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カペンは何かを隠していたのだろうか・・・。
-154 学生時代の裏側-
カペンの心中を未だに理解出来ない2人は本人(?)が話しやすい様にじわじわと会話を運んで行く事にした、直接的に聞いてもきっと理由を聞く事など出来ない事は最初から分かっていたからだ。一先ず懐かしい思い出を語る事でカペンが重い口を開く(?)きっかけになってくれれば・・・、なんて思ったりもしていた。
おいおい、そんなに世の中甘くないと思うぞ。そんな作戦での誘導尋問が上手く行くとでも思っているのか?
好美「そう言えば守は日本にいた時、私が松龍でのバイトで会えない時はどうしてたの?」
大学で毎日の様に会っていたのは良いが、やはりお互いが違う学部学科に通っていたが故に授業の時間割やバイトのシフトの関係で会えない時があってもおかしくはなかった。ただ当時の好美は心から守の事を信用していたので問題となる行動はしないだろうとあまり詮索しない様にしていたのだが、自分と会っていない時に何をしていたのかを全く気にしていなかった訳では無かった様だ。今日この日をいい機会だと踏んだ好美は時間だけはたっぷりあると思ったので思い切って尋ねてみる事にした。
守「そりゃあ・・・、バイトしてたよ。」
好美「でもさ、私がバイトしてた時間帯全てに守もバイトしてたとは限らないでしょ。」
確かに好美の台詞は意表を突いていた、好美が午前授業だけで昼からバイトに入っていた時に守がランチを食べに行っていた事があった上によっぽど金に困ったフリーターでなければそこまでかつかつにシフトに入る事は無かったはずだ。
これは微かな記憶だが2人が付き合い始めた当時、好美へのプレゼント代や自動車教習所代等を稼ぐ為にバイトに励んではいたが好美との時間をちゃんと取ろうと努力はしていた様だ。
守「正と学内の図書館で勉強してたんだよ、やっぱりそれなりに余復習してなかったら大学の授業について行けなかったらな。」
確かに高校時代までの物と違ってより専門的な内容となった大学の授業について行くには結構大変なものだ、それなりにノートをまとめたり配られた資料を見やすくするのも至難の業だったと言っても過言では無い。その事は友人の鹿野瀬 桃を通じて好美も聞いていたと思われるが・・・?
好美「で・・・、でも私からしたら授業やバイトが無い時は暇そうにしていた印象があったもん。でないとあんなに大盛りのランチを食べれる程の時間の余裕なんて無かったはずだったはずだよ。」
守「そこはやりくりして何とかしてたんだよ、でないとずっと動いているとストレスが溜まって授業どころじゃなくなっちゃうからな。」
「人生最大の夏休み」とも言われる学生時代、やはり守も本人なりに楽しむ時間が欲しかったのだろう。
守のその気持ちは分からなくも無いがずっとバイトや授業に明け暮れてた訳じゃ無いだろ、好美はきっと自分の知らなかった所でお前が何をしてたのかを聞きたいんだと思うぞ。
守「分かったよ・・・、別に黙っているつもりも無かったしいずれは好美にも言わないといけないと思っていたからな。でも・・・。」
好美「「でも」・・・、何?」
守には好美にどうしても話し辛い理由があった、元の世界で聞いた好美のとある台詞を思い出したからだ。
守「俺も母ちゃんと・・・、山で走ってたからさ・・・。」
好美「・・・!?」
守は転生前、自宅横の駐車場(にしていた空き地)での好美の発言を忘れた訳では無かった。一応好美がスルサーティーに乗って走り出した真希子を目撃した直後に事情を暴露したが、やはり目の前の事実を受け止めきれていなかったという気持ちが心の片隅にあったのではないかと察していたので全てを話す事に抵抗があった様だ。
先程の台詞を言った時、守は少し困惑していた。きっと無理矢理車から降りて逃げられてしまう、目の前から好美がいなくなってしまう・・・。
守は兎に角怖かった、また好美と離れ離れになるのが怖かった。この世界には真帆がいる訳でも無い、また1人になるのではないかと怖くなってしまった。
不安になる守をよそに、好美の答えは意外な物だった。
好美「何だ、そんな事?真希子さんもこっちにいるのに私が知らないとでも思ったの?」
守「えっ・・・?」
そう、実は好美は守の転生前に真希子から息子(守)との思い出話を聞いていたのだ。
やっぱり・・・、そうだと思った・・・。




