表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

261/666

264

デルアにはこの機会に打ち明けるべきか悩んでいた事があった。


-264 兄弟の幼少時代と相棒との出逢い-


 疲れが溜まっていた好美が最上階の自宅へと戻り、お手洗いに向かうと告げた店長が席を外した後に副店長は煙草を燻らせながらある事を思い出していた。


挿絵(By みてみん)


 実はデルアにはバルファイ王国軍にいた頃から夢があった、いつか生き別れた兄・ナルリスと共に料理店を出そうという夢。

 突然だが話はダルラン兄弟の幼少時代に遡る、これは「吸血鬼ヴァンパイア族には厳重に注意しろ、出逢ったとしても決して目を合わすな。目を合わすと体中の血を吸われて殺されるぞ。」という噂話が廃れ始めたが未だ山奥に追いやられひっそりと暮らしていた頃の事、因みにこの頃には既に吸血鬼達が血を決して吸う事は無くなっており、デルアに至っては血を見るだけでも吐き気を催してしまう位だった(本人曰く、今はマシになった様だが)。2人の息子達の養育費を少しでも稼ぐために山の麓にある家電量販店や居酒屋で朝早くから夜遅くまで働いていた母の代わりに弟思いのナルリスが炊事洗濯を進んで行っていた事があり(きっとその頃に兄は料理に目覚めたのだと思われる)、日曜日だったその日も母は居酒屋での仕事で遅くなっていた。ナルリスが洗濯物を取り込んでいた時、唐突にデルアの腹の虫が鳴った。


デルア(幼少)「兄ちゃん・・・、腹減った・・・。」


 どれだけ小さくてもデルアの声を決して聞き逃さなかったナルリスは洗濯物の最後の1枚を籠へと入れながら返事をした、少し困った様な表情をしていたのが否めない。


ナルリス(幼少)「おいおいデルア、さっきからそればっかじゃないか。家には俺達2人しかいないんだから偶には手伝ってくれても良いと思うんだけどな。」


 表面上は兄としてしっかりしなければという使命感があったからこうは言っていたものの心の中では決して怒っていた訳では無かった兄、寧ろ頼りにされている事がとても嬉しかったりもした。


ナルリス(幼少)「まぁ良いか、それで何が食べたい?」

デルア(幼少)「ハンバーグオムライス!!」

ナルリス(幼少)「お前はそればっかりだな、まだ昼前なんだから軽い物にしないか?」


 弟が気に入って仕方が無かったこのメニューをいつでも楽しめる様にと必ずと言って良い程に母親が冷蔵庫内へと材料を常備していた、その費用は決して安かった訳では無かったが子供達が寂しい想いをしなくても良い様にという母親の愛情の籠った一品でもあった。


デルア(幼少)「えへへ、だって美味しいんだもん。」

ナルリス(幼少)「まぁ素直にそう捉えておくよ、ありがとうな。」


 なかなか素直になれないナルリスは照れくさそうに顔を赤くしつつも内心はとても嬉しかった様だ、当時から家庭的な洋食メニューを中心とした料理にハマっていたナルリスはなけなしの小遣いで買って来たレシピ本を見ながらの調理をしながら裏で味のベースとなるフォンドボーやデミグラスソースを自作していたらしい。これはナルリス本人が後で語っていた事なのだが、弟の好物である先程のメニューにも本人自作のデミグラスソースを使用していたとの事。

 それから先程の噂をまだ信じ切っていた数名の者達による母親の殺害があった十数年後、母を殺した奴らへの復讐を誓ったデルアはバルファイ王城の軍隊へと入隊していた(その時既に生き別れていたナルリスは御厨板長の下での修業を始めていた)。ある日、当時この時の地位が「将軍長アーク・ジェネラル」で翌日に人事異動の発表を控えていたデルアは同僚と共に食堂で昼食を摂っていた、各席から様子を伺えていた調理場ではデルアより先に竜将軍ドラグーン兼調理場担当となっていたイャンダが包丁を握っていた。


同僚「デルア、今度竜将軍になるんだって?凄いじゃねぇか、なかなかなれねぇぞ。」

デルア(当時)「待てよ、まだ飽くまで噂だし俺なんかに務まるか分からねぇじゃねぇか。」

同僚「そうか?そうやって自分の事を卑下する事無いと思うぞ、お前みたいに闇魔法に精通する将軍長なんてなかなかいないから相応しい地位だし凄いと思うけどな。ほら、あそこにいるコロニーさんを見てみろよ、軍の訓練の時もそうだが堂々としているぜ。デルアも自信持てって。」

デルア(当時)「あの人は前から料理が好きで上手かったっていう話だったから堂々と、それに楽しそうにしているんだろ。俺は魔学校にいた頃も割引された弁当を買ってばっかりだったから料理なんて全くだぞ、そんな俺に出来る訳・・・。ただでさえ竜将軍って大変だろうなって思っていたんだぞ、俺はあの人と違って軍隊で働くのがやっとだよ。」


 少し弱気になっていたデルアが厨房の方を振り向くと中華鍋で炒飯を作っていたイャンダが本人に向かって少し微笑んだ気がした、これは何かの予兆なのだろうか。

 翌日、王城の掲示板へと貼りだされた人事異動を見たデルアは唖然としていた。


デルア(当時)「う・・・、嘘だろ・・・。お、俺が・・・?」


 そう、「デルア・ダルラン (旧任)将軍長➡(新任)厨房兼黒竜将軍」とあったのだ。


こうして2人は相棒となったのだが・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ