204
楽しそうにお茶を淹れる所長
-204 本当に所長なのか?-
ムクルがお願いする位お茶に相当拘りを持つ所長はある程度の手順を隣の部屋で踏んだ後のポットを含めた紅茶セットを載せたお盆を両手に持ってニコニコしながら戻ってきた、お茶に拘りを持っていると同時にカップやポットにも拘っている様で結構な高級品と思われる陶器の器に思われた。所長が全員に温かな紅茶を配り終えると辺りに仄かだが良い香りが広がっていた、そんな中所長はソファの空いている席に座って懐から何かを取り出そうとしていた(多分名刺)。
所長「大変お待たせいたしました、飲み頃だと思いますのでごゆっくりお楽しみ下さい。その間に私は・・・、あれ?おかしいな・・・、この辺に入れた思うんだけどな。」
ムクル「所長・・・、前から入れる場所を決めときましょうって言ってるじゃないですか。」
副所長は優しく伝えたつもりだったが所長にはきつい言葉に聞こえたらしく・・・。
所長「えぐっ・・・、えぐっ・・・、うわぁーん!!また副所長に怒られたぁ!!」
どうやら所長はかなり気弱な女性らしい為にその場で泣き出してしまった、失礼も承知で言うが正直この人に強制収容所の所長が務まるとは思えない。
所長「なぁにぃ、この声の人だぁれぇ!!」
ごめんね、ごめんなさいって!!目の前にいる社長のお姉ちゃんが今度お菓子買ってくれるって言ってるから泣き止んで、ね?
結愛「ちょっと・・・、おま・・・!!」
所長「本当?お姉ちゃん、お菓子買ってくれるの?」
見た目での年齢は明らかに結愛や好美と同年齢なのだが、所長の精神年齢はいくつなのだろうか・・・。
結愛「ああ・・・、1個だけな。」
所長「うん・・・、じゃあ許す。」
ふぅ・・・、助かった・・・。すまんが結愛、今度買ってやってくれ。多分小さい駄菓子とかで大丈夫だと思うから。
結愛「お前な、いくら何でも失礼じゃねぇのか?まぁ、解決したから良いんだけどさ。」
目の前で起こった事件(?)は即刻解決したがここに来た本来の目的は未だに果たせていない、一先ず一行は所長が泣き止んで落ち着くのを待った。
所長「副所長・・・、うちちょっとトイレ行く。」
ムクル「トイレね、うん、行ってらっしゃい。場所は分かるかな?」
所長「うん、1人で行ける。」
所長が部屋を出るのを見送ったムクルは再び転生者達に耳打ちした、何が言いたいのかは大体察しが付くのだが一応聞いておこうか。
ムクル「すみません、うちの所長って些細な事で泣き出しちゃう上にその度に子供に戻っちゃうんですよ。毎回毎回言葉を選びながら話すことになるのでそのお陰で聞きたい事が聞けないまま終わっちゃう事が多くて・・・、実はこれも監視カメラの委託業者について聞けていない原因の1つでして・・・。でも今の様にトイレに行くと簡単に戻る事が多いのでそこは助かるんですがね。」
一行は先程の所長の様子を思い出しながら引き笑いしていた。
好美「ムクルさんも苦労しているんですね、ずっとあの様子なんですか?」
ムクル「最低でも自分がこの収容所に赴任してきた時から・・・。」
守「こりゃ大切な情報を聞き出すのも大変だな・・・。」
副所長を含む全員がひそひそ話をする中、扉の方向から咳払いをする音が聞こえて来た。どうやらトイレから戻ってきた(こう呼ぶべきか分からないけど)通常モードの所長による物らしい。
所長「ムクルさん、また余計な事をお客様に吹き込んでらっしゃるのですか?」
ムクル「あぁ所長、違うんです。お客様から私の弟について聞いていた所なんです。」
所長「あら?貴方って一人っ子って仰ってませんでしたっけ?」
ムクル「いや・・・、えっと・・・、あの・・・。」
美人の所長を前にして口がまごつく副所長、もしかして・・・?
「あれ」ですか?女子の好きな(?)あれですか?