188
拘るのは分かるけど、金が無いと何も出来んぞ。
-188 大丈夫?-
改めて食材リストを睨みつける渚はあまりにも高額だった為に再び震えていた、これだと今日の経費を全部使うどころか数日分の売り上げを返上しても払える訳が無い。
渚「あんたね、うちは見ての通り屋台の拉麺屋だよ。こんな大金、払える訳が無いじゃ無いか。いくら後で返金があるって分かっていても買い出しになんて怖くて行けないよ。」
確かに渚が言っている事は正論ではあるが転生者達は元から1京円の資産を与えられているはずなので問題無いが、やはりいち経営者としてしっかりとした話し合いをすべきだと簡単に引く訳に行かない様だ。きっと王城からの信用を得て売り上げのアップを見込んでいるのだろう。
デカルト「では、予算を王城の方から先に出しておきましょう。渚さんは後から御釣りと領収証を渡してくれればそれでいいですので。」
冷静に考えていればデカルトの言う通りだ、しかしその方法だと王城の使用人を買い出しに出せば良いだけなので渚が良く必要性は皆無となる。ただこれは王城と屋台の両方が絡んだ話なので双方でしっかりと話しをつけるべきだと言えるし、俺としては全ての責任者をロラーシュにするべきだと思うのだが。
渚「ロラーシュを預かる身とすればやはり王城からの信頼にちゃんと答えないといけないじゃないか、私だって1人の経営者である前に人間なんだからね。」
デカルト「すみませんね、ではこちらのお金でお願いします。」
ただ屋台に予算が無いのは事実だ、デカルトの言う通りに王城(と言うよりデカルトのポケットマネー)から予算を受け取って買い出しに行く事にしたが実はそれ以上の問題が浮上していた。
長々とした国道を進む中、渚はロラーシュの運転する軽バンの助手席で渚は1人頭を抱えていた。
渚「参ったね・・・、買い出しに行くったってもこんな高級食材を扱う店なんて何処にあるってんだい。ただでさえ店の無いダンラルタ王国だってのにどうすれば・・・。」
そんな店主に運転しながらも横から小声で話しかける大臣。
ロラーシュ「あの・・・、今はバルファイ王国なんですけど・・・。」
渚「あんたは余計な事を言ってんじゃ無いよ!!」
ただでさえイラつく渚、そこに一言告げるのは火に油を注ぐ様な物だと思われるのだが渚は深呼吸して冷静になった後に腕組みしながら考えていた。
渚「あんた、今さっき「バルファイ王国」って言ってなかったかい?」
ロラーシュ「はぁ、確かに申し上げましたが・・・。」
よく考えればここはダンラルタ王国との国境からさほど離れていない場所だ、渚の記憶が正しければ・・・。
渚「あの店があるんじゃないのかい?」
ロラーシュ「「あの店」・・・、と申しますと?」
渚「あともう少しだけ走れば分かるよ。」
暫く走ると数人の住民達が行列をなして開店の時を待つ店があった、ただそこはどう見ても客売りをメインとしている様にも見えないんだが・・・。
ロラーシュ「あの女将さん・・・、ここってお店なんですか?」
渚「こら!!「女将さん」って呼ぶなって何回言えば分かるんだい!!」
「またかよ」と言いたいがこれは忘れてはいけない件だ、これを忘れてしまっていては渚が何を言い出すか分からない。
ロラーシュ「すみません、お姉さん。それで、ここは何ですか?」
渚「何ですかってお店だよ、そうでないとお客さんなんて来る訳無いじゃ無いか。」
渚がそう言うと店員が自動ドアの鍵を開けて客達を店に招き入れていた、ロラーシュも駐車場に車を止めて同様に店に入ろうとしたが渚が制止した。
ロラーシュ「お姉さん、何を考えているんです?」
渚「あのね、私達はあくまで商売をする人間だよ。用があるのはこっちさ。」
そう言うと店の入り口から離れて裏にある倉庫の様な場所へと歩いて行った。
ここは何処ですか?