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旅館にあるボーリング場って・・・、流石は異世界・・・、か?
-172 無知と伝統-
内線で番頭から聞いた通りの場所へと向かうと、本当にボーリング場が広がっていた。2人の想像をはるかに超えて広い、チラッと見ただけだがそこには30レーン程が並んでいる様に見えた。それもそのはず、この旅館に繋がっているボーリング場は経営者は一緒なのだが旅館に泊まるお客さん以外にも楽しんで貰える様に一般開放されている様だ。しかも1ゲームまさかの200円(宿泊客は3ゲーム目まで無料)、日本のボーリング場ではありえない位の破格の値段で楽しむ事が出来る様だ。2人はただゆっくりと過ごせたらいいかと思っていただけなので無料の範囲で楽しんでみる事にした(と言うかここでもドケチを発揮するんだな)。
元の世界(日本)にあるボーリング場と同様に様々な重さのボールを取り揃えていたこのボーリング場は何処からどう見ても日本のボーリング場とは変わらなかった、ただ何故か着物を着た旅館の女将が受付に立っていた以外は・・・、人員不足か?
好美「そう言えばレンタルシューズは何処なのかな、それっぽい場所が全く見当たらないんだけど。」
どうやら守と好美は2人でボーリング場に来たのは初めてだが各々の友人達と何度か通っていた事があったらしい、それが故にボーリング場には必ずレンタルシューズが有る事を知っていたみたいだ。
守「受付にいるのって・・・、女将さんだよな・・・。一先ず聞いてみるか。」
何処からどう見てもその場にそぐわない恰好で受付に立つ女将の下へと駆け寄った2人、一先ず受付とシューズのレンタルを早く済ませたかった。
好美「ネイアさん、おはようございます。」
好美は先程までネイアが自分の事を裏で「化け物」と呼んでいた事を知らない。
ネイア「あらお2人さん、おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
ネイアは2人がとんでもない恰好で1晩ずっとリバーシをしていた事を知らない。
好美「2人で3ゲームだけ利用しようかと思っているんですけど、レーンは空いてますか?」
ネイア「大丈夫ですよ、今日は予約も入っていませんし今はお客様も少なめですから。」
確かにネイアの言う通り朝一だったからか、客はまだ少な目であった。
ネイア「取り敢えず・・・、私とじゃんけんしますか?」
守「な・・・、何でじゃんけん?」
全くもって訳が分からなかった2人、一先ず言われるがままに女将とじゃんけんをしてみる事に。ただまさかボーリング場で着物を着たエルフとじゃんけんをする事になるとは、勝ったらどうなるかが想像出来ない。
好美・ネイア「じゃーん、けーん・・・、ほい!!」
ネイアは気合をかなり入れてじゃんけんに臨んでいたが結果は好美の勝ちであった、ただ勝ったらどうなるかを未だ聞けていない。
ネイア「負けちゃいました、では午前中ですので2ゲーム無料とレンタルシューズ無料。そしてお好きなソフトドリンク1杯ずつ無料とさせて頂きます。」
好美「えっ、良いんですか?!」
ネイア「勿論です、ここにボーリング場を造った時からの伝統ですから。」
ただ好美達は宿泊客なので合計で5ゲームが無料になるが構わないんだろうか。
守「いくら何でもお得過ぎませんか?」
ネイア「ご心配なく、お客様あっての当館ですので。」
因みに午後からは無料になるのが1ゲームに減ってしまうが午前中と違ってソフトドリンク以外にもアルコールまでもが1杯無料で提供される様だ、それが故にこの受付に立つ従業員達は責任感が重くのしかかっていた。
好美「何か・・・、勝っちゃってすみません・・・。」
好美の言葉を聞いた瞬間、一気に表情が暗くなったネイア。そうなるならこんなサービスなんてやめてしまえば良いのに・・・。
ネイア「いえ・・・、お気になさらず・・・。当館の伝統ですから・・・。」
おいおい、後で何かあんのかよ・・・。