206
どう言う事?
-206 正体-
さり気なく「通常モード(こっちで良いんだよな、多分)」に戻ったハイラによる意味不明な発言によりムクルや転生者達は一斉に首を傾げた、顔を見た事すら一度も無いのにもう会っているとはどういう事だろうか。
ムクル「所長、どういうお方なのか存じ上げないのにもう既に私達とお会いした事があるとはどういう事でしょうか。」
また泣かす訳にはいかないのでじっくりと言葉を選びながら声をかける副所長、再び「泣き虫モード」に戻ってしまうとハッキリ言って厄介なのだ(と言うより買う事になるソフトキャンディーの個数をこれ以上増やしたくない)。
ハイラ「えっとですね、お会いした事があると言うより先程からずっとこの部屋にいらっしゃっているんですけど。」
ムクル「所長、恐れ入りますが我々以外にどなたもいらっしゃらないと思うのですが宜しければどちらにいらっしゃるか教えて頂けませんでしょうか?」
ムクルの依頼を聞いたハイラは全く人のいない方向を手差しした、所長の手の先には好美達も気になっていたキノコが生えていただけだった。
好美「所長さん、私達の目がおかしいのかも知れませんが誰もいませんよ。」
好美は決して嘘をついているつもりは無かった、ただその横で頭を悩ませる人物が1人。
結愛「好美、ちょっと待ってくれるか?うーん・・・、何となく身に覚えがあると思うんだよな・・・。」
好美「えっ、どういう事?」
ただ好美の質問に答えたのは所長だった、ハイラは先程手差ししたキノコへと近づいて軸の上の方を軽く叩いた。
ハイラ「そりゃあ身に覚えがあるはずですよ、だってこの方・・・。」
ハイラの合図に応じたかのようにすぐ隣に生えていた最も大きなキノコが一気に地中から抜け出してゆっくりと一回転すると軸に顔があったのが分かった、それを見て結愛はある事を一気に思い出した。
結愛「思い出した、最近貝塚警備で雇ったマイコニド達を数人ほどこの収容所に送り込んだんだ。すっかり忘れてたぜ。」
好美「マイコニドってキノコの・・・、でもこの世界にいたの?」
結愛「実は俺も未だに信じ切れてないんだけどさ、どうやらバルファイ王国の小さな村に集団で住んでるらしいんだよ。それでこの前稼ぎ口が欲しいって泣きついて来たもんだから警備の職に就かせていたんだ、それからは支社長に任せていたから忘れていたよ。」
笑いながら頭を掻く結愛の言葉を聞いたマイコニドは『人化』して綺麗な女性の姿に変身した、別にそのままでも会話を交わす事は出来るらしいのだが相手に対する配慮なのだそうだ。ただよく見たら・・・、泣いてねぇか?
マイコニド「結愛社長~、忘れるだなんてあんまりですぅ~。しかも余計なエピソードまで話さなくて良いじゃないですか~。」
結愛「レイトさんごめんなさい、くそ・・・、いや父による騒動でバタバタしていたものですから面接した事すら今思い出したんですよ。」
レイト「だったら良いですぅ~・・・。」
レイトというこのマイコニドの従業員は義弘による騒動が発覚した後に雇われた為に勿論今回の事件への関与は無い、何事も無くしっかりと仕事をこなしている様なので結愛は一安心していた。
結愛「今回の事件が解決したら一度マイコニドの方々を呼んで皆さんでお食事をしましょう、ここにいる私の友人がご馳走しますので許して下さい。」
好美「えっ?!ちょ・・・!!」
結愛(小声)「こんな事頼めるのは好美しかいないから頼むよ、金の動きを光明に見られたら何言われるか分からないんだよ。」
好美(小声)「だからって急すぎるよ、イャンダのお兄さんの事もあるのに面倒を持って来ないでくれる?」
結愛(小声)「「面倒」なんて言わないでくれよ、本人に聞こえたらどうするんだよ。」
レイト「社長、今何気に「面倒」って聞こえましたけど・・・。」
結愛「ま・・・、まずい・・・。」
このパターンって・・・、まさかこいつもなの?
勘弁してくれ




