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混浴露天風呂が良い雰囲気に包まれる中・・・。
-133 欲情-
温かな間接照明と優しい月夜の光のみが照らし、正直貸切(?)と言っても過言では無い露天風呂の一角で守は焦らされていた、何となくだが好美の発言に嫌な予感がして仕方なかったのだ。今までの自分の行動を顧みていつかは来るであろう瞬間が来たような気がして仕方なかった、それが故に守は好美から見えない様に湯船の中で拳を強く握った。
守「な・・・、何だよ・・・。どういう意味だよ・・・。」
好美「ねぇ、日本にいた頃の事を覚えてる?ほら、私達がまだ大学生で出逢ったばかりだった頃の事。」
恋人の発言から最悪の事態を免れた守は正直ホッとしていた、ただ過去に今の様な場面に遭遇した事があっただろうか。
守はゆっくり目を閉じて生前の出来事を必死に思い出そうとした、好美が死ぬ前だから結構前の事だったはずだが・・・。
守「えっと・・・、何があったっけな・・・。」
守は広い露天風呂の中で1人考え込んでいた、おいおい好美、このままだと守が湯冷めしちゃうぞ。
好美「大丈夫よ、『状態異常無効』を使えば問題ないじゃない。」
そう言えばそんな能力あったね、大変失礼いたしました・・・。
好美「何さ、元々はあんたが考えた能力じゃないのよ。忘れるって事はそこまで思い入れが無かったって事じゃないの?」
いや、そんな事は無いですよ・・・。ちゃんとノートに書いてますし・・・。
好美「という事は、いちいちノートを見なきゃ思い出せないって訳?」
くっ・・・、仕方ないだろ・・・。忘れやすい性格なんだから許せって、夜勤族が思った以上に忙しいのはお前も分かるはずだろうが。
好美「確かにね、最初はみんなが働いている傍らで昼から堂々とお酒が呑めるっていい気分になってたけどそこまで甘くない世界だもんね。」
そうだぞ、俺が夜勤の人間じゃなかったら今頃お前は存在していなかったかも知れないから感謝しろよな。
好美「何よあんた、今はそう言う問題じゃないでしょ。それで?守は私が何をしたがっているのか思い出せた訳?どうしたいか分かった?」
全くもって関係無い話で茶を濁し過ぎた様だが、時間は稼げていたはずだから守も思い出せたんじゃないのか?なぁ、守君?
守「い・・・、いや・・・、えっと・・・。」
必死に思い出そうとする守の傍らから状況を楽しんでいる様に思われる女性の声が・・・。
女性「あんた達、楽しそうにしてんじゃない、私も混ぜなさいよ。」
守「あ・・・、光おばさん!!」
光「こら!!「光お姉さん」だろうがー!!」
レストランで2人が真希子からの手紙を読んだが故に光の言った「お姉さん」という言葉の意味が重くなったと感じた守、数時間程前に発覚したからって腹違いの姉を「おばさん」と呼ぶのは俺も流石にまずいと思うのだが・・・。
守「と言うよりここって貸切だったはずだよな、好美が「2人で」予約して・・・。」
好美「予約はしたけど人数は指定してないもん。」
確かに好美の口からは「2人で予約」という言葉は全く出なかった上に、守は今自分が何処にいるのかを忘れていると言うのか?そう言えばこんな件、前にもあった様な・・・。
光「守・・・、ここは異世界よ。『瞬間移動』を使えば容易に出来るに決まってんじゃない。」
好美「そうそう、何でもありの世界なんだからこう言う事もありなんだよ。」
好美はそう言うと守の顎を摘まんで無理やりに唇を押し付けた。
光「あらま、流石に何でもありだと言ってもこう言った場面は見ちゃ駄目だわね。」
ほらほら、早々に退散して下さい・・・。