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どうやったら一晩で24万9800円も使えるのだろうか・・・。
-138 重要な要素-
好美はさらりと支払いを済ませたものの、やはりドケチの血が騒いだ様ですぐさま収入印紙の貼りつけられた領収証兼レシート(明細)を確認した。1人1泊78000円の宿に2人で宿泊したにはどう考えても高すぎる、何をそんなに消費したと言うのだろうか(と言っても大体は想像がついてしまうのだが)。
好美「何よあんた、今失礼な事を考えていなかった?」
いや、そんな事無いですよ(まずいまずい)。お気になさらないで下さいませ、やはりマンション等の経営者なのでお金に関してはシビアなんでしょう?
好美「でもさ、宿泊代以外に心当たりがないんだよね。露天風呂は客室に標準装備だったからお金はかかって無いはずだし、ビールもそんなに・・・。」
ほぉ、「そんなに・・・」ですか。守、今すぐ領収証を回収せんかい。
守「確かに2人での宿泊代が15万6000円だから差額の9万3800円が何の料金なんか気になるよな、食事をランクアップさせた訳じゃ無いしずっと客室にいたからカラオケをした訳じゃ無い上に卓球は無料って書いてあったからな・・・。何だろう・・・。」
守、わざとらしいぞ。「アレ」しか無いだろうがよ、「アレ」しか!!視線を下の方にパーンせんかい、パーン・・・。
守「えっと・・・、下の方ね・・・。」
守が、目線を明細の下の方にパーンと下げてみると「ビール代」と言う項目が目立っていた。そりゃあそうだ、「ビール代」が93800円なんだからな。と言うかお前ら、レストランで散々呑んだ後なのに旅館中にあったビールを呑みつくすなんて馬鹿じゃねぇの!!
好美「良いじゃないの、守の話を肴にずっと呑んでいたんだから。」
守の壮絶な過去の話は好美にとって絶好の酒の肴になっていた様だ、守や結愛は結構辛い想いをしたはずなのにまさかのおつまみ扱いとは・・・。いいか好美、お前も泣いてたんだから決して笑い話じゃなかった事を忘れんじゃねぇぞ。
好美「分かってるよ、それより早く行こうよ!!」
守「そうだな、でもここからどうやって行こうか。」
旅館の玄関前で立ち尽くす2人は旅行に行く事に関して絶対必要な要素となる物を考えていなかった、そう、「移動手段」である。昨日は少し冷ましてから歩いてこの旅館に来たものの、2人共呑んでいた事には変わらない(この世界でも飲酒運転は重罪です)。確か守ってこの世界の車を持って無かったはずな上に好美に至っては免許すら持っていない、と言うかいっその事『瞬間移動』を使えば良いんじゃねぇのか?
好美「駄目だよ、折角の旅行なんだから『瞬間移動』なんて使ったら楽しくないじゃない。」
守「そうだよな、ゆっくり行きたいよな。ちょっと待ってろよ、確か・・・。」
突然『アイテムボックス』に上半身を突っ込んだ守は必死に何かを引っ張り出そうと苦戦していた、かなりの重量の物を取り出そうとしている様だが何処か見覚えのある光景な気がするのは俺だけだろうか。
好美「ん?何してんの?」
守「ちょっと待ってくれ、確か日本からこれを持って来たはずなんだよ。あったあった、よいしょっと・・・。」
「ズシーン!!」という音を立てながら守が取り出した物が土埃を上げて地上に降り立った、ただお前も美麗みたいに『転送』で持ってくれば良かったんじゃねぇのか?わざわざ『アイテムボックス』に入れなくても良いじゃねぇか、お前は渚か!!
守「えっ?!渚おばさんもこんな事してたの、びっくりだな・・・。」
好美「それより、これって・・・。」
空いた口が塞がらない好美の前に現れたのは守が元の世界で乗っていた「カペン」だった、勿論母・真希子拘りの6MTや走り屋仕様なのはそのまま残っている。ただ、いつの間にかこの世界仕様の「クリスタル」が搭載されていた。しかし、好美の心中には別の疑問が浮上していた。
好美「ねぇ、何でマンションの駐車場に止めないで『アイテムボックス』に入れていた訳?軽だけど結構大きいからやめといた方が良いんじゃないの?」
守「うん、好美に言うの忘れてた。」
ただただ、守が馬鹿でした。