202
強制収容所の中を進んで行く一行。
-202 複雑な兄弟-
強制収容所の中を歩み進めていくのと比例して守や結愛、リンガルス警部、そして4人を迎え入れた係員は緊張感が高まった顔をしていた。ただそれと反する様に好美はずっと冷静を保ち表情を全く変える様子が無かったのでそこにいる全員が不思議で仕方が無かった、何か後ろ盾でもあるのだろうか。
守「好美・・・、好美?」
好美「・・・。」
好美はずっと無言で表情を変えないままでいた、周囲から見れば気味が悪いと言われんばかりに。
結愛「少し待ってろ、きっと『念話』でも使って重要な手がかりでも聞き出そうとしているんだろう。ハッキリ言って羨ましいったらありゃしないぜ。」
この事件の解決と自らの能力の復活を願わんばかりの結愛、今はどんなに小さい事柄でも見逃す訳にもいかない。
それから数秒後、好美は無言のまま表情を変えていた。どうやら結愛の言った通り『念話』を行っていた様だ、『進入阻害』を使っていた為か分からないが誰と話していたのかをそこにいた皆が分からないでいた。
それから所長室に到着するまでの間を利用して大企業の社長は先程から感じていた違和感について尋ねてみる事にした、きっと結愛以外の者も同じ気持ちでいただろう。
結愛「あの・・・、何となくなんですけど湿度が高くなっていませんか?」
係員「やはり感じますか、実は最近施設内の監視カメラの委託業者を変えたと聞いたんですが詳しくは教えて貰えていなんですよ。ただ所長は「評判の良い方々だから」とその業者の方々と会わせてくれないんです、副所長にも会わせていない様ですので平の私達がこれ以上付け入る訳にいかないと思ってそっとしておく事にしているのですが・・・。」
そうこうしている内に一行は所長室の前に到着したので係員は木製の扉を優しくノックした、しかし中からは反応は一切無かった。
係員「所長?先程申し上げた通り貝塚社長御一行が来られたのでお連れ致しました、ご不在ですか?」
やはり中からの反応は無い、係員が調べてみると扉の鍵は掛かっていなかった様なので室内で待っていようとしたがそれを横から止める男性の声がした。
男性「ヂラークさん、何をされているんですか?」
ヂラーク「すみません、所長とお約束があった貝塚社長をお連れしたのですが室内にいらっしゃらない様でして」
会話の流れからその人物は4人案内して来た係員・ヂラークの上司の様だ。
上司「そうですか・・・、所長は先程御手洗に向かわれていましたのですぐお戻りになると思いますよ。」
結愛「あの・・・、ヂラークさんでしたっけ?そちらの方は?」
突然現れた男性が誰なのか知りたくなるのは皆が持ちうる性だ、俺だって気になって仕方が無い。
上司「申し遅れました、私はこの強制収容所の副所長をしているムクル・デランドと申します。以後、お見知りおきを。」
ムクルは丁寧に挨拶すると全員に名刺を渡した、その場の勢いでヂラークにまで渡そうとしてしまいそうだったので相当だ。ただ転生者達は名刺の名前に何処か見覚えのある気がしてならなかった、特に好美。
好美「あの・・・、もしかしてムクルさんって御兄弟がいらっしゃいますか?」
ムクル「えっと・・・、もしかしてニコフ君の事ですか?」
ニコフの名前が出た時点で2人が関係者だという事が分かった、ただ「君」と呼んでいたので複雑な家庭の生まれ同士なのだろうかと疑われたが今はそれ所では無かったが?
ムクル「実は子供の頃、母親に私にはニコフという弟がいると聞かされていたのですが全くもって会わせて貰えなかったんです。今となっては存在すら嘘と思っていたのですが元気にしているんですね、良かった・・・。」
好美「あの、ニコフさんはいとこのイャンダさんをお兄さんと呼んでいるみたいですが。」
ムクル「イャンダってイャンダ・コロニーの事ですか?!あのSM好きの?!」
好美「え・・・、元竜騎士としてではなくそっちで有名なんですか?!」
今気にするべきだとは思わないけどイャンダって一体・・・。




