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デルアは特別扱いなのだろうか。
-266 躊躇の理由となった失敗-
竜将軍へと昇格した証として(?)支給されたコックコートを着た友人の姿を改めて見たイャンダは少し違和感を感じていた、確かに自分と同じ立場になったのは分かるのだがどうしてなのだろうか。
イャンダ(当時)「それよりデル、その制服は誰に渡されたんだ?」
デルア(当時)「ん?これか?これは人事異動を見た後にここで飯食ってたらここで働いているって言うおばちゃんに貰ったんだけど。」
イャンダ(当時)「だったらそれなんだろうな・・・、でもどうしてお前のだけ黒なんだ?」
デルア(当時)「あれじゃねぇの?新任の所に「黒竜将軍」って書いていたからじゃ無いの?それよりさ・・・、結構深刻な相談があるんだけど。」
魔学校の経済学部で共に学んでいた時はデルアの方が成績優秀だったのでどちらかと言うとイャンダがデルアに相談する事が多かったのだが、今回は逆の様なのでどうかしたのだろうか。
イャンダ(当時)「珍しいな・・・、デルが俺に相談する様な事があるのか?」
デルア(当時)「いや・・・、学生時代の事を思い出してくれたら分かると思うんだけど俺は料理が全くダメなんだよ。」
イャンダ(当時)「確かにな、あの頃は割引の惣菜か俺が作った物ばかり食ってたもんな。」
学生時代の2人は学費や生活費の足しにする為にアルバイトをしていたのだが、実は家賃を少しでも浮かす為に共同生活をしていたのだ。その時、大抵の食事は料理上手なイャンダが担当していた。ただ掃除や洗濯等、他の家事はからっきしだった為にデルアが行っていたらしい。
デルア(当時)「恥ずかしながら、この前も卵かけご飯を失敗しちゃってね。」
イャンダ(当時)「卵かけご飯って・・・、卵割って混ぜるだけだろ?まさか卵を割るのが苦手なのか?」
きっと誰でもこうやって聞くであろう発言に開いた口が塞がらないイャンダ、ここは敢えて醤油とソースを間違えてしまったと言う方に1票入れてみようか。
デルア(当時)「いや、卵はちゃんと割れるんだよ。ただご飯を炊くのを忘れてさ、卵をお椀に割り入れて溶いたまでは良かったんだけど炊飯器の予約を入れるのを忘れてね。」
イャンダ(当時)「そっちか・・・、俺もよくやっちゃうんだよ。でも勿体ない事をしちゃったな。」
デルア(当時)「本当だよ、折角1個1500円もする卵を貰ったのにさ。」
イャンダ(当時)「1個1500円って・・・、まさかあのバラライ牧場で朝早くに採れたっていう噂の卵の事か?」
鳥獣人族達が経営するバラライ牧場で牛の放牧が中心なのは有名だが、実は裏庭で数羽の鶏を飼っていて可能な限りストレスの無い環境で育てている為に採れた卵も濃厚で有名らしい。ただ余りにも数が限られているので1個1500円という高値で取引されている様だ。
イャンダ(当時)「でもどうしてあんな高級品を?」
デルア(当時)「実はうちの近所に住んでるおばちゃんが道端で倒れていたから病院に運んだんだよ、そのお礼にって。俺は「大した事はしていないから別に要らない」って言ったんだけど「命を救ってくれた恩人だから」って聞いて貰えなくてさ、それに個人的に食べてみたかったから素直に貰う事にしたんだよ。「卵の味を一番楽しむ方法と言えば卵かけご飯だよな」って食べようとしたら失敗しちゃったって訳。」
イャンダ(当時)「確かに俺もよくやっちゃう事だけど、それは失敗のうちに入らないんじゃないのか?卵なら工夫次第で何にでも出来るだろ?」
デルア(当時)「いや・・・、これ以上に酷い失敗をやらかしちゃった事もあったんだよ・・・。」
ため息をついて頭を抱えながら自分がやらかした失敗を思い出そうとする黒竜将軍、ただそこまでしてしまう様な失敗ってどの様な事なのだろうか。
イャンダ(当時)「どうしたってんだよ、そんなに酷い事なのか?」
デルア(当時)「いや・・・、実はさ・・・。」
口にしづらい失敗だったのだろうか、それなら無理に話す必要も無いと思う竜将軍。
イャンダ(当時)「そんなに引っ張る程酷い失敗なのか?もしそうなら相当だぞ。」
デルア(当時)「そうなのかな、実はこの前俺が異動になって最後になるかも知れないから同僚と呑みに行ったんだよ。」
酒での失敗なら誰でもあるはずだ、でも今は関係無い様な・・・。
デルア(当時)「その後家でカップ麺食おうとした時にお湯の量間違えちゃったんだよ。」
料理じゃねぇよ!!




