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着替えるのも面倒になっていた2人。
-135 昔話-
番頭に浴衣を返すのが面倒になった2人は銭湯から数歩程度の距離の所にあり、同じ者が経営する旅館へと向かった、ここなら今自分達が着ている浴衣のままでも行動できるし『アイテムボックス』や『転送』を使えば脱衣所の衣服は何とかなるはずだ。好美達がロビーに声を掛けた時には殆どの客室が予約客を中心に埋まっていたが、数部屋程空室があったのでその1部屋に泊まる事にした。
受付「あれ?好美ちゃんじゃない、今日は夜勤じゃないの?」
好美「有給取ったのよ、ちょっと色々あってね。」
話の流れからして、どうやら2人は知り合いの様だ。
受付「あら?もしかしてそちらが噂の彼氏君かしら。2人で1部屋だなんて羨ましいじゃない、ウフフ・・・。」
好美「何変な想像してくれてんのよ、昔から全然変わらないんだから・・・。」
受付「それにしてもすぐ近く(?)なのに帰らなくて良いの?それに好美ちゃんの家に比べたらうちの部屋だなんて月とスッポンよ。」
「月とスッポン」なんて言葉をこの世界のみで生きているはずの受付の者が何処で覚えたのだろうか、多分転生者達の影響と思われるが。
好美「たまには良いかなって思っただけよ、ほら、よくある気分転換ってやつ。」
それに酒に酔った男女2人が月夜の照らす街の中心を歩いていると正直言って目立ってしまう、まぁ2人の場合酔いは殆ど冷めていたし『瞬間移動』や『状態異常無効』を使えば何とかなるが、酒の影響でまだ頭がまともに回らなかった様だ。
ロビーでの記帳を終えて2人は案内された客室へと入った、この旅館は全客室に露天風呂が付いており、備え付けの冷蔵庫の中にはビールやジュースが数本ずつ常備品として入っていた。
好美達は先程の話の続きをする為にまたもやビール片手に露天風呂へと入って行った、結局宿に泊まって入るなら銭湯は行かずに最初からここに来れば良かったんじゃないか。また折角夜風や牛乳でクールダウンを行い、酔いを醒ましたというのにまた呑みながら入るなんてのぼせる率が高くなっている様な気がするのは俺だけだろうか(こちらでも健全な物語進行の為に水着等を着用してもらっています)。
好美「良いじゃないの、元々ここに泊まる予定じゃ無かったんだし「旅は道連れ」って言うでしょ。」
あの・・・、その言葉そう言う意味で使う物じゃないと思うんですけど。まぁ、良いか。
取り敢えず守、あまり乗り気じゃ無いだろうけど「あの事」を話してやれよ。
守「分かってるよ、じゃあ何処から話せば良いかな・・・。」
守は思い出せる限りの事を好美に話そうとしたが実は少し抵抗していた、何故なら「最悪の高校時代」にはあの圭の存在があったからだ。この事に関しては好美と和解は出来ているはずなのだがやはり好美の心の奥底には守との仲を険悪にした原因を作った圭への恨みが残っているのかも知れない。
守「好美は日本の貝塚学園で何が起きていたのか知っているかい?」
一時は義弘の圧力による報道規制がされていたが、前社長の逮捕によりニュースとしてテレビに流れて日本中の茶の間を驚かせていた。
好美「結愛のお父さんは学校を滅茶苦茶にして警察に捕まったって事件だよね、確か学校がまるで刑務所みたいな場所だったって聞いたよ。」
守「ああ、もう既に分かっていると思うけど俺や正はその貝塚学園の卒業生なんだ。当時俺達の母校は元々「西野町高校」っていう名前だったんだけど、その学校を結愛の父・義弘が買い取って理事長になったんだ。」
守は覚えている限りを好美に伝えた、毎日の学校帰りに寄っていた想いでの店である「浜谷商店」が突然消えてそこに貝塚家の大きな豪邸が建った事や学校の周囲に大きな外壁が建造されて外に出る事が出来なくなった事、そして・・・。
守「多くの血が流れ、沢山の生徒(友)が死んでいった。義弘は兎に角成績主義で、成績が下の方の生徒達を自分の手を汚す事無く殺していったんだ。そこで立ち上がったのが今の社長である結愛や多くの株主だった訳、カメラを壊した時の結愛は凄かったな・・・。」
好美「という事はその頃から結愛ってあんな感じだったんだね、納得出来るかも・・・。」
守は寒さからか、それとも心配する必要も無いはずの義弘による恐怖からか体を震わせていた。と言うか2人共、そのままだと本当に風邪引くから中に入れ。
流石に真希子さんを怒らせる訳には行かないんで・・・。




