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おっかない物ではないけど早くしまえや
-213 苦労する女-
結愛は対父親用の凶器(?)を『アイテムボックス』に入れた後、十数秒程ゴソゴソしてやっと元々取り出そうとしていた無線機を取り出した。恋人達は手のひらサイズの物を想像していたが実際に出て来たのは昔から軍隊などが使って良そうなイメージのあるとても大きな物だった、ただ好美が気になっていたのは別の事の様で・・・。
好美「結愛、結構長い時間探してたみたいだけど定期的に『アイテムボックス』の中を整理していない訳?」
結愛「昔からなんだけど毎日仕事が立て込んでてそんな間なんてねぇよ。」
本人の言葉を真っ向から否定するつもりはないが結愛って気が付けば酒を呑んでるイメージがあるのは俺だけだろうか。社長と言うよりはただの酒飲みの女と呼べるくらいに、ただ今は何も言わない方が良いのかも知れない。
結愛「おい、聞こえてんぞ。前々から言おうと思っていたがちょこちょこお前って俺に対して失礼だよな、改めて言うけど俺は社長だぞ(シャキーン)。」
はいはい、すんません。ただ今は取り敢えずご主人に連絡するのが先決なんじゃないですか(と言うか、何だよ今の「シャキーン」はよ)?
結愛「全く・・・、後で覚えてやがれ・・・。」
軽く舌打ちしながら先程取り出した無線機を操作し始めた結愛、光明が妻を気遣って使いやすいシンプルな作りにしてあったのですぐに連絡を繋げる事が出来た様だ。
結愛「光明ー、光明聞こえっかー?」
妻の声に反応したのか、それとも口調に反応したのか少し呆れ気味で返答をする光明。
光明(無線)「お前な、これは一応ビジネスで使う物なんだからもう少し考えて声をかけろよな。」
結愛「それ所じゃねぇよ、くそ親父が脱獄したのをお前も知っているだろ?」
光明(無線)「勿論だ、テレビで大々的に報道されてたからな。それがどうしたってんだよ。」
結愛「てめぇ「それがどうした」ってか、それでも副社長かよ。一応貝塚財閥としては迷惑をかけた責任を取らなきゃって思わねぇのかよ。」
結愛の叱責は社長としてだろうか、それとも妻、いや娘としてだろうか。ただ義弘が起こした脱獄事件と言っても既に親子の縁を切った結愛を含めた会社には関係の無い事だと思うのだが、やはり社長の心中にはまだ父に対する恨みが残っている様だ。
光明(無線)「確かにお前の言ってる事は納得いくけど俺達に何が出来るってんだよ、ネルパオン強制収容所での事だから所内の人達で何とかしてもらえば良いんじゃ無いのか?」
結愛「確かに光明の意見はごもっともだよ、ただその所内の人達が頭を抱えている上に事件後から監視カメラをうちの警備に委託してくれてるから一緒に解決してやりたいと思ってよ。」
光明(無線)「お前は相変わらずだな、住民の方々の為ならどんな事でもやるのは。それで?その正義の味方の結愛社長が俺に何の用だ?」
結愛「取り敢えずこっちに来てくれるか、今の俺とは違ってお前は『探知』や『瞬間移動』も出来るだろ?察しの通り俺は今『念話』も使えねぇから一先ず光明が来てくれないと困るんだよ。」
光明(無線)「そこまで必死になった結愛に頼りにされたのはいつ振りだっけな、分かったからもう少しだけ待っててくれ。」
結愛「おいおい、急ぎなんだぞ。何をやってんだよ。」
すると光明が無線機を切り忘れたのか周囲の音が鮮明に聞こえ始めた、よく考えればそこにいる全員が聞き慣れた電子音声が・・・。
電子音声(無線)「ネフェテルサ第6レースの払い戻しを開始しました、ネフェテルサ第6レースの結果と払い戻し金額をお知らせいたします。2連単④-⑤ 3680円、3連単④-⑤-② 43800円・・・。」
電子音声を聞いて結愛は怒り心頭となっていた、自分が必死に働いている時になんて事をしているんだと言わんばかりに。
結愛「てめぇ・・・、光明!!」
そりゃ誰だってキレるわな、旦那だけこっそり遊びに行っているんだもん。
結愛「今のレース取ったのか?!今夜の飯はどうなるか言いやがれ!!」
リンガルス「社長、気になっているのそこですか・・・。」
どうしよう・・・、話が進まない・・・。




