232
攻撃されるか?!
-232 どうしてこんな事に・・・-
禍々しい魔力を全身から放ちながら小窓の向こうの海上で浮かんでいたこの世界では存在すら確認されていなかったそのティアマットは建物の中にいた結愛や古龍達に気付いたのか、大きな口をゆっくりと開いた。
結愛「まずいぞ、皆伏せろ!!」
しかし、ティアマットの口からは何も放たれなかった。それどころかよく見ればその混沌龍は泣いている様に見えたのは気のせいだろうか、そこにいた全員は固唾を飲んで窓の外を見ていた。すると、ティアマットからまさかの言葉が・・・。
ティアマット(龍語)「・・・、ケテ・・・。タス・・・、ケテ・・・。」
クォーツ「皆聞こえたか?あいつもしかして「助けて」って言ったか?」
エリュー「この世界の言葉(龍語)も一応話せるんだな、それは何となく助かるが。」
転生者達はビクターにより与えられた『自動翻訳』で全てが日本語に翻訳されていたので自分達と同じ言語に聞こえていたから今発覚した事らしいのだが、どうやら龍族特有の言葉が存在していたらしい。そしてティアマットは別の世界のみでの存在とされていたのでこの世界の言葉を話した瞬間驚きを隠せなかったが少し親近感が湧いて来ていた為に何となく助けたくなった様だ、その上・・・。
クォーツ「あの声・・・、やっぱり・・・。」
エリュー「確かにガーガイに聞こえるが本当なのか分からないだろう。」
すると大企業の社長が横から口を挟んだ。
結愛「神様、どうやら嘘は言っていないみたいです。」
クォーツ「結愛、どうして分かるんだよ。」
どうやら取引先の企業の信用度を自分自身が分かる様にしたい為に『虚偽判定』の能力を『作成』した様だ、まさかこの様な場面で役に立つとは。
結愛「あの・・・、恐れ入りますが宜しければティアマットに話しかけてみて頂けませんでしょうか?」
エリュー「ああ、分かった。おい、俺の声が分かるか?」
少し苦しそうにしながらもしっかりと返答しようとする様子のティアマット、この展開はまさか・・・。
ティアマット「その・・・、声は・・・、、エリュー・・・、姉ちゃん・・・、か?」
エリュー「そうだ、お前まさか昔一緒に遊んだガーガイか?!」
ガーガイ(?)「そうだよ・・・、姉・・・、ちゃん・・・。」
もう少し信用度を上げる為にクォーツも話しかけてみる事に。
クォーツ「おい、俺の事も覚えているか?」
ガーガイ(?)「ああ・・・、クォーツ・・・、姉ちゃん・・・、だよな・・・。昔・・・、缶蹴り・・・、したよな・・・。」
クォーツ「結愛、どうだ?」
結愛「はい、こちらも本当の事の様です。」
余りにも変わりきってしまった友の姿に未だ驚きつつもあくまで冷静さを保ちガーガイと思われるそのティアマットに質問をしてみる事に。
クォーツ「お前・・・、どうしてその様な姿に・・・。」
ガーガイ「罠に・・・、かけ・・・、られた・・・。騙された・・・、んだ・・・。」
エリュー「騙されただって?!何て言われたんだ?!」
ガーガイ「元・・・、株主・・・、だという・・・、男に・・・、「貝塚財閥に・・・、入りたいなら・・・、俺に・・・、ついて・・・、来い」と・・・。「有利に・・・、なる様に・・・、してやる・・・」って・・・。」
結愛「くっ・・・、やはり義弘派閥の仕業か・・・!!今思えばあんた、貝塚学園大学大学院の研究生のガーガイ・ヴァントだな!!最近真面目なはずのあんたの出席率が悪いから心配して担当教授が相談して来ていたんだ、そういう事だったのか!!」
結愛による自分の名前を呼ぶ声に安心したのか、再び涙を流すガーガイ。
ガーガイ「理事長・・・、先生・・・。学内で・・・、移動してた時に・・・。」
結愛「待て、無理をするな!!好美!!アイツに『状態異常無効』を『付与』してくれ、責任は俺が持つから頼む!!」
好美「分かった・・・、ちょっと待って!!」
まさかティアマットも被害者だったとは・・・。




