデルア。
デルア「嘘でしょ?!甘くて美味いです!!」
冷えた瑞々しいトマト、好きなんだよな・・・




