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確かに『念話』している時って周りから見たら怪しいもんな
-191 誰だってやらかす-
ずっと『念話』で恋人達と話す渚の隣にいたからか、酒類卸の店主はただただ無言で表情のみを豊かに変えていたばかりの目の前の屋台の店主が一体何をしていたのかが分からなかった様だ。あれ?おかしいな・・・、さっきドゥーンって自分の事をリッチだって言ってなかったか?
渚「あんたね、この世界に住んでいるリッチだからって誰しもが必ず『念話』を使えると思ったら大間違いだよ。」
すいません・・・、大変失礼致しました。ただずっとお店の方をほったらかしにするのは宜しくないと思うのですが・・・。
渚「安心しなよ、店長さんならあそこでお茶飲んでいるよ。」
あら本当ですね、いつの間に移動してたんだよ・・・。まぁ、暇そうにしてたから仕方が無いか。さて、話に戻りますかね。
暑かったからか、それとも渚がずっと放置プレイをしていたからか、店の事務所の前で冷えた緑茶を飲み干したドゥーンは額から滲み出ていた汗を拭いながら渚達の元へと戻ってきた。
ドゥーン「あのお客様、そろそろ宜しいでしょうか。」
渚「ああ・・・、あんたは家族の友人なんだからあたしの友人でもあるんだ。「渚」って呼んでくれて構わないよ。それより悪かったね、さっきここにある食材を買い占めようとしていた好美ちゃん達と『念話』をしていたんだ。」
ドゥーン「そうだったんですか、もしかしたらビジネスでの話なので『進入阻害』をされていたのかもしれませんね。」
どうやら情報の漏洩を防ぐ為に最近神が『作成』したと言われている『念話』の特殊応用技である『進入阻害』を使っていた様だ、しかし守が途中から入って来ていたけどどういう事なんだ?
渚「よく考えてごらんよ、今あの子はどういう状態なんだい?」
そうでしたね・・・、かなりお出来になっていましたね・・・。忘れておりました、しかし酔っているからって能力の質が低下する事があるんですかい?
渚「そりゃそうさ、吞み過ぎたらまともに歩けなくなる奴もいるだろ?あれと一緒さね。」
あらま、ご丁寧な説明有難うございます。それにしても参ったな・・・、作者の俺より登場人物の方が能力に詳しくなってる上にいつの間にか応用技まで出来てやがる。これじゃ執筆が追いつかねぇよ・・・、取り敢えず再び話を進めようかね。
ドゥーンは電卓を片手に改めて会計を進めようとした、ただ好美が買い占めようとした商品をそのまま回すだけだから既に合計金額は分かっているはずだがどうして計算し直しているのだろうか。
渚「理由は1つしかないよ、大量の食材を買い占めるんだから出来るだけ勉強してもらわないとね。」
どうやら可能な限り値切ろうとしていた様だ、好美を中心とした転生者達はやはりドケチな者達が多いらしい。ドケチを敬うべきか、そして王城から予算を渡されているのにこの値切るという行為が必要なのか俺には分からなかった。まさかと思うがネコバ・・・。
渚「馬鹿言ってんじゃ無いよ、王城だって経費がギリギリの可能性だってあるんだから出来るだけ低予算にしてやりたいじゃないか。」
本人にとっては優しさからの行為だった様なので俺は反省すべきだった、ただ店主が大変そうにしているのは否めないがこれは取引なんだから仕方が無い。しかし電卓での計算を終えた店主の発言に誰もが驚きを隠せなかった。
ドゥーン「えっとですね・・・、友人のご家族の方ですので特別価格と致しまして全体の4割引きである36万6000円とさせて頂きます(※日本では法令により本来酒を割引にできませんがここは異世界ですのでお許しください)。」
ほぼほぼ原価ギリでは無いのかと思わず心配してしまう価格に頭が上がらなかった渚は頬を軽く掻きながら国王に手渡された予算の入った封筒から札を取り出して支払いを終えた、食材の運搬は勿論『転送』を使って行った様だが・・・?
シューゴ(念話)「渚さん、これ何なんですか!!いきなり「ダンラルタ王城御中 赤江 渚様」って書かれた大量の食材が出現したんですけど!!」
渚(念話)「あらま、そっち行っちゃったのかい?悪いね、すぐ戻すから。」
あらあら・・・。




