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仲間が増えた捜査班。
-251 再び相まみえた憎しみあう親子-
改めて早急な事件の解決とそれによる黒龍族の尊厳の回復を誓った捜査班達(なのか?)はどんな事でも良いから少しでも真実に近づける様に手がかりをかき集めたかった、一先ず希は先程ヌラルが語っていた凄惨な過去により流れていた涙を拭いながら捜査に協力すると自ら宣言した混沌龍に気になっていた質問をしてみる事に。
ヌラル「すみません、暗い話なんかしちゃって。」
ただでさえピリついていた牢獄の中にしんみりとした雰囲気を持ち込んでしまった事を反省するヌラル、しかしクァーデン家への長年の怒りや恨みを思い出したティアマットの辛さは現場にいる全員の中でダントツの1番と言えるだろう。
希「お気になさらないで下さい、ただ恐れ入りますが少々質問させて頂いても宜しいでしょうか。」
未だに先程の非礼を引きずっている希は相手が話しやすい様に言葉を選んでいた。
ヌラル「勿論です、どの様な事でしょうか。」
希「助かります、ハイラさん、恐れ入りますがあのカメラをお持ち頂けませんでしょうか?」
ネフェテルサ王国警察署長に依頼された強制収容所長は安全な場所にて保管していた例の監視カメラが入った金庫(確かコイムだったっけか?)を持参してヌラルから見える様に開けた。
希「ありがとうございます。ヌラルさん、ハッキリとお聞きしますがこの監視カメラに魔力を込めたのは貴女ですか?」
ヌラル「いえ、私ではありません。確かこの魔力は私達に義弘の脱獄を手伝えと言って来た男に指示された私の友人の物だったと思います。」
希「因みにそのご友人は?」
ヌラル「私の母や同じ村で住んでいた黒龍族の者達と共に義弘の下で囚われています、私は犯人達の隙を見てかろうじて逃げて来ましたが嫌そうにしていた友人の表情を覚えていますので間違いありません。」
希「うーん・・・、という事はカメラに魔力が込められる場面を目の当たりにしたという事ですね?」
ヌラル「勿論です、目の前で行われていましたから。」
再び『虚偽判定』を行っていた結愛により嘘ではない事が証明されたヌラルの返答を聞いて顎に手をやりながら考え始めた、何があったと言うのだろうか。
ヌラル「どうされました?」
希「いや・・・、分からないんですよ。どうやってこの難攻不落な強制収容所に侵入して「このカメラ」に魔力を込めたと言うんでしょうか。」
するとハイラから重要なヒントと言える質問が。
ハイラ「ヌラルさん、もしかしてなんですけどこことは別の場所からカメラに魔力を込めたのではないですか?」
希「別の場所と・・・、仰いますと?」
ハイラ「ここの施設の監視カメラは事務所にある大型モニターを中心に独自ネットワークで全てが繋がっているんですよ、施設内のカメラは勿論、そして城門横の係員室の物もね。」
希「そうなんですか?それで・・・、いかがでしょうか?こちらとは別の場所で?」
希が優しく質問するとヌラルは首を縦に振った。
ヌラル「所長さんが仰ってた通りです、別の者の魔力で係員室にいた方を眠らせた後に友人がこの魔法をそこから流し込んでいました。」
結愛「成程・・・、それにしてもどうして?」
結愛が頭を悩ませていると牢獄の小窓の向こうから聞き覚えのある「あの声」が、それを聞いた瞬間に社長は相手への怒りにより一気に表情を歪ませた。
声「邪魔な『魔術阻害』を強制収容所外に放出しながらお前たちがカメラやそこのバハムートに気を取られている内に次の作戦を遂行させる為に決まっているじゃ無いか、そんな事も分からないのか。相変わらずだな、その調子で社長が務まるのかこの「馬鹿娘」が。」
結愛「くぅっ・・・、俺の事を「馬鹿娘」と呼ぶのはあの「くそ親父」しかいねぇ・・・。」
全員が小窓から城門の方向へと覗き込むとそこには脱獄班である「くそ親父」の貝塚義弘の姿が、前社長はすっかり魔力と以前の姿を取り戻してしまっていた。
義弘「結愛、今日こそ貝塚財閥を、いや私の全財産を返して貰おうか。」
戦争勃発か・・・?
(個人的には)正直勘弁して・・・。




