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恋人達はまだ諦めてなかった
-181 国王の性格と現状-
「やはりか」という言葉を頭に思い浮かべながら2人は店主の行動のおかしな点を指摘した、自分がやっとの思いで出そうとした店だと言うのにどうして兄の発言に合わせる必要があったのだろうか。
守「あの・・・、どうしてロラーシュ大臣を待つ必要があると言うんです?」
好美「そうですよ、この店の店主はランバルさんなんだからご自分で決めて開けてしまえば良いじゃないですか。」
確かにそうだ、洋食と拉麺のコラボを実現したいのなら店を開店させてから商品を考えてしまえばいい話だと思われるが。
ランバル「それがですね・・・、自分が店主をやらないと意味が無くなる、王様に何を言われるか分からないと言われましてね。」
好美「そんなの横暴ですよ、突然やってきて店の改装費用や調理器具等の手配は全てランバルさんがやったってのにいきなりやって来て自分が店主をやるだなんてふざけているにも程があります!!」
好美の言っている事は確かに正しい、しかし興奮しても話が前に進む訳では無いので一先ず守は恋人を制止する事にした。
守「好美、落ち着けよ。今お前がどうこう言ったって仕方が無いだろう。それで・・・、どうしてその場でお兄さんに何も言わなかったんですか?」
ランバル「言わなかった・・・、と言うより言えなかったんです。何分、自分の意見を言うだけ言ってすぐに出て行っちゃったんですから。」
おいおい守、さっきの店主の話をちゃんと聞いてなかったのかよと言いたいところだが今はやめておこう。1国の大臣により多くの者達が巻き込まれる予感がする重要な案件を話し合っているのだ、これは邪魔する訳にはいかない。
好美「一先ずデカルトさんに話を通すのが先決なんじゃない?1番の言い出しっぺは他でも無いあの人なんだからさ。」
ランバル「王様にそんなの言いづらいですよ、私はただのいち庶民なんですから。」
守「しかしこのままだとロラーシュ大臣の思うつぼですよ、何とか手を打って貰うべきだと思います。」
善は急げと言わんばかりに好美はデカルトに『念話』を飛ばして聞いてみる事にした、そう言えばここは異世界だったなと言いたかったがよく考えてみれば2人に接点なんてあったのだろうか。
好美「デカルトさんとは呑み友なのよ、パルライさんの紹介で一緒に呑む様になったの。」
どうやら「暴徒の鱗」の支店をダンラルタ王国に出すという話も王同士での呑みの席で決められた事の様だ、パルライが忘れていたのも無理は無い。正直、納得したくは無いが。
好美「そろそろ『念話』飛ばしても良い?あんたに構っている暇は無いんだけど。」
「暇は無い」ってお前ら、元々卒業旅行をしに来ていたんだろ?まぁいい、暇の塊みたいなもんじゃ無いかと言いたいが今はそっとしておくのが1番だよな。どうぞ、王様にご連絡下さいませ(ただ王様本人の都合も考えろよな)。
好美(念話)「デカルトさん、今ちょっと大丈夫ですか?」
デカルト(念話)「こ・・・、好美さん!!今はちょっと手が離せないんですよ、妻に部屋の掃除をやれとしつこく罵られましてね!!」
やはりいつの時代でも何処の世界でも女性は強い、ただ王様としての威厳は何処へやら。というか王城にいるんだから使用人にでも頼めば良いじゃ無いかと思ってしまうのは俺だけだろうか・・・、って聞こえてるみたいだな。
デカルト(念話)「私だってそうしたいんですが・・・。」
女性(念話)「何を言っているんですか、貴方の性格から考えれば使用人を頼ると自分で何もしようとしなくなるんだから早くしなさい!!お姉さん、ごめんなさいね。うちの人、ちょっと時間が掛かりますが少々お待ち頂けますか?」
デカルト(念話)「プーラ・・・、余計な事を言うんじゃない・・・、って痛ぇ!!」
どうやら国王がプーラと呼んだこの女性はデカルトの妻、つまりこのダンラルタ王国の王妃の様だ。妻に強く頬を抓られたデカルトは再び掃除機の電源を入れて掃除を再開した。
デカルト(念話)「すみません、すぐに終わらせますので!!」
プーラ(念話)「馬鹿言ってんじゃ無いわよ、あと12部屋あるんだから早くしなさい!!」
こんな調子で大丈夫なのだろうか