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ちょっとした「恋人達の時間」を過ごす2人。
-161 人種は関係ないの!!-
カペンが知らないフリをする中でずっと口づけを交わしていた2人はゆっくりと離れて深呼吸した、ずっと我慢をして溜まっていた分の深さのキスだったからかシートにもたれた恋人達の口元には涎がまだ残っていたが2人は至って落ち着いていた。
好美「チェックインの時間が近いから早く行こうか・・・。」
原因は好美自身ではあったが言っている事は真実だったので急ぎ荷物を降ろして館内へと走る2人、ただ駐車場での様子をずっと伺っていたのか旅館の従業員達が入り口の自動ドア付近で待ち構えていた。
従業員達「いらっしゃいませ、お待ち致しておりました。」
2人に向かって頭を下げる従業員達は種族も多種多様で、人種より各々の能力に合わせた仕事が割り振られていたのが見て取れた。誰から見ても良心的な職場だという事がその場ではっきりと分かる、ここは人種差別など全くなく様々な人々がお手本にすべきだと思われる職場であった。
そんな中、2人を出迎えていた従業員達がいた玄関の奥にある受付で笑顔を見せる男性がいた。どうやら電話での対応をしてくれたのはこの人の様だ。
男性「いらっしゃいませ、宝田様ですね?お待ち致しておりました。」
好美「先程言った通り2名なんですけど、お部屋は大丈夫そうですか?」
男性「ご安心ください、ご要望通り露天風呂付のお部屋をご用意致しました。ご夕食もご期待頂ければと思います。」
実は好美が旅館に電話をする30分前の事、同じ部屋を予約していた2人組の客が仕事の都合によりキャンセルをしてきたのだった。その客達は特別コースでの食事も併せて予約をしてきていたので部屋はそのまま他の客に回せば良いが、食事に関してはキャンセルとなった事で厨房の者達が食材をどうしようかと思い悩んでいた所であったのだ。
男性「寧ろ我々も助かっているんです、先程のお電話で好美様がご予約されようとしていたお食事プランは3日前までのご予約をお願いしている物なのですが丁度同様のプランをご予約されていたお客様がキャンセルされたんで助かりますよ。そのお礼と言ってはなんですが、我々の気持ち程度の割引をさせて頂きますので。」
好美「良いんですか?ついさっき飛び込みで無理に予約したのに受けて貰った上に割引して貰えるだなんて。」
男性「勿論です、我々からしても願ったり叶ったりですよ。」
丁寧な対応をする男性の奥から女性の声がした、その透き通る様な声から本人の綺麗さが伺える気がしたのは俺だけではなく守もだった様だ。
女性「あんたー、お客さんかい?」
声がした数秒後、受付の奥から桜色の着物を着た旅館の女将らしきエルフの女性が出て来た。守がその人に見とれていたのは言うまでもない、それを即座に読み取った好美は恋人の二の腕を強く抓った。
守「いでででで・・・、何だよ・・・。」
好美「何よ、自分が原因なんでしょ。」
守「仕方ないだろ、女将さんが綺麗だったんだから。」
女将は2人の様子を見て笑っていた、これはどんな人種であろうと関係ない様だ。
女将「嫌ですよ、「綺麗だ」なんて。褒めても何も出ませんって。(小声で)後でついさっき仕入れた良さげな瓶ビールをサービスしますね。」
好美「流石女将さん、綺麗な方に出会えて嬉しいです。」
好美が現金な性格を露わにする中で女将は可能な限りの小声で話していたがどうやら受付の男性には丸聞こえになっていたらしく、男性は嫌な予感がしていた様だ。
男性「母ちゃん・・・、それって俺の晩酌用・・・。」
女将「何だい・・・、私に逆らう気かい?それにお客様の前では「女将さん」と呼べと何度言ったら分かるんだい。」
どうやら男性は女将の尻に敷かれているらしい、世に聞く「恐妻家」という奴だろうか。
守「お・・・、おい・・・。冗談でもそんな事言っちゃ駄目だって。」
好美「そうよ、いくら何でも女将さんに失礼じゃ無いのよ!!」
女将「お客様・・・、全部聞こえていますけど・・・。」
男性「アハハ・・・、はぁ~・・・。」
どうなる事やら・・・。




