216
城門がズタボロに破壊されてしまった中・・・。
-216 慌てる社長と冷静な犯人-
転生者達はハイラのいる所長室にいたので無事ではあったのだが、部屋にあった大きな窓から自分達が通って来た城門の悲惨な状況を見て開いた口が塞がらなかった。それと同時に絶対にこの世界で罪を犯さない(どこでも犯すなっての)、そして目の前のエルフを決して敵に回さないと心に誓ったのであった。
好美「ねぇ・・・、まさかと思うけどドーラの魔力も相当な物だったのかな。」
守「確かに、こんな強力な魔法を使っている所なんて見た事もないし普段はただの酒飲みのイメージしか無いから魔力云々を言って良いのかも分からないな。」
唖然としている恋人達だが何か忘れてはいないだろうか、よく考えてみれば結愛が先程無線を飛ばしてから時間はさほど経っていない様な気がする。
結愛「おい、それよりヤベェんじゃねぇのか?」
とんでもない事態につい「大人モード」を忘れてしまった結愛、誰だって素(?)に戻るのが自然の流れなのかも知れない。
好美「何がヤバいってのよ。」
完全に大事な事を忘れてしまっている好美。
結愛「光明だよ!!確か俺が無線を飛ばしてからボートの払い戻しを行ってすぐにこっちに『瞬間移動』してきたはずだから下手すれば巻き込まれているかも知れねぇじゃねぇか。」
守「ホンマや!!」
気が動転していたのか、つい似非関西弁が出てしまった守・・・、って大切な友人の頃を忘れたらアカンやろ!!
好美「何よ、あんたも完全に忘れてた癖に。」
お・・・、俺は俺なりに現状を皆さんにお伝えしないと・・・、って俺の事は良いんだよ!!光明を探しに行かなくても良いのか?!
結愛「そうだよ、俺の大事な旦那の事を探さないと。えっと・・・、こういう時はどうすりゃ良いんだ・・・、確か『探知』で・・・、って俺今能力使えないんだった!!畜生、こんな時に限ってどうなってんだよ!!好美達も能力を封じられているのにどうして光明だけは無事なんだよ(※恋人達はほぼ無事なのですが結愛の心中では封印されている事になっているのでもう少し様子を見てみる事にします、一種の悪戯心という奴ですよ)!!」
結愛が頭を悩ませていると、所長室の大きなドアが音を立てながらゆっくりと開き始めた。いの一番にその音を聞きつけたハイラが小走りで迎えに行ってドアを開けた瞬間、大きな音を立てて男性が倒れ込んで来た。正体は勿論、守が完全に忘れてしまっていた「アイツ」である。
結愛「み・・・、光明!!」
ハイラ「お・・・、お知り合いですか?!物凄くボロボロですけど・・・!!」
強制収容所に入ってすぐの場所でハイラの魔法の被害を受けた光明は顔の所々から血を流していた、つい最近新調したスーツも穴だらけとなっていた。
守「光明・・・、無事か?!」
何事も無かったかの様に対応する守、どうやら光明は目の前の友人が自分の事を忘れていた事に気付いていない様だ。まぁ、同じ場所にいた訳ではないので当然と言っても良いのだが。
ハイラ「兎に角、手当をしましょう!!結愛さん、恐れ入りますが冷蔵庫の上にある救急箱を取って頂けませんか?!」
こちらにも何事も無かったかの様に振舞う者が約1名、ただそこにいた全員が「あんたの所為だろうが」とツッコミを入れようとはしなかった。きっと自分達の身を案じての行動だったのだろう。
結愛「一先ず回復を・・・、って俺今能力を使えないんだった!!どうすりゃ良いんだよ!!」
相も変わらず結愛が頭を抱える隣で冷静だった好美が光明に『状態異常無効』を『付与』したので事態はどうにか治まった、しかし社長の心中には問題が残っていた様で・・・。
結愛「おい光明!!このスーツどうすんだよ!!それと払戻金は無事なんだろうな!!」
そこじゃないでしょ!!