243
本格的に警察が動き出したが・・・。
-243 国王の心の広さ-
守にはネルパオン強制収容所に来てから不可解な事があった、管轄外であるバルファイ王国警察のリンガルス警部や先程やって来たネフェテルサ王国警察者達が動いているというのに管轄となっているダンラルタ王国警察の者が全くもって見当たらない。警部であるレイブンのプニが少しチャラい性格である事は光明から聞いていたので知っていたのだが、国民を守る警察として仕事はしっかりとこなす者達だと聞いているのでサボっているとは思いたくはない。
そんな転生者達の思いを表情から汲んだのか、横から優しい男性の声がしてきた。何処か聞き覚えのある優しくて、腰の低い人物の声・・・。
男性「あの・・・、どうかされましたか?」
守「い・・・、いや・・・。少し考え事をしていただけなんです、お気遣いありがとうございます。」
男性「あの・・・、私で宜しければお伺い致しますが。」
ずっと俯いて考え込んでいた為に男性の顔を全くもって見ていなかった守、本人からすれば少しだけだが気持ちが晴れたからそれなりに感謝していたので男性の気持ちだけ一先ず受け取っておこうとしていたのだが・・・。
守「いや、大丈夫です。お気持ちだけ頂いておきます、お気遣いありがとうございます。」
ただ男性の顔を見て驚いていたのはすぐ傍にいた光明もだったのだが、少し離れた場所にいたはずの好美だったので・・・。
好美「守!!何馬鹿な事を言ってんのよ!!」
守「えっ・・・?」
急いで近づいて来た好美に無理矢理頭を上げさせられた守は先程から声をかけて来てくれていた男性の姿を見て驚きを隠せなかった、それどころか倒れそうになっていた。
守「お・・・、王様・・・!!」
そう、目の前にいたのはダンラルタ王国の国王であるコッカトリスのデカルトだった。デカルトの気遣いを断るという事は王命に背く事と一緒である(様な気がした守)。
デカルト「ハハハ・・・、そんなに驚く事は無いじゃないですか。それで、どうされました?」
好美を通じて仲良くなっていた守のは言わば仲間も同然、国王はどの様な疑問にも答えるつもりであった。
守「では恐れながら申し上げます・・・。」
デカルト「守君、そんなに硬くならないでくださいよ。私も含めて3国の王は堅苦しいのが苦手ですので。」
結愛「そうだぞ、物凄く緩い方々だから気を遣う事なんて無いんだぞ。」
希「結愛ちゃん、それは流石にまずいよ。俺だって出来ない発言だって。」
自分で言うならまだしも、他人に言われるとムカッとする事が多いという人はよくいるはずだが国王の心はかなり広い様だ、と言うか何で少し着崩してんだよ。
デカルト「のっち・・・、俺が構わないと言っているんだ。気にする事は無いよ。」
希「おいおい、頼むから仕事の場で「のっち」はやめてくれと何回言えば分かるんだ。」
デカルト「お前こそ「王」である私に命令するの、林田署長さん?」
希「くぅっ・・・。」
この期に及んで何故自分が「王」である事を改めて確認させるように強調したのか分からないが今はそれ所では無い(多分ただのおふざけ)。
デカルト「それで?どうされたのかお伺いしても宜しいですか?」
守「あの・・・、どうしてダンラルタ王国警察の方々が来ていないのかが分からなくて。」
デカルト「それはそうですよね、全くもって管轄の者達がいないからそう感じてもおかしくは無いです。実は王国軍の者達と協力して義弘を捜し回っているんですよ、3国中ね。」
それもそうだ、国内外関係なく管轄内で起こった重大事件の2次被害を防ぐ為に動くのは当然の事だ。しかし・・・、どうして国王自らこちらに?
デカルト「魔法班を連れて来たんですよ、少しでも友人達に協力したいのでね。」
希「こりゃあ頑張らないと駄目だな、国王が自ら動く位の重大事件だからな。」
デカルト「のっち・・・、これが終わったら酒奢れよ?国王命令だぞ。」
希「お・・・、お前・・・、いくら何でも卑怯だろ!!」
その前に署長さん、国王に「お前」ってまずくね?




