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また今回も、デルアはナルリスに土下座をするのだろうか。
-⑰ 試作品は出来る?-
好美が本鮪を買ってから数週間後、つまり現在なのだが、ビルの1番下の拉麵屋で先日と同じ3人が頭を抱える中、副店長のデルアが一大決心をした。
デルア「仕方がない、また兄貴を頼るか。」
デルアはため息をつきながら『念話』を飛ばした、先日の鮪の件があるので少し抵抗してしまうからだ。
デルア(念話)「兄貴、ちょっと良いか?」
ナルリス(念話)「また好美ちゃんが馬鹿みたいな買い物したのか?俺に押し付けるの本当に勘弁して欲しいんだが・・・。一応、食材は何か聞いておこうか。」
ただ2人の『念話』は好美にがっつりと聞こえていたらしい、噂の本人から少し強めの口調での『念話』が飛んで来た。
好美(念話)「何?2人して私に文句でもある訳?」
吸血鬼たちは「鬼の好美」の事を知っているので慎重に言葉を選んで答えた。
デルア(念話)「何言ってんの、好美ちゃん。よく言う「お裾分け」ってやつだよ。」
ナルリス(念話)「いやぁ、いつも悪いなと思ってさ。それにしても今回もこんなに貰って良いのかい?」
ギャンブルで大勝ちしたからか、気持ちが大きくなっている様子の好美。
好美(念話)「良いの良いの、何なら追加で持って行こうか?」
これ以上押し付けるのは流石に図々しい様な、そうでも無い様な・・・。
デルア(念話)「もう大丈夫だよな、兄貴。普段は光さんの作った野菜を使っているから多すぎる位じゃないのか?」
ナルリス(念話)「実は今、試作品を作っている途中でさ。量的にはこれ位が丁度良いか多い位だよ。いつも本当にありがとうね。」
嘘だ、店が忙しくて試作なんて作っている場合ではない。
好美(念話)「何?楽しみなんだけど。」
まさか食いついて来るとは思わなかったので少し焦りだすナルリス。
ナルリス(念話)「最近、光の畑でキャベツがなかなか採れなくてね。ロールキャベツならぬロール白菜で行こうと思っていたんだ。」
これは半分が本当で半分は嘘、確かに最近パン屋の仕事が忙しくて光がなかなか収穫の作業をする事が出来ないのは事実だがロール白菜なんて考えてもいない。
そんなレストランのオーナーに想定外の事が起きた。
好美「ねぇ、私も食べて良い?」
そう、好美が『瞬間移動』で店に来たのだ。
ナルリス「ごめん、今ここには店の料理分の材料しか置いてなくてね。それに試作は1人で行う事が多いんだ。」
また嘘が出た、ナルリスが試作を作る時はいつも横に光がいた。野菜を作った本人が納得しないと店には出せないのだ。しかし折角だからとオーナーは気を利かせようとした。
ナルリス「でも今、丁度暇だから一人前作ってみるよ。」
ナルリスは即興で作ろうと側にある鍋の蓋を開けた、しかし・・・。
ナルリス「あ・・・。」
ナルリスは空いた口が塞がらなかった、ベースとなるブイヨンが無かったのだ。という訳でいつも通り副店長である真希子に頼むことに。
ナルリス「真希子さん、またブイヨンが無くなったのでお願い出来ませんか?」
真希子「ブイヨンね、ロッカーから取って来るからちょっと待っててね。」
ナルリス「分かりました・・・。でも・・・、何でロッカーなんだろう・・・。」
ナルリスは未だにブイヨンの真実を知らない。