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無事に旅行に話を戻したいけど・・・。
-194 知らせる-
何やかんやあったので「無事に」と言えば嘘になるが、渚が何とかして「鉱山下の大蜥蜴」に納品する食材を『転送』し終えて無事にダンラルタ王国に戻って来たという知らせを聞いたので恋人達は旅行を続行させる事にした。ただ今までの流れからして無事に好美達の卒業旅行が終わりを告げるとは思えないがこの世の中何があるか分からないので一先ず2人の動向をゆっくりと見守る事にした、ただ先程恋人達の事を叱責していた渚がこのまま黙っているとは思えない事が難点だったが・・・。
渚「まぁ何とか店を開店出来る所まで持って行けたね、明日お花でも飾ったら流行るんじゃないのかい?」
確かに店の前にド派手と言われるまでの花を飾っていると目立つので来客数が増える事は間違いないと予測される、しかしここはダンラルタ王国なので決して忘れてはいけない事が1つあった。
デカルト「渚さん、景観を損ねるので流石にド派手な花を飾る訳には行きませんよ。ただ店主さんの料理の実力は皆が分かっている事なんです、これだけでも十分だとは思いませんか?」
確かにランバルの料理の腕は以前働いていた旅館にいるベルディやネイア達のお墨付きなのかもしれない、ただその場にいた全員が必ず考慮に入れないといけない事象があった。
渚「待ちなよ。この国に、いやこの世界に住んでいる全員がランバルさんの料理の味を知っている訳ではないだろう。」
ここ数年でボーリング場を併設していたが故に「竜騎士の館」の人気は右肩上がりになっていたが3国の住民達が必ずしも宿泊した証拠がある訳ではない、この3国にて店舗や屋台を営業している「暴徒の鱗」でさえ未だにその味を知らない住民だっているので尚更だ。ここはやはり責任を果たす為に何かしらの良策を練る必要があった。
そんな中、ランバルが頭を抱える全員の下に本来はお冷を入れる為のグラスを使ってお茶を振舞っていた。
ランバル「皆さん、私の為にありがとうございます。しかしこんな人気の無い所で店を開く事が間違いだったのかも知れません、潔く自分の店を持つ事を諦めて旅館での仕事に戻る事にします。」
洋食屋の店主は簡単に言ったが好美達が宿泊した時点で既に旅館の1階にランバルの店があった痕跡は全くもって残っていなかった、ハッキリ言ってもう後が無いのは明白だ。
渚「待ちなよ、1番大切な事はランバルさんの実力を皆に認めさせる事じゃ無いのかい?」
デカルト「じゃあ・・・、どうすれば良いと言うんですか。」
方法が無いと言えば嘘になる、しかし俯瞰で様子を見ているだけの俺に意見をする権利があるのだろうか。
渚「何だい、偶にはケチケチせずに言いなさいよ。」
分かったよ・・・、目立つ所で試食を出せば良いんじゃ無いのか?きっと感染症が危惧される今の日本と違ってこっちの世界は問題ないと思うんだが。
渚「「目立つ所で試食」ね、良い考えだけどね・・・。」
デカルト「私もそう思いますが、住民の皆さんが来て下さる「目立つ所」って何処だと言うんです?」
1箇所あるだろう、国王として責任を取れってんだよ。
デカルト「ま・・・、まさか・・・。」
そう、その「まさか」だよ。国王が俺なんかの意見を簡単に受け入れてくれるとは思わないが提案してみる価値はあるだろう。
デカルト国王、あんたもこの件の責任者の1人のはずだ。王城で試食を出すんだよ!!
デカルト「そう言われましても、王城は山の上ですからちゃんと宣伝しないと誰も来ませんよ。何か考えでもあると言うんですか?」
おいおい、そこにいるのはただの屋台の店主じゃないんだぞ。「あれ」を使うんだよ。
渚「何さ、全員して私の方を見て・・・、まさか「あれ」を使うつもりかい?私は嫌だよ?」
何だよ、分かってんなら早く『アイテムボックス』から「あれ」を出しやがれ!!
効果が出るかは分からんけど・・・。