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やっと掃除を終わらせたデカルト
-182 何とかなるかな-
王族夫妻の口喧嘩(?)から数十分、やっとの思いで王宮にある部屋の掃除を終わらせたデカルトは滲み出ていた汗を拭いながら好美に『念話』を飛ばした。国王の様子からは本人の恐妻家っぽさが滲み出ていたので「鉱山下の大蜥蜴」にいた3人はため息をつくばかりであった。
デカルト(念話)「す・・・、すみません・・・。流石に愛する奥様に逆らう訳には行きませんので。」
普段から「愛する奥様」だなんて言っていないのが何処の誰が聞いても分かってしまう、どう考えてもその場しのぎでの言動だという事が見て取れて仕方が無かった。
プーラ(念話)「私がそんな言葉で許すとでも思ったの?本当は掃除なんてはなからやる気無かったくせに。」
デカルト(念話)「いやあのね・・・・、プーラさん・・・。私だって国民の為に忙しく働いているんだからなかなか掃除なんて出来ないんですよ、その辺を考慮して頂かないと。」
プーラ(念話)「あんたね・・・、今日は1日ほぼ予定なかったはずよね・・・。本来予定してた鉱山の視察だって延期になったって聞いたから今日は暇と思うけど。」
デカルト(念話)「な・・・、何でそこまで・・・。」
どうやら王妃には全てお見通しの様だ、これでは下手な嘘なんかつけやしない。しかしプーラも鬼ではなかった、残りの12部屋の掃除もしっかりとこなしたので・・・。
プーラ(念話)「でも良いわ、ちゃんとこの様に綺麗にしてくれたから許してあげる。」
ただ王様を許すと言っていた王妃の右手には割り箸等にガーゼをかぶせて輪ゴムをくくりつけた有名な便利道具がしっかりと握られていたが今は忘れておこう。
プーラ(念話)「貴方、後でリビングにおいでなさいね。あ、好美さんでしたっけ?今からで宜しければうちの人へのご用事をどうぞ。」
好美(念話)「あ・・・、有難うございます。王妃様・・・。」
改めてタオルで汗を拭いながら好美からの『念話』に対応するデカルト、やっと話が進む様なので俺も一安心だと思いたい。
デカルト(念話)「大変申し訳ありません、好美さん。それでどの様なご用件でしょうか。」
好美はロラーシュ大臣とランバルの間にあった事について自分が話せるだけ話した、その話を聞いて発起人は頭を抱えていた。確かに原因のおおよそ半分を作ってしまったのは自分なので改めて考え直さなければならない。
デカルト(念話)「そうですか・・・、ロラーシュがそんな身勝手な行動を・・・。前回のミスリル鉱山での事件もそうですがまた頭を悩まされる事になりますとはね・・・。」
好美(念話)「デカルトさん・・・、何とかなりませんかね?」
デカルト(念話)「そうですね・・・、しかし新たに店を出すには中々土地を見つける事が出来ないでしょうし・・・。」
守(念話)「山の一部の土地を開発するのは駄目なんですか?」
デカルト(念話)「確かにその意見もアリなんですが、流石にその方法だと山の環境を崩す事になりますのであまり宜しく無いかと。」
好美(念話)「そうですか・・・、ちょっと相談しても良いですか?」
デカルト(念話)「勿論、私も少し水でも飲んできます。」
ダンラルタ王国には「決して国内における生態系や自然の景観を損なう工事をするべからず」という昔からの習わしがあり、国民は先代からの言い伝えをずっと守っていた。当然、デカルトもその1人である。
好美は一旦『念話』を切って3人で話し合う事にした。
好美「そうか・・・、昔からの習わしや言い伝えなら仕方ないね。」
ランバル「皆さんもお聞きしたでしょう?王様が仰った通りなんで私も元からあった建物を改装して店を出そうって考えたんです。」
守「成程ね、元々ある店を改装するとなると建設費用も浮くし景観も損なわないから一石二鳥って訳か。」
ランバル「やはり飲食店としては最大限に食材に拘りたいので費用を抑えたかったんです。」
ランバルの意見も分からなくもない、ただ問題はそれを利用しようとしている兄のロラーシュの方だ。
好美「さてと・・・、「暴徒の鱗」の人間としては店を出したいっていう意見もあったりするけどこのままではいけないだろうし・・・。」
守「一先ず、「あの人」の所に行ってみるか?」
それが1番だな・・・。