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守は今までの人生で自分に起きた奇跡について考えていた。
-166 酒の肴-
守はゆっくりとビールを呑みながらある事を考えていた、2人の出逢いについてだ。
守「もしもあの時ボールペンが同時に落ちなかったら、いや「松龍」の前で目が合わなかったらどうなっていただろうな・・・。」
好美「多分ずっと赤の他人のままだったと思うよ、若しくはランチを食べる学生と店の店員って感じ?」
確かに好美が言っている事は間違っていない、2人は元々同じ大学だったが全く別の学部学科だったので十分あり得る話だったのだ。
守「きっと正と桃ちゃんが出逢う事も無かったかもな、安物のボールペンだったけど値段以上の価値があったよな。」
好美「「値段以上」って・・・、確かにそうだけど私達の出逢いって決してお金じゃ買えない物だったと思うな。」
おいおい、ビール呑みながら温泉に入ってたから酔っちまったのか?恋人のいない俺をほったらかしにするのはどうかと思うんだが?
好美「ねぇ・・・、キスしない?」
好美な、今更改めて聞く事でも無いだろう?学生時代は他の人がいる前で堂々とディープキスしてただろうが。
守「う・・・、うん・・・。」
何で守も緊張してんだよ、車ん中でもキスしてたくせに顔を赤くしてんじゃねぇ。
好美「好きだよ・・・、守・・・。」
守「俺も・・・。」
本当に始めちゃったよ・・・、もう見とれんわ・・・。まぁ他人が見て良い物でも無いんだがね。長いな・・・、この俺を蔑ろにしてるみたいだけど結構長いな・・・。もう終わったか?・・・って、まだしてんのかい!!と言うか俺ずっと独り言言ってんな、何か虚しくなって来たわ・・・。
好美「何かお湯以上に熱くなっちゃったね、ビールで冷やす?」
守「そうだな、落ち着こうか。」
冷えたビールで改めて熱を冷まそうとした2人、ただ瓶の中はもう既に空だった。
好美「大丈夫大丈夫、『アイテムボックス』から取り出すから。」
そう言えば好美って『アイテムボックス』の中に酒を常備してたんだっけ、こう言う時に能力って役に立つもんだな。全く・・・、羨ましいったらありゃしないぜ。
守「流石だな、しかも冷え冷えのままだよ。」
好美「『アイテムボックス』を舐めちゃ駄目よ、容量が無限ってだけの能力じゃないんだから。」
そう言えばここ異世界だったな、日本の様な旅館に2人が止まっているもんだからすっかり忘れていたわ。
と言うか昔、俺が死んだじいちゃんと飯食いに行った時にばあちゃんのバッグの中に缶ビールを忍ばせてこっそり持ち込んでた事あったっけな・・・(本当はやっちゃ駄目ですよ)。今だから言えるカミングアウトってやつか。
好美「あんたのじいちゃんって結構やんちゃだったのね、もしかしたらあんたも受け継いだんじゃ無いの?」
チィッ・・・、聞こえてたのかよ。受け継いでる訳無いだろう?俺ビビリだからんな事出来るか!!
好美「ねぇ、お酒のつまみにするからおじいちゃんの伝説覚えていたら教えてくれない?」
じいちゃんの伝説ね・・・、そう言えば回転寿司屋で他のテーブルの人が注文してたフライドポテトをレーンに乗ってた状態で1本くすねて食ってた事かな・・・。
好美「それ伝説と言うよりやっちゃ駄目なやつじゃん・・・。」
だからさっきも言っただろ、「今だから言えるカミングアウト」だってよ・・・。
これも楽しい思い出かな。