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どうなる貝塚財閥!!
-255 父と娘-
海の方からやんわりと吹いた風が土埃を消し去った時も結愛は変わる事無くずっと父親を睨んでいた、長年の間憎んでいたので瞬時にその感情が消え去る事があるとは思えない。守と好美は水を差してはいけないと少し離れた所で様子を見る事にしたが大賢者の義弘にネクロマンサーの結愛が太刀打ち出来るのかが問題だ、その上長年魔法を使用してない無かった「くそ親父」には魔力が有り余っているので対抗できるか不安で仕方ない。
ただ「友」を守りたいという気持ちが強かった好美はその場で立ち上がって父親との喧嘩に決着を付けようとするネクロマンサーに向かって声を荒げた、こんな事は初めてなのでは無いだろうか。
好美「おいコラ、結愛!!いくらお前でも戦闘行為が禁じられているのは知っているだろうが!!あんたを失いたくねぇんだよ、「戦わない」という選択は出来ねぇのかよ!!」
結愛「この期に及んでそんな事考えれねぇよ、折角このくそ親父を消し炭に出来るチャンスなんだぞ!!止めんな馬鹿野郎!!」
好美「馬鹿野郎はどっちだコラ!!長年憎んでいたとしてもな、お前にとってはたった1人の父親だろうがよ!!」
結愛「良いんだよ!!こんな奴とはとっくに縁を切ってんだから気にするかよ!!」
とても女性同士の会話とは思えない口喧嘩に守や魔法班は手も足も出そうにない状況であった、そんな中で結愛達に待ちわびた瞬間が訪れた様だ。
デカルト(念話)「皆さん、聞こえますか・・・?」
結愛(念話)「おっさん・・・、ど・・・、どうして俺は今『念話』が使えてんだ?」
好美(念話)「私も・・・、使えてる・・・。」
守(念話)「俺も・・・。」
いやいや、それより国王の事を「おっさん」と呼んだ結愛の事を放っといて良いのかよ。
デカルト(念話)「一時的にですが『魔術阻害』を解除する様に魔法班に伝えました。結愛ちゃん、好美ちゃん、そして守君。私から貴女方にも許可を出しますのでこの世界を・・・、いや私の大切な友を救ってください。」
あれ、無視ですか・・・。まぁ、空気を読んで今は引っ込んでおこうかな・・・。
結愛(念話)「当たり前だろ、おっさん!!くそ親父をやっつけたらビール奢れよな!!」
またかよ・・・、本当にこの世界はどうなってんだ・・・。
好美(念話)「ずるい!!私も吞みたい!!」
いや、お前さっきまで散々呑んでいただろ・・・。
デカルト(念話)「相も変わらずだな・・・、分かった・・・、王城にあるビールを好きなだけ呑んでくれて良いから頼む・・・。」
結愛(念話)「何?!隠し持ってたのか?!よっしゃー!!俄然やる気が出て来たぜ!!」
実は以前、結愛が視察でデカルトのいる王城へと足を運んだ際は全くもってビールの在庫を見つける事が出来なかったそうだ。きっと見つかれば呑まれてしまうと思ったデカルト直々の指示だったと思われるが今は何も言わない方が身のためだろうか。
そんな中、義弘は落ち着いた表情で呟いた。
義弘「馬鹿娘よ、お前は変わったな。」
結愛「何だよ、俺はずっとこうだろうが。」
義弘「いや、私の知っている結愛は今の様ではなかったよ。綺麗な洋服に身を包んだ可憐な姿で周囲に関係なく真面目に受験勉強に打ち込む、正に「お嬢様」と言える姿だった。なのに今は何だ、ずっと前から思っていたがどうしてスーツ姿な上にそんな口調なのだ。私の知っている結愛は何処に行ってしまったと言うんだ、あの頃のお前は何処に行ってしまったと言うんだ!!」
結愛「あのな、この際ハッキリ言わせて貰うけど俺はずっと我慢してたんだよ!!自分でも吐き気がするあの姿が嫌だったんだよ!!お前に強制されていたお嬢様口調や洋服にウンザリしていたんだ!!これが本来の俺の姿だ、誰にも口出しなんかさせるもんか!!ましてや罪を犯して貝塚財閥や貝塚学園の評判を著しく下げやがったお前に一番言われたくねぇ、長年かけてようやく信頼も回復して来たんだから一切口出しなんかさせるもんか!!分かったら大人しく牢獄に戻りやがれ!!」
義弘「そうか・・・、だったらこの私を牢獄に入れてみろ、この馬鹿娘が!!」
義弘はこう吐き捨てると再び黒球を出現させた、ただ結愛との決着をつける為か先程の物より貼るかに大きい物となっていた。
義弘「縁を切ったならもう構うまい、無理矢理にでもこの世界ごと奪い取るまでだ!!」
世界ごとだって?!




