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おいおい守、安心して良いんだよな・・・。
-140 暫く見ない間の変化-
少し嫌嫌な雰囲気を醸し出していた好美を含めた恋人達が渋々車に乗り込んだ後、守は旅館の駐車場から出ようと元の世界にいた頃の記憶と感覚を頼りにギアを「2」に入れてエンジンを蒸かした。『アイテムボックス』内でほったらかしにして久しく乗っていなかったからか、少々興奮気味になっていた事で母・真希子が持つ走り屋の血が騒いでいたのが見て取れた。
好美「ちょ・・・、ちょっと・・・。大丈夫な訳?」
守「当たり前だろ、これは俺の車だぞ。」
好美は元の世界にいた頃のデートで何度もこの車に乗って出かけていたが故に大丈夫だと信じたかったが、やはりブランクが大きいからか多少ではあるが不安な気持ちがあった様で本当にこのまま卒業旅行などに出掛けても良いのだろうかと心配になってしまうのは俺も同感であった。それにしても守、久々のMT車だからって蒸かし過ぎじゃねぇのか?
守「これ位で無いと発進に失敗するかも知れないだろうがよ、お前だって分かるだろ?」
確かに気持ちは分からなくもない、俺も家の軽トラ等に乗る際には多少強めに蒸かして自分を安心させていたからだ。ただ、守の愛車(?)は大丈夫なのだろうか・・・。
守「バ・・・、馬鹿野郎!!(?)を付けんじゃねぇよ、れっきとした俺の愛車だっちゅうの!!」
お前な、「だっちゅうの」なんて久しぶりに聞いたぞ。それにそいつを愛車って言うなら早く発車させろって。
守「分かってるよ、うっせぇな・・・。」
久々に起動するエンジンを温める為か、改めて強くアクセルを踏み込んだ守。
エンジン「ブオンブオンブオン、ブオーーーーン!!ブオーーーーン!!」
守の愛車はけたたましい排気音を奏でた後、持ち主がクラッチを上げた瞬間・・・。
エンジン「プスン・・・。」
そう、MT車ではよくある事だが半クラッチに失敗してエンストしたのだ。何ともかっこ悪くて気まずい状況で俺が守の立場なら耐え切れない、CVT車を買って正解だったと俺は胸を撫でおろすばかりであった。
好美「もう・・・、先が思いやられるよ・・・。」
守「大丈夫だって、久々だからそうなっただけで問題無いから。」
ため息をつく恋人の隣で焦りの表情を隠せない守を更に追い込む様に何処からか声が飛び込んで来た、車内には2人しかいなかったはずだが・・・?
声「ホンマでっせ、あんた免許取り直した方がええんとちゃいまっか?」
好美「守、今の声何よ!!」
突然の声に焦っているのは好美だけでは無かった様だ、持ち主の守がより一層焦りの表情を見せていたのだ。
守「俺も知るかよ、カーナビの音声っぽくは無かったし何で似非関西弁なんだよ!!きっと気の所為だ、早く行こう。」
声「「似非関西弁」でも「気の所為」でもありまへんで、今までせまっ苦しい所におらされてた分好きなだけ喋らせて貰いますからな。」
守「こっちの声が聞こえているのかよ、どうなってんだよ!!」
声「ほらほうでっしゃろ、ワイの中におるんやさかいに聞こえて当然ですわ!!」
好美「「この人」の中に・・・?まさか・・・。」
その「まさか」である、嫌な予感がした守は何となくで質問してみた。
守「お前、まさかカペンか?!」
カペン「今更何を言ってまんねん、ずっとアピールしてまっしゃろ!!」
守の嫌な予感が的中した様だ、流石なんでもありの世界だ。ただ、どうして・・・?
好美「守、「この人」をこの世界仕様にする為に誰の元へ持って行ったの?」
守「ちゃんと珠洲田自動車に持って行ったよ、光姉さんと一緒に。」
好美「だからか、プルちゃんと同じ似非関西弁を話している訳ね・・・。」
光の魔力恐るべし・・・、と言うか2人きりの卒業旅行に邪魔な存在になってしまった様な・・・。




