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じゃあ誰が・・・、何のために義弘を?
-240 尋常じゃない拘り-
再び結愛は頭を悩ませていた、義弘の脱獄事件が報道されてからずっと濃厚としていた「重岡共謀説」が一気に崩れ去ったのだ。しかしその場で立ちすくんでいるままという訳にはいかない、一先ず深呼吸をして落ち着きを取り戻した理事長は好美に貰った炭酸水を一気に飲み干した研究生に質問してみる事に(と言うか本当に炭酸水飲んでいたのかよ)。
結愛「ガーガイ、ちょっと良いか?」
ガーガイ「勿論、自分なんかで宜しければ。」
結愛「お前な、さっきの事は許してやるから自分の事をあまり卑下するんじゃねぇよ。本当の事を言っちまえば部屋の中が熱かったから丁度良かったんだ、ありがとうよ。」
やはり先程言い過ぎた事を気にしていたからか、大人らしく魚龍が話しやすくなるために最大限気遣った様だ。
ガーガイ「恐れ入ります、それでどうされました?」
結愛「いや・・・、確かさっき掃除のおっさんに声をかけられたって言ってたけど。」
ガーガイ「そうです、全身黒の制服姿でした。」
結愛「黒ね・・・、黒・・・、黒・・・。助かるよ、やはり怪しいと思っていたんだ。」
おいおい、前話では「確かに」って言ってたじゃねぇか。
ガーガイ「それにしても「黒」がどうしたんです?何かを思い出そうとしていたみたいですけど。」
結愛「いや、ふと思い出した事があるんだが貝塚学園と貝塚財閥にある各部署や支社とかに制服が黒の所なんてあったかな・・・、と思ってな。」
全部覚えているのかよ、流石社長だな(と言うかそれが本当だったらこの女怖ぁ)。
丁度その頃、『探知』と『察知』を駆使して事務局長が煙草の火を消した事を確認した光明はガーガイが被害を受けたという時間帯について問い合わせてみる事に。
光明「そろそろ気が済んだか?」
事務局長(電話)「大丈夫です、申し訳ありません。」
光明「まぁ、良いよ。今度は指定の喫煙所で吸うようにな、他の職員が嫌がる場合があるからな。」
事務局長(電話)「はい、分かりました。それで、事件についてと仰っていましたがどうされたんです?」
まるで「自分に聞くような事があるのかよ」といった様子、しかし光明にとって今頼りに出来るのは事務局長しかいない。
光明「清掃班の日勤についてなんだ、何か変わった事は無かったか?」
事務局長(電話)「変わった事ですか・・・、そう言えば最近雇った新人が2週間前から無断で欠勤しているんですよ。」
丁度ガーガイが連れ去られた時期と一致する、どう考えても怪しい。
光明「そいつについて今話せる事を全て教えてくれないか?どんな事でも構わない。」
事務局長(電話)「えっとですね・・・、そうだ!!初出勤で制服を渡そうとした時です、一目見て「これの黒は無いのか」と強めに聞いて来たんです。」
光明「「黒」?確か清掃班の制服は淡い水色だよな、それでどうしたんだよ。」
事務局長(電話)「一応理由を聞いてみたんです、その時は「ただ好きなだけ」と答えて来ましたが何か裏がありそうで仕方が無かったんですよね。」
光明「でも無い物は無いんだからそのままの制服を渡したんだろ?」
事務局長(電話)「はい、ただ次の出勤日に本人の姿を見て驚きました。勝手に渡した制服を黒に染め上げていたんです、「貸付だからやめて欲しい」と申し上げたのですが「購入するからこのまま着させてくれ」の一点張りでして・・・。」
光明「だからか、それ位の時期にヒドゥラからその様な相談があったのは。」
事務局長(電話)「私も抵抗したんですが「どうしても」というのでご相談させて頂いたんです、あの時は無理を言って申し訳ありません。」
黒の衣服にそこまでの拘りを持たせる理由、どう考えても好みだけとは思えないのだが。
光明「大丈夫だ、事務局長が悪い訳じゃ無いから気にしないでくれ。ただ、2週間前からずっと来ていないという方が怪しいよな。本人との連絡はどうなっているの?」
事務局長(電話)「何度電話を試みてはいるんですがずっと電源を切っているみたいでして。」
光明「そうか、ありがとう。また協力をお願いするかも知れないからその時は宜しく。」
その頃牢獄で結愛からの新たな質問を聞いたガーガイは再び首を横に振った。
結愛「そうか・・・、じゃあどうしてお前はティアマットになっていたんだ?」
そうだよ、そこが気になっていたんだよ




