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食事タイム、旅行の醍醐味の1つのはずなんだが・・・。
-143 恋人の過去とイメージ-
食べたい物をすぐさま決めた好美の目の前で未だにメニューと睨めっこしていた守は「折角なら」と思い切った注文をした、超余談だが俺(作者)は牛丼屋で牛丼を頼まない派の人間である。
守「俺はこの「牛豚すき焼きセット」で。」
数分後、この店で一番大きいサイズの丼に山盛りとなった牛丼が運ばれて好美の前に到着した。いやいや、これ絶対腹八分目じゃねぇだろ!!
好美「何よ、「腹八分目」にも個人差があるもんでしょ!!」
「薬やサプリメントの効能じゃねぇだろ!!」とツッコミを入れたくなる発言だったが、よく考えてみれば間違った事を言っていないので今はやめておこう。
守「結構なサイズだな、本当に食えんのか?」
そうだぞ、彼氏に心配させんじゃねぇ。今からでもいいからお椀や取り皿を貰って分けたらどう・・・、ってもう半分食ってんじゃねぇか・・・。侮れない奴め・・・。
好美「私の体の事は私が一番分かってんの、胃袋の大きさも同様のはずだよ。」
「病気かいな!!」と言いたいけど楽しい食事タイムを台無しにするのは良くないのでそっとしておくのが1番だな、1歩引くのも大事だ・・・。
それにしてもどうして転生者を中心にこの世界に住む女性達は大食いや早食い、そして大酒吞みが多いのかね。ハッキリ言ってビクターも想像してなかっただろうに・・・。
好美「別に良いでしょ、大好きの物はどれだけあっても足りない位なの。」
確かに好美の発言を否定する事は出来ない、実際俺も京都発祥の某中華料理屋チェーンの焼き飯が大好物なので永遠に食べ続ける事が出来る自信がある。大学に通っていた時、毎週1度は必ず食べに行っていたが「大盛り」で注文していたのにも関わらず、「会計」後に心中で「もっと欲しい」と何度も嘆きながら帰りの列車に乗る為に駅へと向かった事を思い出した。
好美「それで?まだ来ないみたいだけど守は何を頼んでたんだっけ?」
メニューを指差しながらプレゼンテーションする守。
守「ほらこれだよ、「牛豚すき焼きセット」ってやつ。牛と豚両方楽しめるなんて贅沢じゃない?」
元の世界にいた頃、すき焼きと言えば豚肉だった守にとって牛が入った物はまさに「折角ならこれを食べたい」と言える逸品であった様だ。
守「思い出すな・・・、母ちゃんが少ないパート代を数か月かけて貯金して作ってくれてた「豚すき焼き」。あれ、何故か美味かったんだ・・・。」
きっと当時は警察からの捜査への協力金や貝塚財閥における持ち株での配当に気付かれない為にわざと贅沢品を避けていた真希子、しかし息子にも出来るだけ良い物を食べさせてあげたいという親心から数か月に1度だけ「豚すき焼き」を作っていた様だ(と言うより本人が酒の肴にしたかったので作っていたと思われる)。
好美「でもさ、豚肉って割り下や生卵に合う訳?」
守や真希子の苦労話を一気に台無しにする発言をしてしまった好美、ただ豚肉の脂の甘みが好きだった守には豚すき焼きも十分な贅沢品なのでその味を共有させる為、店員から受け取った小皿へと少量を移して生卵を絡めて手渡した。
守「ど・・・、どうかな・・・。」
自分にとっての好物の1つの味が恋人の口に合うか心配だった守、ただオーナーとして拉麵屋を経営している好美は味にうるさいイメージがあったがどうだろうか・・・。
好美「うん・・・、意外といけるね。」
今思えば今の今まで庶民的な牛丼をバクバク食べていたので舌だけは守とそんなに変わらない可能性が浮上してきた、何となく一安心。
好美「ちょっと・・・、私どんなイメージ持たれてたのよ・・・。」
好美のイメージ?「グルメな大食い」、うん。