158
頼むからがっかりさせないでくれよ・・・。
-158 やっとですか?-
好美が結構な高額をボートレースにつぎ込み、中盤で自分の負けが確定したので愕然としていた横で守は地道に宿を探していた。うん、偉い偉い。
守「おいおい、褒められても・・・、嬉しくなる年代じゃ・・・、ねぇぞ。」
そう言っておいて顔が赤くなってんぞ、素直になったら良いじゃねぇかよ。
好美「もう・・・、人の彼氏をからかわないでよ。あれよ、もう夕方になりかけているから日が傾いてそう見えるだけよ。」
えっ?!もう夕方なの?!お前らどうすんだよ、まだ泊まる所決まってねぇんだぞ!!
好美「分かってるよ、今度はちゃんと探すから許してよ。」
分かったよ・・・、こっちも2人きりで行き当たりばったりの旅行なのに言い過ぎて悪かったな。
好美「良いよ、私達の事をずっと気にかけてくれていたんでしょ?1つの優しさとして捉えていたからどっちかと言うと感謝してるし。」
守「それに、お前がいなかったらこうやって好美と旅行になんて行けなかったからな。」
お前らな・・・、何改まった様に言ってんだよ。取り敢えず早く宿探・・・、そうや・・・。
好美「照れてるね、ちょっと優しさ出して来てんじゃん。」
守「お前も人の事言えない奴だな、素直に喜べや。」
違うわ、こういうの慣れて無いからどう返せば良いのか分からないだけだよ。
好美「そう言って・・・、照れてるくせに。このこのー。」
何もない所を人差し指で優しくつんつんと突く仕草をする好美、改めて言うが俺の姿は誰にも見えないので致し方無いのだ。
俺の事は良いから、宿はどうするんだ?さっきからこればかり言ってるけど、結構重要な問題だからな。一先ず洋風のホテルが良いか、和風の旅館が良いか相談したらどうだ?
守「そうだな・・・、好美はどっちが良い?」
好美「やっぱり疲れた体を癒したいから温泉付きの旅館かな、各部屋に露天風呂付の所があったらそこに行きたい。」
普段から家にある露天風呂に入っているのに旅行先でも露天風呂に拘るとは、好美は「よっぽど(若しくは超)」が付く程の温泉好きと言える。と言うかお前、酒呑んでボートしてただけだから別に疲れている訳じゃ無いだろ?
好美「誰が私って言ったのよ、ずっと運転してくれてる守の事よ。」
あらま、これは大変失礼致しました。彼氏想いの良い彼女じゃねぇか、羨ましいぞ。
守「何言ってんだよ、羨ましがっても決して誰にもやらねぇからな。」
分かってるよ、でも8年も彼女がいない俺の立場からしたらこういった台詞も言いたくなるのお前には分からねぇのか?
守「分かるかよ、俺には好美がいるもん。」
好美「えへへ・・・。」
くぅーっ・・・、いくら俺の妄想内の世界だという事を良い事に好き勝手しやがって・・・。
守「まぁ、悔しがっている奴は放っといてあそこにあるのはどうだ?」
運転しながら数百メートル先にあるこじゃれた旅館らしき建物を指差した守、MT車だってのによくやるよ。
好美「良いじゃん、ちょっと調べてみるね。建物の名前分かる?」
バルファイ王国(と言うよりこの世界)に和風の旅館があるとは想像もしていなかったのでそれらしき建物を見つけて少し驚愕する恋人達、果たして探している宿なのだろうか。
守「名前ね・・・、「竜騎士の館」だってさ・・・。」
好美「あれ?何処かで聞いた事が有る様な・・・、ちょっと調べてみるね。」
もしかして「あの2人」に関係が・・・?