214
今日こそ無事に話を進めて下さいよ・・・。
-214 ババアだって?-
バルファイ王国にある競艇場でネフェテルサ第6レースの場外販売で万舟券を取った光明はウハウハになりながら妻の待つネルパオン強制収容所へと向かう事にした、結愛とは違い通常通り能力が使えるので強制収容所のある孤島までは『瞬間移動』ですぐに行けた。俺としてはだったら結愛のいる所長室へと直接向かえば良いのでは無いかと思ってしまうが行きたくても行けない理由が光明にはあった様だ、それも超個人的な。
光明「こんなニヤケついた顔で結愛の場所へと行ける訳が無いよな、あんなに切羽詰まった感じで連絡して来てたからただ事じゃ無いって事が分かるから少し気を引き締めるために歩いて向かおうと思うんだ。」
光明は収容所の前にいる係員・ヂラークに声を掛けた、ただ光明自身がここに来るのは初めてだった様で・・・。
光明「すみません、うちの妻がこちらにお邪魔していると思うのですが所長室はどちらでしょうか?」
ヂラーク「あの・・・、恐れ入りますがうちの所長は205歳で未だに独身なんですが・・・。」
どうやらヂラークは目の前にいるスーツ姿の男性がハイラの旦那(?)だと勘違いしている様だ、ただ係員の発言に光明が黙っている訳がなかった。
光明「205歳ですって?!俺がそんなババアの旦那に見えますかね?!俺も妻も20代なんですけど!!」
覚えて下さっている方がいれば嬉しいのだがハイラはアーク・エルフ、つまり長命種なので205歳と言っても見た目はババアからは程遠い姿だ。
ヂラーク「ババアだなんて本人が聞いたら大泣きしますよ、所長に話を通してから貴方を所長室にご案内致しますが絶対にそんな事言わないで下さいね。」
光明「ちょっと待って下さい、205年も生きている良い大人過ぎる人がおかしいでしょ。大体、200年も生きる人間が何処にいるって言うんですか!!」
ヂラーク「私だってそんな人がいたらビックリしますよ・・・、ってあれ?ちょっと待って頂けます?」
ここでやっと話が食い違っている事に気付いたヂラークは光明の耳を確認した、所長の様に長くはない。どちらかと言うと自分の物に近い様な・・・。
ヂラーク「あの・・・、貴方はエルフやドワーフなのではなく?」
光明「何を言っているんですか、何処からどう見てもただの人間でしょ。」
やっと自分の勘違いに気付いたヂラークは顔を赤くした、いつの間に所長が結婚しちゃったのかとヒヤヒヤした位だ。
ヂラーク「因みにですが、奥様のお名前は?」
光明「貝塚ですよ、貝塚結愛。」
これでやっと話が合致した、目の前の男性が205歳をババアと言ったり自分達の事を20代だと主張する訳だ。
ヂラーク「そうでしたか、大変失礼致しました。すぐに所長に話を通しますので少々お待ち頂けますか?」
そう言うとヂラークは無線機のスイッチを入れようとしたがたずっとスイッチが入りっぱなしの状態だったらしく、2人の会話は丸聞こえだった様で・・・。
ハイラ(無線)「私・・・、ババアなんですか?」
無線機の向こうでハイラは泣きかけていた、これはまずい事になってしまったかも知れない。
ヂラーク「何を仰っているんですか、所長はとても綺麗な女性じゃないですか。所内の皆が惚れちゃうくらいですよ、自信を持って下さい。」
ハイラ(無線)「でも205歳はババアだって・・・。」
ヂラーク「所長はエルフだから人間とは違うでしょ、皆所長に憧れているんですよ。だから元気出して下さいよ・・・。」
ただハイラの機嫌を直して元気を取り戻すにはタダでは済まなかった、そう、やはり「あれ」が必要なのだ。
ハイラ(無線)「ヂラークさん、ソフトキャンディー買ってくれなきゃ許さないです。」
やっちゃった・・・。




