183
気が進まないけど・・・。
-183 仕方ない・・・-
恋人達は「あの人」、つまり渚が経営する屋台があると思われる場所へと向かう事にした。ネフェテルサ王国に残した仲間達に断る事無く卒業旅行に来ていると言うのに「赤鬼」に会って大丈夫なのだろうかと聞きたくなるが、それ所ではない事態が起こってしまっているので致し方が無い。1国の王までをも巻き込んでしまっているので守は事態に収拾を付けるのが最優先だと思っていたが、好美には別の理由があった。
好美「もう!!結局水だけで何も食べれて無いじゃない!!」
そう、空腹が限界にまで達していたのである。これ以上この大食いの「鬼」を不機嫌にする訳にはいかないという危機を感じた守は車を走らせようとしたが、何故かピクリと動こうともしなかった。別にクラッチ動作に失敗してエンストを起こしている訳でも無い、正直言って守は訳が分からなくなっていた。
好美「おう、どうしたってんだよ。」
カペン「守はん、何をしようと考えているか大体想像が付きますけどその必要は無さそうでっせ、店の中での会話が丸聞こえでしたわ。」
守「お前・・・、地獄耳かよ!!」
正直あの軽自動車の何処に耳があるのかこちらが聞きたい位だ。
カペン「ほら・・・、匂ってきまへんか?芳しきスープの香りが・・・。」
敢えて聞くが、あの軽自動車の何処に鼻があるのだろうか。
守・好美「スープの香り?」
そう言うと守と好美は社外へと出てそこら辺の匂いを嗅いでみた、山中の美味い空気に段々とスープの香りが混じり出して来た。
好美「本当だ・・・、「暴徒の鱗」のスープの香りがする!!」
ピューアの手伝い等で店に出ている時は嫌と言う位に嗅いでいるスープの香りが今は幸せを呼んでいるように感じた好美は屋外でずっと腹を摩っていた、その光景を見た守は「助かった」と言わんばかりにしゃがみ込んだ。そんな中、2人を見かけた渚はロラーシュに頼んで「鉱山下の大蜥蜴」の駐車場に屋台を止める事にした。「これも修業の一環」と言って最近は大臣に運転をさせているらしいが、どう見ても渚が楽をしたがっている様にしか思えない。一先ずカペンの近くで降車した渚は2人のいる方に早歩きで向かった。
渚「あんた達!!こんな所にいたのかい!!皆何の連絡も来ないから心配しているじゃないか、電話も『念話』も、それに携帯にメッセージを送っても通じないからネフェテルサで大騒ぎになっているんだよ!!」
渚の言う通りだ、特に好美はネフェテルサ王国では重要人物の1人となっているので予想通りだが王国中が騒然としていた。
好美「すみません、元の世界にいた頃に出来なかった卒業旅行をこっちの世界でしていたんです。隠すつもりは無かったんですが言い忘れてました、ごめんなさい。」
嘘だ、思いっきり夜中にコソコソしていたじゃないか。
好美「もう、余計な事を言わないでよ!!」
渚「まぁ、見つかったから良しとするか。一応あんた達も良い大人なんだし、親離れしたくなる歳だから気持ちは分からなく無いさね。」
渚は一安心して深く息を吐いた、そして・・・。
渚「でもね!!あんた達を見つけた事は皆にすぐ言うからね、帰ったら覚悟しな!!」
好美「すみません、ただ今はそれ所じゃないんです!!」
渚「「それ所じゃない」って、何だって言うんだい。」
好美は渚にロラーシュとランバルの事について話せるだけ話した、そんな事を気にしていない様子の大臣は離れた場所で呑気に読書をしていた。
渚「それは弟さんが可哀想じゃ無いか、今すぐ王宮に行かなきゃね。」
男性「その必要はありません!!」
聞き覚えのある男性の声の後、1体のコッカトリスが地上へと降り立った。
3人「デカルト国王!!」
遂に国王が動く!!