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仕方ないで済んで良い事か?
-192 あらまぁ-
突然目の前に出現した大量の食材を見て慌てて『念話』を飛ばした1号車の店主は折角の食材を流石に腐らせる訳にはいかないと丁度空になりかけていた屋台の冷蔵庫の中に入れておこうとしていたがその様な心配は全くもって必要無かった、先程渚が言っていた通り全ての食材は次の瞬間に消失してしまったのだ。
シューゴ(念話)「渚さん、何があったんですか?店舗を営業している訳でも無いのにあんなに大量の食材を購入されるだなんて、しかも「ダンラルタ王城御中」って書いてありましたけど。」
「暴徒の鱗御中」だったら話は分からなくも無いのだが「ダンラルタ王城御中」だったので話が変わって来る、心配性のシューゴは渚がとんでもない事態に巻き込まれたのではないのかとヒヤヒヤしていた。
渚(念話)「大した事無いよ、ただただお使いを頼まれただけさ。気にしないでおくれ。」
シューゴに心配をかけさすまいと咄嗟についた嘘だったがどうかバレないでくれと祈るばかりであった、別に渚が悪かった訳では無かったのだがやはり責任者であり師匠である者としての責務をただひたむきに果たそうとしていただけだったのだ。しかし今回は珍しくシューゴが退かなかったので渚は返事に困っていた。
シューゴ(念話)「あの・・・、どう見ても「大した事無い」量では無かったのですが本当に心配ないんでしょうね?」
どうやら渚が発注ミスを犯してしまったのではないかと思っていた様だ、もしもそうだとしたら「暴徒の鱗」全体の利益に影響が及んでしまう可能性がある。
渚(念話)「何だい、私が今までミスを犯した事があったかい?私の事信用できないってのかい?」
シューゴ(念話)「そういう訳では無いんですけど、ちゃんと理由を説明して頂かないと納得できませんよ。」
渚(念話)「さっき言っただろう、「お使いを頼まれただけだ」って。私の目が嘘をついている様に見えるかい?」
『念話』を使用しての会話なので表情など見える訳が無いはずなのだが、きっと今の渚は冷静さと判断力が欠けている様だ。別にやましい事が有る訳でも無いのに何を焦る必要があるのだろうか。
シューゴ(念話)「どうやって目を見ろと言うんですか、今渚さんはバルファイで俺はネフェテルサなので無理に決まっているじゃないですか。」
渚(念話)「仕方ないね・・・。」
会計を済ませて御釣りと領収書を手に渚達の元に戻ってきたドゥーンに「すぐ戻るから」と了承を得た渚はシューゴのいる場所を『探知』して『瞬間移動』した、ただ到着した場所が悪かった様で・・・。
シューゴ「うわ!!来るなら来るって言って下さいよ!!」
渚「何言ってんだい!!それよりほら、よく見てみな!!」
比較的低い位置にあったシューゴの顔に自分の目を近づけた渚、女性の顔が近いからかシューゴは少し顔を赤らめていた。
シューゴ「いや・・・、それはこっちの台詞ですよ・・・。」
渚「へ?」
一瞬ポカンとした渚は辺りを見廻した、そして自分がまたやらかした事に気付いた様だ。そう、シューゴは偶然立ち寄った「ビル下店」で従業員用のトイレを借りていたのだ。
シューゴ「分かったでしょ?ほら、早く出て頂けますか?」
流石に狭いトイレの個室に2人で入っていると出る物も出なくなってしまう、ましてや目の前にいるのが渚なのでよっぽどだ。
渚「悪かったね、じゃあ。」
シューゴの心中を察した渚は急いで元の場所へと『瞬間移動』した、ただ『探知』で場所を確認してから『瞬間移動』したはずなのにどうしてシューゴがトイレにいた事が分からなかったのだろうか。
渚「仕方ないだろう、誰だって焦る事はあるさね。」
焦り過ぎです・・・。