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黒龍族はが全てを奪われた理由とは・・・。
-250 嘘により奪われた全て-
突然だがこれは数百年も前の事、当時ヌラルを含めた黒龍族は他種族の龍達と何も変わる事も無くダンラルタ王国にある大きな山の一角で平和に暮らしていた。先程のヌラルの様に『人化』をして麓の村や他の2国の住民とも交流を持っていた上に積極的に農業に励んでいたりもしていたので周囲の住民に向けて採れたての野菜を販売したりもしていた、実はヌラルの両親もそうだった。
そんなある日、ヌラルの母親が娘を連れていつも通り山の麓にある村でその日の朝採れたばかりの野菜を販売しに行った時の事。普段なら母親が荷物を降ろした瞬間に村の住民達がこぞってやって来ていたのだが、その日は誰も来ることは無かった。それどころか母親を避ける様に皆家に向かって走り出していたので不思議に思った母親は偶然側を通りかかった夫人に声をかけてみる事にした。
母親「あんた、いつも通り今朝採れたての人参を持って来たよ。あんたこれが入ったスープが好きだって言ってたじゃ無いか、いかがだい?」
夫人「・・・。」
ギラリと睨みを利かせた後周囲の住民と同様に母親を避ける様に去って行ってしまった夫人、つい泣き出してしまいそうになっていた母親に向かって大きな空き瓶が投げられた。ギリギリ寸前で避ける事が出来た母親が空き瓶の来た方向へと振り向くとそこにはその村の村長が、再び空き瓶を投げつけようとした村長は母親に向かって罵声を浴びせた。
村長「出て行け、この毒の塊め!!その野菜も闇魔術で育てた野菜も毒で満たされているんだろう、食ったら死ぬんだ!!命が惜しいから出て行け!!」
黒龍族が闇魔術に精通していることは確かな事実だが母親は農業に励んでいた時には魔法など一切使っていなかった、それどころか無農薬に拘って肥料や土も自然界にある物を使用して村の住民の健康を気遣った野菜作りを行っていたという。
母親「そんな事無いよ!!それとも今まで私が作った野菜を食べて死んだ人がいたって言うのかい?!」
村長「フン!!お前の言葉なんか聞きたくないわ!!そこにある穢れたゴミを早く持って出て行け!!この見た目からして穢れた一族め!!穢れた血め!!」
余りにも酷い言葉を浴びせられた母親は娘を抱え逃げる様に当時黒龍族が住んでいた村へと走って戻った、ただ母親が戻った時にはもう・・・。
母親「村が・・・、無い・・・。」
そう、村が何らかの原因で全て焼け野原へと変貌してしまっていたのだ。親子は急いで駆けて行ったが勿論の様にヌラル達が住んでいた家も焼けて無くなってしまっていた。
ヌラル(当時)「父ちゃん!!父ちゃん!!」
娘は他の住民と共に村や畑を守るために残っていた父親を必死に探した、しかし何よりも家族や仲間を大切にしていたヌラルが涙ながらに見つけ出した頃には既に父親は息絶えていた。
ヌラル(当時)「父ちゃん、父ちゃーん!!」
すると泣き叫ぶヌラルの遠くで貴族と思われる男たちが声高らかに笑っていた。
貴族「ハハハハハ!!この闇魔術で穢れたクソ一族め!!今日からここは我がクァーデン家の土地だ!!分かったらお前らはこの国・・・、いやこの世界から出て行け!!」
勿論この土地は古の頃から黒龍族達の物だった、後から聞いた話だが当時から傍若無人で自己中心的なクァーデン家が広大なゴルフ場を建設する用の土地を得るのに邪魔だったという黒龍族の村を焼き消す為に麓の村の村長に賄賂を手渡してあらぬ噂を流していた様だ。運悪くその噂が3国全てに広まってしまい、現在に至るらしい。まさかクァーデン家の性格の悪さが先祖から代々受け継がれていた物とは、その上「噂が回るのは早い」と言うがその事を何よりも実感する事になるとは正直言って俺は想像も出来なかった。今言えるとしたら、これがただの脱獄事件では無くなって来たという事だ。
ヌラル「兎に角悔しかった・・・、あの遊び人共に俺達は全てを奪われたんだ!!その上まだ小さかった俺にとって父ちゃんは・・・、父ちゃんは・・・!!」
辛い過去を語ったヌラルは震えながらその場で泣いていた、それを見た希は目の前の女性への非礼を詫びる為に、そして黒龍族の名誉回復の為に全力を尽くすと誓った。
希「それはさぞお辛かったでしょう、私共で良ければ協力をさせて下さい。」
ヌラル「署長さん・・・、こんな俺で良かったらこの事件の解決に尽力させて下さい。」
事件解決と名誉回復の為、転生者達が動き出す!!




