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ただただ空の旅を楽しむ好美
-185 店には着いたけど・・・-
ダンラルタ王国にて連なる山々を眺めながら国王の背で笑顔を見せる好美は美しい景色によりすっかり空腹を忘れてしまっていた、これは台風が来かねない位の事態と思われたが今はそれ所ではない。しかし、2人共に(?)今から向かう目的地における問題の当事者では無いのでゆったりとした空の旅を楽しみながらずっと笑い合っていた。ただ転生者達、いや住民達にとっての貴重な経験は長くは続かなかった。
守「王様、こちらです!!非常に申し上げづらいのですがずっとグルグルと回ってないで降りて来て頂けませんか?」
いつの間にか目的地についていた事に気付いていないフリをしていたデカルトは後ろを追う守達が来るまで好美に特別サービスを行っていた、どうやら王城で延々と家事をこなしていた為に外で遊びたかった様である。
デカルト「すみません、お気遣い感謝致します。すぐに降り・・・、へ?」
突如好美に背中を数回タップされた国王は好美へ耳を貸す事にした。
好美(小声)「あの・・・、敢えてずっと旋回を続けて頂けませんか?もう少しだけ遊びません?」
デカルト(小声)「貴女も悪いお方ですね、彼氏さんを無視しちゃって大丈夫なんですか?」
好美(小声)「折角の旅行なんでもう少しだけ楽しみたくて、駄目ですか?」
好美の質問に優しく微笑みながら返答したデカルト。
デカルト(小声)「ハハハ・・・、好美さんが良いなら私は構いませんよ。それにしても折角のご旅行中に私共の大臣がご迷惑をお掛けして申し訳ありません、お詫びと言ってはなんですがサービスさせて頂きますね。」
好美(小声)「私自身は大丈夫です、ランバルさんには悪いですけどお陰でそれなりに楽しませて貰っていますので。」
そう言うと速度を上げて空中を旋回するデカルト、何処からどう見ても好美の悪戯心による行動だという事が分かる。地上から2人の様子を見ていた守はため息をつきながら好美に『念話』を飛ばした、元の世界にいた頃と合わせたらこういった放置プレイは何度目だっただろうか。
守(念話)「好美、勘弁してくれよ・・・。それにその人国王様だろ?大丈夫なのか?」
好美(念話)「良いじゃん別に、本人が「良い」って言ってくれたんだから。」
守(念話)「だからって他の人を待たせたら駄目だろ、特に渚さんに変なイメージを持たれたらまずくねぇか?」
時すでに遅し、守が1人頭を抱える横で噂の渚も空中の2人の様子をずっと見ていた。
渚「守・・・、あんた達どんな関係なんだい?好美ちゃんって昔からあんな感じだったのかい?遊び人と言うか何と言うか・・・。」
守「うん・・・、遊び人では無いと思いたいんだけどあの様子を見てしまうと否定出来なくなってくるな・・・。まぁ、大学に行ってた頃からそうだったんだけどまだ子供っぽさが残っているんだよな。でも俺からすればこっちの世界でも変わらずに元気でいてくれただけで嬉しいんだよね。」
渚「あんたも語るね・・・、というか何時からコーラなんて持っていたんだい?」
『アイテムボックス』の能力が存在しているこの世界では十分あり得る話なのだが、何となく話を繋げる為に敢えてツッコミを入れる渚。
守「ずっと運転してたから疲れちゃってさ、一応糖分補給も兼ねて冷たいコーラが欲しくなっちゃって。」
渚「ただあんた・・・、よっぽど喉が渇いてたんだね。やたら減りが速いじゃ無いか。」
守「いや、おれはまだ1口しか飲んで無いけど・・・。」
守が右手に持っていたコーラを確認すると既に中身は半分に減っていた、「まさかな・・・」と思いつつも正直違うと信じたかったが・・・。
守「やっぱり好美か・・・。」
そう、好美が右手だけをコーラの近くに作った異空間から出してコーラを飲んでいたのだ。バレない様にする為に少しずつ飲んで守の右手に戻していたらしいが・・・。
守(念話)「好美・・・、自分のやつを飲めよ。と言うか早く降りて来いって。」
いや、ツッコむのそこですか?
まさか守もボケに回るの?