⑭
どうやら守はやらかしてしまった様だ。
-⑭ 弱みを握る者が勝ち-
好美が守の代わりに『瞬間移動』で鮭の切り身を手に入れて来たのでその場は何とか治まったが、守本人には別の問題が浮上していた。
守「やらかしちまった・・・。」
好美「守、私味噌汁の具材は豆腐と若布、あと油揚げが良いな。」
守「お・・・、おう・・・。」
ただ具材以前の問題が発生していた、そう、味噌を買うのを忘れていたのである。
守「どうしよう・・・。」
守は自分が買って来た物を含めて冷蔵庫の中を確認して好美にある事を確認しようとしたが時すでに遅し。
好美「やっぱり味噌汁と漬物は必須だよね、私カリカリに焼けた鮭の皮が好きなんだ。」
守「聞けない・・・、今更洋食メニューにしても良いかなんて絶対に聞けない・・・。」
まずいと思った守は急いで街の中心地にある雑貨屋へと向かった、店主であるゲオルは守の事情の何もかもを知っていたらしい。
ゲオル「あはは・・・、好美ちゃんは言い出したら聞きませんからね。私で良かったらご協力させて下さい。」
守「すみません、助かります。」
ゲオル「宜しければ浅漬けにしてみてはいかがでしょうか、先程露店で白菜が安くなってましたよ。」
守「そうですね、じゃあ浅漬けの素と漬物の容器を頂けますか?」
ゲオル「ふふふ・・・、その言葉を待ってました。」
守「流石店長さん、商売上手ですね。」
上手く雑貨屋の店長に誘導された守は購入した浅漬けの素と容器を持って野菜を売る露店へと向かった、元の世界で見た事のある野菜ばかりが並ぶ露店を経営していたのはまさかの・・・。
守「店長!!」
そう、守が働いている肉屋の店主・ケデールだった。
ケデール「おはよう、ここで会うとは珍しいじゃねぇか。」
守「いや、それよりここで何しているんですか?」
ケデール「肉屋だけじゃ食費や生活費が賄えなくてな。」
後頭部を搔きながら笑うケデールにジト目で答える守。
守「店長、嘘言わないで下さい。それじゃオオカミ少年ですよ。」
ケデール「おっ、お前上手い事言うな。」
ケデール本人がライカンスロープ(狼男)という事にかけたのか、それとも何も知らず自然に出た言葉なのか。
ただ、守は目の前の上司の真実を知っていたのでその事を問い詰めてみる事に。
守「知っているんですよ、この前競馬で今月の小遣いと食費が全部飛んでった事。」
ケデール「げっ・・・。」
そう、ケデールは先日近くの競馬場で行われた重賞レースで食費と小遣い合わせて総額35万円を1頭の馬に賭けて負けてしまっていた。大袈裟にリアクションしていたので周囲の者達が皆記憶していたそうだ。
ケデール「こりゃ守に嘘は付けないな、頼むから嫁には黙っておいてくれ。」
世界問わずギャンブル好きにはよくある事だ、賭けた事が奥さんにバレると何があるか分からない。
守「ただで黙ってろと?」
守も譲る気は無かった、口座に1京円あるとしてもやはり節約は必須事項だ。
ケデール「分かったよ・・・、白菜と胡瓜安くしてやるよ。」
守「そう来なくっちゃ、じゃあ白菜3玉と胡瓜10本で。(念話)これで大丈夫だよな。」
好美(念話)「守!!安い内にもっと買っておいて!!店にあるやつ全部!!」
買うのは良いが腐らせるだけの気がする守。