217
お願いしますから、「くれぐれも」ですよ
-217 捜査を始めたいんだけど-
好美により『付与』された『状態異常無効』とハイラによる懸命な治療により光明の傷はみるみるうちに癒えていった、その場にいた全員が所長の魔力の強大さを知っていたが故に皆「あんたが原因だろうが」とツッコミを入れようとはしなかったという(と言うか俺も出来る気がしない)。
そんな中で完治した(と言って良いのか分からない)光明を含めた転生者達は早速事件解決に向けて捜査を開始する事にした、どうやら「最悪の高校時代」等で得た経験から作戦の実行はリンガルス警部が驚く程に早かったらしい。一先ず結愛と守、そして光明はハイラの案内で義弘が捕まっていたという牢獄へと向かった。貝塚財閥前社長のいた牢獄は強制収容所内に蜘蛛の巣の様に巡らされた廊下の一番奥にある海沿いの部屋だった、ただそこには外から鍵をかけておける出入口のドアと日光を取り入れる用の窓があったのだがそれには格子も付けられていた上に景色が全く見えない程に小さかったのでとてもでは無いが人が通れる様なスペースがあったとは言えなかった。隅っこに水洗式の便所があった部屋で真ん中へと向けて伸びていた鎖の先には足枷が付いていて当時の義弘の様子が手に取る様に伺えた。
リンガルス警部に依頼されたハイラやムクル、そしてヂラーク達所員により義弘が脱獄した当時のままを維持されたその部屋で唯一変わった事と言うとレイト等の貝塚警備の者達による新しいカメラが設置されていた位かと思われた。
結愛「所長さん、あれが当社による監視カメラですか?」
改めて確認をした結愛、もしかしたら別の警備会社も同型のカメラを使用していた可能性があったからだ。貝塚警備の使用している監視カメラは貝塚財閥が独自に開発した物だったが見た目は他社の物とは変わらなかったので絶対と言っても良い位に確認を怠らない様にしていた、義弘により失われた信用を少しでも取り戻す為に必死だったからだ。
ハイラ「はい勿論、私達のいる目の前で作業を行って頂いたので確認済みです。」
結愛「くそ・・・、いや父が脱獄した時もカメラ位置と角度はこうだったんですか?」
結愛本人は気が付いていなかったと思われるが少しだけ素が出始めていたので守と好美、そしてリンガルスは物凄く焦っていた。3人の様子から隣にいた光明は先程の巨大な球体がハイラの魔法によるものだという事を知って同様に焦り始めた、先程の事件の再来は正直言って勘弁して欲しい。
ハイラ「結愛さん、今「くそ」って言いました?」
今は何よりも捜査を優先させたいがハイラがこのまま泣き出してしまうと捜査が難しくなってしまうので所長を宥める事に必死になっていた結愛、どうするつもりなのだろうか。
結愛「ハ・・・、ハイラさん・・・。冗談ですよ、ソフトキャンディー買ってあげますから許して下さいって。」
副所長と同じ手を使おうとする結愛、しかし先程の様にいかない事は目に見えていた。
ハイラ「そんなにソフトキャンディーばっかりいらないです。」
もう既に2個以上手に入る手筈になっているので、所長は正直他のお菓子が欲しかったのだがソフトキャンディー以外の好みを知らなかった結愛は貝塚財閥の社長として出来る限りの手を尽くす為にある思いつきをした。
結愛「分かりました、このソフトキャンディーを製造する工場に友人がいますので見学させて貰える様に聞いてみますよ。」
嘘だ、たとえ結愛と言えどもお菓子の製造工場に友人がいるとは限らない上にこれは後で分かる事なのだが子供達に人気のこのソフトキャンディーの製法は門外不出となっていたので見学させて貰えるかどうかは不明だ。
ハイラ「約束です、嘘ついたら即座にお家を爆発させます。」
結愛は先程城門で起きた爆発事件を思い出してぞっとした、結愛の家(つまりバルファイ王国にある貝塚財閥本社)が爆発すると国を巻き込む大騒動だと言っても過言では無い。
結愛「わ・・・、分かりましたって!!事件が解決したら製造工場に問い合わせてみますから許して下さいって!!」
社長の言葉により所長の怒りは静まった、一先ず本格的な捜査を始めて行きたいが終わった後の事を想像したく無い事は変わらない。
結愛「取り敢えず1つ教えて頂けますかね、あのカメラの位置等は当時と同じですか?」
ハイラ「はい、寸分違わず以前と同じにして頂いています。何なら証拠写真を見ますか?」
一時はどうなる事かと・・・